第17話青春

 体育館の一件を終えると、俺たちは恋愛部の部室へ戻ってきた。なんだかんだ言って、今回もうまくいった。まあ成功したといっていいのか微妙なところだが、それでも付き合えたことに変わりはないのだ。


 もしかした目の前にいる上品な所作で漫画を読んでいるこの女は、意外とすごいやつなのか? 一度下がった篠原の評価が、俺の中でまた回復する。


 そういえば、篠原はどうしてハム子と金剛先輩の手助けをしたのだろう? 昨日までは「諦めさせるのよ」とか言ってた癖に……。

 そのことを篠原に質問してみると、篠原は明後日の方向に顔を向けて答える。


「女の子っていう生き物はね、お姫様に憧れるものなのよ。非現実的で、バカな妄想を考えてしまうものなの。確かに金剛先輩はあまりいい人ではないかも知れない。でもね、彼女の気持ちも本物だったのよ。だから一度ぐらい夢を見させてあげてもいいんじゃないかって思ってね……」


 澄んだ瞳をキラキラさせながら答える篠原。コイツなりにハム子のことを考えていたんだなと、またしても篠原の評価が俺の中で上がる。あんだけハム子を馬鹿にしたりしていたのに、意外にもしっかりと相談者のことを考えていたんだな。

 なんだか俺はそのことにとても感動してしまい、柄にもなく。


「お前、いい奴だな……」


 なんて、はにかんで言ってみる。すると篠原は、若干引き気味に。


「え? なんで今いきなりカッコつけたの? もしかして今の今までずっと言うタイミングを見計らってたの? 正直かなり痛いから、やるなら一人でやって欲しいのだけど……」


 いつも通り俺のことをバカにしてきた。なんでこいつはそうなんだ!

 

「うっせーよ! ちょっと見直したけど、やっぱお前は見てくれだけのダメ人間だ!」


 そう言うと、俺はカバンを持って部室を退室しようとする。そんな俺を篠原は呼び止める。


「ちょっと待ちなさい。今の聞き捨てならない発言について議論するから、私も一緒に帰るわ」


 鞄を手に持ち、俺と一緒に帰路についた。思えば、同学年の女子と一緒に下校するってなんだか青春ぽいなって、夕暮れ空を見ながら思った。

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