20.センド ア メッセージ アウト アクロス ザ タイム
勇者の魔力に苦しむ幼き少女魔王、ペディ。
少女を救うため解決の糸口を必死に求めた賢者クレビーは、思いがけず勇者召喚を行い滅亡した国を発見した。
謎を求めて勇者パーティーと私は高速装甲車マドーカーで今は無き国を求めて疾走する!
みんなで作ろう!異世界の~マドーキー、みんなで遊ぼう!異世界の~マドーカー!イージーキットだよ!
CM明けたかな?え?ケ〇ッグのシュガーマック?ラ〇オンズメイドのズーム?おっとメカものじゃなくて巨大ヒーローものなんで怪獣サッカー優先だ!もしくは飛び出す絵本!
「やっぱプラモのCMは川〇特撮じゃなきゃな」「え?プラモですか?」「君の世界にもプラモあったのか!」
夜、車中泊。マドーカーのキャビンはは女性陣が多いので私は運転席で寝る事に。晩酌してたらレイブが付き合ってくれた。
「君は向こうでイチャイチャしてなさい」「え!」
「時に君達はナニは済ませたのかね」
「えー!デモデモダッテ」
「君はね。今一番良い~~~時を過ごしてるんだ。だが、子供は作るなよ?」
私にタンバが舞い降りた!これ今見たらセクハラオヤジもいいとこだな!
「恐らく戦いが済むまで、君達メンバーにはそれぞれに使命がある。だからと言って愛を育むなとは言わない。
早く戦いを終わらせような」
何か、真っ赤な顔してレイブはキャビンに帰って行った。
******
等とのんびり異世界車中泊を楽しみつつ、ツッカエーネ王国と魔王国の更に北にある、人の住んでるかどうかも不明な深い森の中をマドーカーはバリバリ進む。異世界から持ってきたスマホで歌を流しつつバリバリ進む。
「何なのよこの歌!ずっとブロローとかバババーンとかナントカーオウオーナントカーオウオーとかダダダダロボロボとか繰り返し!ヘンな歌!」
「え?結構魂揺すられない?」「げ、ホーリーこーゆーのがいいの?」「時々心優しい歌が入りますわね?」
ドライブと言えば特ソンアニソンだが(違う)女性には概ね不評なので気を付けよう。
しかし不整地走破とか気合を入れる時にはOTAKEBI上げながら野越え山越える必要もあるのだ!しかしこの子達乗り物酔いしないな。
「魔王討伐の旅で慣れたのよ!」「あんまし思い出したくないけどね!」「暴れ馬より楽ですわ?!」
心なしか女性陣、ウキウキしてなさる。
「男として君はどうよ」レイブは…スキスキ隊3人の膝の上で極楽浄土の恍惚に浸っていた。まあ多くは聞くまい。
******
「あれが滅んだ王国の城かな?」
森の中、丘の上に、石造りの建物…ところどころ樹木が絡みついたり蔦に埋もれていたりする巨大建築がある。どことなくギリシャ・ローマの神殿っぽい建物だなあ。
「キッダルトの残した記録だと今から800年前から400年前まで栄えていた国みたいね」今までおノロケモードだったクレビーがキリッと答える。
「滅びてからそんなに歴史が深い訳じゃないのに、何で調査とか入植とかされてないんだ?魔国の北側だからかな?」
「キッダルトの記述では、彼が暗殺を恐れて去った後、『呪われた国として人々が去った』って書かれていたわ」
「呪いかあ。勇者も魔王も関係なく暮らしていた人達にとっちゃあいい迷惑だろうなあ」
とりあえず神殿っぽい王城までマドーカーで入った。
「ギトギトギトギト!」「クリカラクリカラ!」なんか骨が出たー!
サっとレイブが駆け出し、一気に数十体を弾き飛ばした!呆けていても勇者は勇者だ!
勇者の魔力の影響か、弾かれたアンデット達は動かない。というか、何か青白い光が骨から抜けて宙に消えている。
「迷える魂よ、天に還れ!」勇者は更に剣戟を放つ!クレビーもホーリーも勇者へ魔力を注ぎ、敵の攻撃をシルディーが跳ね飛ばし、シルディーの背後からレイブが飛び出し敵を制圧する!
「これが君達のタッグかあ…」数分も経たない内にアンデットの群れは骨の山となり、天井は青白い魂が空を目指して消えていく。
「なんか今日は特に体が軽くないかな~あ?」艶々したお肌とあまり見たことない笑顔のホーリー。
「わたくし、とっても気持ち良いですわあん!」盾以外にも色々大きなモノをブルンブルン振り回すシルディー。
「愛こそ全てと!信じていたい!」もう絶好調のクレビー!
「みんなとの愛の絆だ!」レイブこのヤロー。
なんか一緒に来た事を後悔し始めてます、ホント。
「じゃー神殿っぽいトコ入るよー」と進む。うむ、とんでもない禍々しい魔力を感じる。
しかし勇者パーティーも凄い闘志に燃えてる。こりゃアンデッド瞬殺だ、下手すりゃ情報を得られないな。
「えー、ちょっと最初に私が入るんで君達は突入待ってね?」「「「何故!」」」「アンデッドに取材したいんで」
おお、勇者パーティーの殺意が少し減った。
ここは心を渡〇篤史と化し、「お邪魔しまーす、ほ。ほう~」と入室すると…
無茶苦茶魔力マシマシのアンデッドが!
「ようこそー」あれ?
「今お茶淹れますね~、あらお酒の方が宜しいかしら~」「じゃあおすすめのお酒で」「とてもいい物がありますのよ~」
女性のアンデッドかな?後から拍子抜けしたレイブ達が入って来た。
「何か凄い魔力の割には戦意を感じないなあ」「あのアンデッド人よさそう人じゃないけど」「私はお茶がいいなー」
一同は王座の下、広間のテーブルに着席した。
「えー、お邪魔します、勇者レイブです」「まあ~!勇者ですの?!私勇者大好きです~!」
「私は賢者の…」「ケッ!」「聖女…」「クソ!」「戦士…」「肉達磨」
「アンデッドにも裏表ってあんのね」「浄化していい?」「まあ様子を見ましょう」絶好調だった女性陣の反動が怖い!
「私は勇者の一行ではないのですが…」「え?何で魔力無い奴がここまで来てんですの?」アンデッド即ち骸骨なので表情もないけど何か驚かれた。
「異世界から来たんで魔力ないんですよ」
「貴方も異世界の方なのですねー!」「俺もです」
「きゃー!今日は何て素晴らしい日でしょー!あの方と同じ異世界の方が2人もー!」何か骸骨がクネクネしててハロウィンの玩具みたいでオモシロイ。
「どうぞ飲んで飲んでー!あの方も大好きだったこのお酒ー!異世界の方なら解りますよねー!」と、小さいグラスにちょびっと注いでもらったこの濃いブラウンの酒…バーボンだ。恐ろしく熟成したこの一杯。
美味い!物凄く舌に染み入る!
「流石の年代物…400年の年代物ですか…これは生涯味わう機会がそうそう無いものです!
あなたもどうでしょうか?」
相手はアンデッド。飲める訳がない。クレビー達は「コイツ虎の尾を踏んづけやがったー!」って顔してるし、レイブはむせてるし。
「わたくしは見ての通りですが…」
「せめてお口の中に滴らせてみては如何ですか?」
と、注ぎ返した。
アンデッドは上品に杯を口に運び、髑髏と化した顎を湿らせる様に杯を傾けた。
顎から酒は零れ落ち、あばら骨を浸す。
「やっちまったー!」って顔でこっち見るクレビー達。
「…美味しい」アンデッドが呟いた。「「「え?」」」流石に驚くクレビー達。
「美味しいです。まるで、戦いが終わったあの日の夜の様」
アンデッドの虚ろな髑髏が、泣いていた。
髑髏は顔を覆い、泣き続けた。
「あの人がまた来てくれたみたい。今日は何て素敵な日かしら…」
アンデッド、彼女は泣いていた。
泣き顔を覆う指の骨は、白く輝く指となり、涙に揺れる肩は抱きしめて守りたくなる様な細い線を描き、禍々しい頭骨から光輝く金の髪がたなびいた。そして顔を覆う手から見上げた髑髏は…
美しい少女の儚げな泣き顔となっていた。
さっきまで禍々しい魔力を放ちつつ甲斐甲斐しく持て成してくれていたアンデッドは、白いドレスを纏った美しい少女となっていた。
「貴女はジゴジトッ国の王女、カバレーヌ様ですね?」
「その通りです」
「私達は、今は亡き勇者キッダルトの残した記録を追ってこの地を訪れたのです」
「今は…亡き?」「キッダルトが幸せに包まれて天に帰って、既に400年経っています」「400…年?」
それから暫く、彼女は顔を覆う事もせず、時折杯を傾け、俯いてひたすら涙を零した。
クレビーが、ホーリーとシルディーが、席を立ってカバレーヌ王女の掌に、肩に、手を重ねて慰めの気持ちを寄せた。
「ううっ!キッダルト様!キッダルト様ああー!!許して!私達を許してー!!」
大恩ある勇者へ暗殺を企んだ事への償いか。王女は激しく泣いた。それは王女の意に沿わない事だった。だから三人は同情し、慰めたかったのだ。
暫くして、彼女の慟哭は止まった。
「取り乱してしまい、申し訳ありません」
「お気持ちは解ります。あなたも、勇者を愛していたのですね」優しくクレビーが答える。
「私にそんな資格はありません。我が国は彼に救って頂いたのに、彼を殺そうとしたのです」
「彼は解っていました。そして逃げおおせて、遠い土地で幸せに生きたんですよ」
「幸せに?」「子供も生まれて、後の世界に生きる私達に備えをのこして、天に還ったのです」
「子供…私も彼の子供が欲しかった!こんな国捨てて彼と一緒に行けばよかった!」
「でもそうできなかったのですよね」
「こんな国でも、私は王女でした。国と民への責任があったのです。もう滅んでしまったのに!」
「それは貴方がこの世を去ったずっと後、貴方の知る魔王が倒れた100年の後に別の魔王が現れたためですよ」
激しい後悔に苛まれるカバレーヌ王女をなだめつつ、クレビーは歴史を語った。
魔王と勇者が出現、勇者は魔王を倒す。
勇者を恐れた王国は勇者暗殺を企み、それを察した勇者は勇者召喚の魔法陣を破壊して仲間(全員美少女)と逃亡、今のデファンス領へ。
しかし勇者召喚の儀式を行った責を感じ、孤独に耐え戦う勇者を慕っていた王女は暗殺計画を知り、勇者逃亡を知り絶望の中で死んでしまった。
その100年後に魔王が出現したが、ジゴジトッ国は勇者召喚を出来ず滅亡。別の国が勇者を召喚し討伐した。
それがキッダルト終焉の地であるデファンス辺境伯を領土に含んだツッカエーネ王国だ。
王都を失ったジゴジトッ国民はこの失態を勇者暗殺の呪いだと恐れて国を捨て他国へ逃げた。
「あの時愚かにも恩人たるキッダルト様に仇を成さなければ、再び我が国は勇者をお迎えできたのです」
「王女様、その後に勇者を呼んだ国も同じ様な物だったのですよ。
皆適当に金を与えて放り出したのです。私達も同じ様にね」
彼女の肩に手を置いたまま、クレビーが悲し気に語った。
王女は驚き、暫し考えた。
「貴方達は何故私の下を訪ねて下さったのですか?」
「知りたかったんです、昔何があったかを。そしてこれからどうすべきかを。
そして、どうしたら戦いを終わらせる事が出来るかを!」
「戦いが…終わらせられるのですか?」
「出来ます、必ず出来ます!私達は馬鹿じゃない!きっと出来る筈です!キッダルトさんもそれを望んでいたんです!」
「ああ…あなた!愛しいキッダルト様!」号泣するカバレーヌ王女をクレビーが抱きしめた。勇者を愛し、平和を望んだ二人の女が、心を合わせた。
******
「ちょっと私は外すよ」
「俺も行く」レイブが察してついて来た。
「何か来たのね?」「ああ。糞野郎がね」「君達はここに」「「「行くわ!」」」
「カバレーヌ様、私達は戦う意思が無いのに戦う人とは仲良くしたいの。
でも、戦いに溺れて人を平気で傷つける奴は許せない。今からそんな奴をやっつけに行くわ」
王女の瞳を見つめるクレビー。
「私、あなた嫌いだわ!」王女はちょっと笑って言った。
「えええー!!」感動台無しである。
「あの子達そっくり!真直ぐで覚悟決まってて」「それってキッダルトさんの?」
「そうよ!私も一緒に行きたかった!行きたかった!」
「行けるわよ。戦いが終わったらね」こいついい笑顔するなあ。見直した。
「お願い、終わらせて!」「おうよ!」男気を込めてクレビーは応えた!
******
亡国の遺跡の外側で、礼によって例の如く、あの黒騎士ダークナーがイキっていた。
「勇者達はこんな辺境で新婚旅行と洒落込んでやがる。ここを対の棲み処としてやろう!出でよ!アンデッド魔竜!」
魔石を遺跡に投げ込むと魔法陣が展開し、ミイラ化した怪獣が遺跡を崩しながら出現した!
ギリシャ・ローマっぽい建物を蹴り倒しながら進撃するアンデット怪獣!
敵に向かって驀進するマドーカー!
「私は上で怪獣を撃つ!そしてあのトンチキ黒尽くめが出てきたら深い谷底突き落とす!」
「私は助手席から怪獣を攻撃するわ!操縦と止めはレイブお願い!」
「任せろ!行くぞアンデッド怪獣!」
マドーカーは怪獣に向かって驀進する!車体上部の銃座を操作し、魔動ミサイル(何だそれ?)をアンデット怪獣、ではなくその遥か後方で怪獣を使役する黒騎士に向かって撃つ!
「テメェは泣きながらポカリでも飲んでろ!」「のわーっ!」奴は吹き飛んだ!
狂暴さは失ったが、訳も解らず暴れるアンデッド怪獣!
「お前も、死してなお苦しむ事は無い」私はイセカイマンへと着替え(中略)巨大化した!
光る渦から巨大な拳を突きあげてイセカイマン登場!
苦しみ暴れるアンデッド怪獣を宥めようとするも突進され、遺跡に激突!
「アンデッド怪獣に魔術がかけられてる!」ホーリーが怪獣の頭上の魔法陣を見抜いた!
「あの魔法陣を叩き切ればいいんだな?」マドーカーを止め、すかさず車外へ駆け出すレイブ!
応じる様にアンデッドの頭を抱え込み、地に足を延ばすイセカイマン!
「怪獣よ眠れ!とあーっ!」イセカイマンの体を合成で駆け上るレイブ!大きくジャンプして頭上の魔法陣を斬る!
地面へ落ちるレイブをイセカイマンがスライディングキャッチ!
狂暴化の魔術から解かれたアンデッド怪獣は茫然と歩き回る。遺跡にぶつかり、轟音とともに倒れ込む。
かつての王城から駆け出すカバレーヌ王女。
「あなたも天の上に行きましょう。彼等に後を託しましょうね」と、笛を吹く。
優しい笛の音に、アンデッド怪獣はゆっくりと倒れ込み、寝息を立てる。
やがて、白骨となり、その骨も光って消えていく。
優しい笛の音も消えて行った。
******
私達は王宮に戻ったが、王女の姿は無かった。
彼女と僅かな時を交わした席には、銀に輝く横笛と、かつてキッダルトとカバレーヌが一緒に呑んだバーボンと、紙の束。
クレビーが紙の束を読みつつ、涙を流した。「本当に、好きだったのね」と呟いた。王女はその想いも彼女達に託したのだろう。
そしてある部分でクレビーが強張った。
「マルチバースって、何?」「異世界、じゃないのか?」
「いえ、ここは異世界じゃなくて、『マルチバースを往来する者が我等を操っているのか』って書いてある。マルチバースを往来って、どういう事?異世界じゃないの?」
「畜生。敵は面倒な奴かも知れない。そのメモをじっくり読ませてくれ!」
その紙には、何か所かに印が付いた輪の図面や、蛍光灯の様な丸い管が無数に連ねられた様な模式図が数式と共に書かれていた。何枚にも亘って。
******
森と化した遺跡の中を散策し、私達は欠損した勇者召喚の魔法陣を記録した。途中アンデッドに遭遇することも無く、神殿や図書館等の遺跡を調査し、記録した。
しかし王女に会う事は二度となかった。
「王女様。私達は戦いを終わらせるわ。貴方が愛した勇者キッダルトさんの夢見た世界を作るわ。だからどうか、天の上で愛する人と再会して、幸せになって下さい」
遺跡の中で摘んだ花を束ね、クレビーは遺跡に捧げた。彼女の残した笛で、私は故郷の地球での哀悼の曲を奏で、皆で冥福を祈った。
荒野を驀進しマドーベースを目指すマドーカー。しかしその姿を恨めし気に見る奴が。
崖の上から夕焼け空に向かい呟く黒騎士ダークナー。
「おのれイセカイマン!次こそは必ず息の根を止めてやる!」
策謀に溺れた国の中で愛を実らせる事無く命を失った、儚くも可憐な王女。
しかし彼女が遺した記録には、勇者召喚の謎が示されていた。
謎を解き、平和な世界を作る為、戦え私!戦えイセカイマン!
…では また明後日…
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