9.かえせ!軍資金を貸与品をかえせ!

 温泉地に商隊が列を成してやって来る。城門には元衛兵だった平民達が志願して入場審査を行っている。

「イセカイ温泉にいりゃーせー!ちんちんの温泉がえらいおみゃーらをよーけ癒してくりゃーす!」

「今日も元気がいいなあイコミャーは」「何言ってんのかイマイチ解んないけどね」


 最早半分避難場所ではなく街と化しつつあるここ、いつの間にかイセカイ温泉を名乗っている。

 魔族娘達が街を取り仕切っている。

 フラーレンが温泉宿の支配人と商人達への依頼や金銭の交渉を。

 エンヴォーが警備を志願する人々の采配や訓練を。

 ライブリーが金の流れ、徴税や働けない人への配分等の財務を。

 イコミャーが商売の最前線、市場の管理や人の誘導、困りごとの聞き込みを。

 決死隊の娘達はフラーレン達の指示で動き、温泉宿や共同浴場の管理や清掃等の雑事も。

 ジェラリーは…「働きたくないでござる~!」仕方ないのでコスプレさせて酒場の呼び込みや酔っ払いのあしらいをさせている。

 みんな一応魔王軍なので男相手でも一ひねりだ。

 そんなこんなで愉快に回り始めたイセカイ温泉。


******


 そこに…武装した軍隊がやって来た。掲げる旗にはツッカエーネ王国とは違う紋章。

 騎兵が先行して来た。

「ここはツッカエーネ王国の王都、ダラークで宜しいか?」

「王都はあそこに見える廃墟です。ここは王都を追われた平民達が逃げて来た避難場所です」二重の城門の外側、高麗門前で対応するフラーレン。内側の重厚な櫓門は万一に備え閉じている。

「避難場所にしては賑わっているし商隊も多数来ている」

「ここにはあの愚かな王など居りませぬ!あの瓦礫の山の中をお探しなさい!」

「この地の主は誰か!」

「人に名を問うなら先ず名乗りなさい!」

「平民であれば命令に従え!さもなくばこの場を撃ち滅ぼし、中の物は奴隷として連行する!」

「面白い!やれるものならやってみなさい!アノクタラサンミャク…」呪文を唱え魔力を集中させるフラーレン。

「待てフラーレン!」私が止めに入った。


「彼女の言う通り、ここは国王の愚策により住まいを失った者達の居場所だ。国王に用があるなら王都へ参られよ」

「我等はカナリマシ王国の使者だ!魔王討伐のためツッカエーネ国に貸与した軍資金と貸与品の回収に来た!」

「ならば尚の事国王を訪ねられよ!」

「おらぬのだ!」「はいぃ?」

「王都に行ってみたら誰もおらぬ!王城も公爵邸も神殿も崩れ去って廃墟となっており、神殿には乞食が住み着いておった!」

「だろうねえ」お探しの方は多分その乞食だよ。

「兎に角ここを通せ!」「だが断る!城外で話だけ聴こう。話によっては助言も出来る」

 渋々使者は帰った。


「あんなの放って置けばいいんじゃなかしら?」

「ここで揉め事になって避難民を心配させたら余計な仕事が増えるじゃないか」「やっぱり御屋形様ね!とっても優しい!スキスキ大ス…」

「それにいっそこの阿呆な国を売って復旧支援を受け取れないかゴネてみようかなって思ってね」「なんと…そんなハラグロな所もスキスキ…」

「さて会見の場を作るか!空間掘削チェースッ!」とカンタンな堀と石垣、白壁に囲まれた和風の屋敷を築いた。ちょっとした出城だ。

 相手国の使者団を収容するには充分だろう。温泉もあるでよ。

 あんまり華美にすると「貸した金返せ」って言われるので凄い質素にした。障壁画も水墨画だ。

 さて相手はどんな連中か?使者から「再度王都ダラークを調査し、国王を発見できなかった場合明日訪問する」との話があった。


******


 イセカイ温泉地の公衆浴場。みんなちゃんと風呂入る前に体を洗ってくれている。風呂で粗相する不届き者もいない様だ。

 時折公衆浴場に入って様子を伺う。

「聞いたか?隣の国から借金の取り立てが来たんだってよ!」

「あのチビハゲデブスケベケチ国王、全部中抜きしちまったんじゃないか?」

「宰相のケケナーカと一緒に贅沢に使っちまったんだろ」

「でも勇者達は魔王を倒したんだろ?」

「また次の魔王が出たんだとよ」「何だってー!」

「ここで働いてる魔族の姉ちゃん達だって新魔王の命で攻めてきて、あのデッカイ奴に倒されてここで働いてんだって」

「イセカイマンだろ?俺はイセカイマンキ〇ガイでな!」

「俺もイセカイマンキ〇ガイだぞ!」その半世紀近く前の歴史的スポ根アニメみたいな褒め方駄目ー!


「何だい?そのイセカイマンって」SRIの的〇所長みたいな事言う奴がいる。

「お前さん知らないのか?王都を襲った巨竜を全部倒した凄くデッカイ鎧の騎士様だ!勇者なんかより余程頼りになる、俺達の守り神様だ!」

「そうか。新しい勇者なのかもな」

「いや~違うだろう。勇者ってのは王国が神殿で決めるもんだがイセカイマンはどっからともなく現れるんだ!」

「俺達の税金で贅沢してる勇者達なんかよりよっぽど俺達の味方だ!」

「そうか、それは失礼」

 隣の男。筋骨逞しく、言動も洗練されている。


「失礼ながら貴方はこの街の外からお越しになられたお方とお見受けします。私はここに住む魔導士テンポと申します」

「これは御丁寧に。私の事はキレモンとお呼び下さい。ここは平民でもこんな湯に入れるのですねえ~」

「王都が巨竜の襲撃で廃墟になった今、ここが街に住んでいた人達の心のよりどころなんです。せめて心安らぐ温泉でもなければ」

「まるで貴方がこの温泉を作った様ですな、ははは」「これは失礼、ははは」

「しかし巨竜ですか。やはり新たな魔王が現れたという噂は本当の様ですな。貴方はどう思います?」

「魔王が亡びた直後にまた魔王が現れる等、今まで無かった事です。何故そうなったのか、新しい勇者が現れてくれるのか。

 私としては、なるべく穏やかにケリがついて欲しいだけです」

「その通りだな。そうなれば良いが。勇者を指名できるこの国や神殿があの有様ではどうなる事か」


「いっそこの国を他国が統治してしまった方が宜しいのでは?」

 一瞬、キレモンの目が鋭さを帯びた。

「魔導士殿、国を捨てる様な言葉は控えた方がよい」

「私は他国からの旅人です。この国に思い入れはありません。ただここに住む人達には不幸になって欲しくありませんがね」

「面白い方だ、貴方は。では、そろそろ失礼する」

 去って行ったキレモン氏。彼がカナリマシ王国の使者だな。


******


 一方魔国では。

「決死隊全滅したみたいよ」「カワイソー!私志願しなくてよかったわ!」

 噂話に花を咲かせる魔王軍の娘達。どこ娘も可愛くてナイスバディで、痴女服だ。


「それがね、みんな生きてるみたいなの!」「え~?奴隷にでもされてるのかしら!」「それなら死んだほうがマシよね」

「どうなのかしら。今まで戦いに出て行った悪役令嬢やハラグロ寝取り女に天才朴念仁達も死んでないみたいだし」凄い呼ばれ方だなあ。

「本当?何がどうなってんのかしら?」


「後ね、人族の王都がぶっ潰れたって噂よ?」「じゃあ勝ったって事じゃない?」「あ!あたし聞いたよ?王都が崩れて温泉が湧いて、なんか魔族がそこでメイドやってるって」

 どんな伝手で魔族がそんな事知ってるのか?商人の中に人族に扮した間者がいるんだろうね。

「温泉で働くのかあ、いいなあ~戦いもなく温泉に浸かれる仕事ぉ」

「私ちょっと人族をスパイしてこようかな!」「あっズルーい!私も!」「私も!」うわー、これみんなウチで雇うのか?別の雇用も考えないと、戦い以外の方向で。


 そして上半分が無くなった魔王城。

「どーすんじゃあ~!」のじゃロリ新魔王が解放感溢れる玉座でだだを捏ねていた。

「先ほど魔王城の奥の間で時空を超える魔法陣を作動させました」宰相さんが恭しく報告した。

「それが何の約に立つのじゃ?」「過去から巨竜を呼び出し、現在で戦わせる事が出来ます」あれ?タイムパラドックスはどうなんの?

「面白い、やれ!」のじゃロリは両手を広げてわしゃわしゃ動かして命じた。総統〇ブーか?


******


 翌日、イセカイ温泉に向かってカナリマシ王国の一行がやって来た。一行の中央、一際立派な馬車がある。

 私とフラーレンは出城の前で待つ。どうやら国王は見つからなかった様だ。ていうか国王、彼等を借金取りと悟って逃げ隠れたな。

 彼らの接待のため、給仕として王城で働いてたメイドさん達を急募した。「セクハラなしよー」とイコミャーが宣伝してくれたお蔭で何とか人数が揃った。あの国王セクハラしてたんだ、サイテーだな。

 

 一行を大広間に招き、テーブルを挟んで着席した。その中央には昨夜公衆浴場で会ったキレモン氏、いやキレモン伯爵。

 使者一行の騎士が立って宣言した。

「カナリマシ王国国王アッタマーイ3世の使者、キレモン伯爵の名の元に、王都ダラークを継承する魔導士テンポに対し命ずる。

 ツッカエーネ王国へ貸与した魔王討伐戦の軍資金5億ゲルド及び貸与品金1億ゲルド相当、馬1000頭、世話役の女奴隷100人の返還を命じる!」

 頭が痛い。そんだけの金目〇エンペラーにつぎ込んだのかあのバカ!しかも女奴隷100人って外道もいいところだな。どこに隠したんだか。


「私は属する国のない異世界から来た魔導士テンポ」

「異世界?」「まさか…勇者任命の秘密と言われる」「そう言えばこの地のイセカイ温泉というのは…」

「私はこの国の外に辿り着き、魔王との戦いで無力となった勇者一行を救助してこの地に来た。

 にも関わらず、ツッカエーネ王国により激しい侮辱を受け国外退去を命じられた。

 依ってツッカエーネ王国の負債とは無関係!返済の義務など尻の毛1本程も持っていない!

 国王の無力さ故家を失った人々を守るこの地を築いたものの、王都を継承などしていない!王国などとも関係ない!

 要求は無効であり、それを強行するのであればカナリマシ王国を滅亡される事もあり得ると知るべし!」


 相手側がどよめいた。キレモンはこれを制し、

「我が国は王家ではなくこの国に貸したのだ。この国にいる以上、誰もが返済の義務を負う。

 それともこの国を去るか?ここにいる者達を見捨てて」

 こいつ、避難民達を人質にしやがった。


「伯爵殿!それは我が主人に対し無礼が過ぎるのでは?!」フラーレンが怒った。

「平民が貴族を前に無礼と抜かすか!」相手の随行員が舐めた事言いやがる。

「貴族であれば平民を守り、平民の模範となるべき。民を見捨てる事を仄めかす様なものが貴族を名乗るのは、如何なものでしょう?

 私は魔導士テンポの妻、フラーレン。夫と共にこの地と民を守る矜持を持つ者!志を持たぬ者に対する礼等持たぬ!」

 婚約を破棄されたとは言え流石貴族の令嬢、迫力が違う。私も黙ってはいられないな。

「国の民が王を選んだのであればキレモン伯爵の言い分も通ろう。

 しかし民に王を選ぶ術など無い。愚王が借金して破滅したら、それは愚王とそんな奴に金を貸した、相手を見る目の無い債権者の過失だ。

 それともこの地で戦うか?新魔王が巨竜を繰り出してきている王都の近くまで兵を出す覚悟がおありか?」

 数秒の沈黙が訪れた。


「色々と考えさせられる言葉を頂いた。腹の探り合いは止めよう。

 魔導士殿。あなたはこの巨額の借金について、何か策をお持ちなのではないか?率直にお訪ねしたい」

「先ほど申し上げた通り私は部外者だ。しかしあくまで世間一般の常識から申し上げれば…

 先ず、王族の係累たる公爵家への取り立て。

 次に、国王直轄地の占拠。

 それでも不足した場合は…王国そのものの領有。

 無論、民に対する責務を貴国が引き継ぐ事となる。国王が出てこないならこれも止むを得まい」


「御意見痛み入るが既に試みたのだ。

 先ず、公爵家のみならず伯爵家へは既に訴えたが、皆我が国に恭順を示すと言いながら鐚一文帰って来ぬ。

 次に、国王直轄地を領有しようにも我が国から代官を派遣し税を回収するために余計な戦力も体力も必要となる。王国領有も同じだ」

 やはり打てる手を打った上での訪問だったか。国一個丸々やるよと言われてハイありがとう、って言うのもリスクがある。

 多分この調子じゃあ他の国からも借金してて、返済は国際問題になるだろうしなあ。

 この人も、カナリマシ王国も中々優秀だな。


「その上この国には、世界のどこにも無い力、おいそれと占領してしまっては人族全てにとって禍となる力がある」

「勇者任命、いや、勇者召喚の力だな?」

「召喚!?…やはり噂にあった、勇者は異世界から招かれた者というのは本当であったか」

「まだ確証を得たわけではない。その上この国はもう勇者召喚が出来ない」

「何だと!!」

「召喚を行っていた神殿も魔法陣も破壊され、さらにこれより北にあった古代遺跡内にあった魔法陣も破壊された。

 新たな召喚魔法陣が発見されるか作られるかしない限り、この国には勇者を召喚する方法は無い。

 むしろ勇者召喚の情報があれば欲しい位だ」

「魔導士殿!貴方が新たな勇者なのでは?ならば我が王国に仕え、戦うべきであろう!」

「私はこの国に呼ばれたのではないよ。もう何千年も、何十回も異なる世界を彷徨ってきたのだ。

 さっき少し話したが、この世界に来た場所も王国外、魔族の地との間あたりだ」

「予想外の話だ…」頭脳明晰なキレモン伯爵も流石に頭を抱えた。


「多少遠回りになるが、地道にこの国を領有して税収を得るのが妥当な線かと思う。

 いっそ他にも金を貸した国があるなら、沈黙している貴族領ごとに分割してしまってもいいんじゃないだろうか。

 それにこの地や周辺には王都からの難民がいる。彼らが税を払える様に暮らしを支える事も喫緊の課題だ。

 これを成し遂げれば、あの愚王よりも貴国へ忠誠を誓う者も増えるだろう」

「魔導士殿、貴方も我が国に仕えてくれるのであればその話で手打ちもあろう」

「だが断る」

「例えば、伯爵待遇であればどうだ?」「キレモン卿!」「見ず知らずの平民に、幾らなんでもそれは!」周りの使者が彼を諌める。

「だが断る」

「貴方は今は只の流れ者であろう?貴族となれるのだ。生涯安定して暮らせる」

「貴族などでは安定などしない。魔族との戦いが終わったとしても、今度は人同志の戦いもあるだろう」

「それも貴方の明晰な頭脳があれば…」

「人の戦いは、より愚かで醜いものだ。私には御し難い」

 過去、よかれと思って魔と人の戦いに介入してその後人も魔も内輪揉めに突入した事が何度もあって苦労した。

 それでも人と魔が共倒れとなって死屍累々となるより遥かにマシだったが。


「驚いたな。貴方の様な人もいるものだ。面白い」

 少し笑うと、キレモン伯爵は天を仰いで考え込んだ。そして、

「結論を急ぐのは止そう。この地に滞在したいのだが、この館を借りることは出来るか?」

 私は快諾し、一行は宿泊の用意に入ろうとした。


 と、その時!またしても地響きが!そして咆哮が!

 狼狽えるカナリマシ王国一行。

「狼狽えるな!話に聞く巨竜であろう!館を出て体制を整えよ!」

 流石キレモン伯爵、たちまち一同は伍隊を組んで出城の外に隊伍を成した。

 王都に現れた怪獣!ちょいとデカいな!

 館に駆け込んだライブリー。「ご主人様!あれは大昔にいた巨竜です!今は既に死に絶えた筈のものです!」

「ライブリー、君の笛で大人しくすることは出来るか?」

「あの巨竜の生きていた時代には巨竜を操る術はなかったそうです」」

「まさか時間を転移させ、その大昔から呼び出して来たのかも知れないな」

「伝承では狂暴で、生き物を見境なく襲ったとあります。倒せますか?」

「大丈夫だ。君達を護るって言っただろう?」「ああ…ご主人様あ」

「あのー、私もいるんですけど」「ああ、フラーレンも守るよ」

 二人を抱擁し、私は館を出た。


******


 太古の巨竜、即ち古代怪獣は人気の無い王都を破壊していたが、遠くのイセカイ温泉の気配に気づいたのか、温泉地に背を向け…

 炎を吐いて、空飛んだー!真〇理一郎のファンファーレが脳内で響く!

「何と!巨竜が空を!」誰もが唖然とした。

 古代怪獣は尻尾を抱えて炎を吐き、タツノオトシゴみたいな恰好で飛んできたー!


 皆がケッタイな怪獣の有様に見入っている隙に私は時間を止め、イセカイマンへ変身した!

 空飛ぶ古代怪獣に向かって飛ぶイセカイマン!そして激突寸前で空中一回転し、キック!&弾着!

 地面に叩きつけられる古代怪獣!


 今回は操る魔族娘はいない、しかも敵は凶悪怪獣だ。思いっきり暴れるぞ!

 激怒した古代怪獣の吐く火炎を、光る滝状のエフェクト、ウ〇トラバリヤーで防ぐ。

 更に怒った古代怪獣、突進!こっちも突っ込んでドロップキック!

 キック炸裂と共に空中に舞い上がりムーンサルト!

 ドロップキックから起き上がった古代怪獣の頭上に、時間停止して高速空中一回転&時間停止&もう一回ムーンサルト&方向転換、ス〇ローキーック!

 そしてケリが決まった脳天に光る魔石の弾着!


 両者の格闘を遠くから見るカナリマシ王国一行、スクリーンプロセスなので戦ってる怪獣とイセカイマンの絵が粗い。

「あれが巨竜、そしてイセカイマン…あんな魔物とどうやって戦えばいいんだ!」悔しそうに呟くキレモン伯爵。

「見給えキレモン伯爵。あれが巨竜とイセカイマンの戦いだ。我々人族の想像など足元にも及ぶまい!」何故か佐〇博士みたく得意げなフラーレン。


 動きが鈍った古代怪獣、そこに腕をクロスさせ、両腕を左右に振り切った!光る魔石が描く巨大な横長の三日月!それが怪獣目掛けて飛んで行った!古代怪獣の首がスっ飛んだ!

 更に腰を後ろに捻り、前に向かって両手を十文字にクロスさせ、光る魔石を放つ!

 一瞬強い光をフラッシュさせ、木っ端微塵に大爆発する古代怪獣の胴体!


「凄まじい…噂を遥かに超えていた。

 あのイセカイマンを味方に付ければ、せめて敵対しなければ、我が国は安泰だ。どうしたものか」

 頭脳明晰なキレモン伯爵は更に考え込んだ。


 イセカイマンは天を仰ぎ…と下を見ると、古代怪獣の生首がまだ生きていた。

 グゴゴゴ…と唸る古代怪獣。

 怪獣も魔獣の一種。勇者でなければ止めを刺せない。危険の無い所へ連れ去らねば。

 イセカイマンは古代怪獣の生首を抱え、空を飛び廃墟と化した神殿へ降り立ち、生首を置いて空へ去った。


******


「グゴゴゴ」陽が落ちても古代怪獣の唸りが響く。

 乞食の様にズタボロになった王の服を纏った国王が、神殿の地下で泣きながら震えて言った。

「夜になったら静かにね~」


…では また来週…

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