第6話:ひきこもり、初配信をする。(前編)

篝家 紫苑の私室


今日は記念すべきクロノスタシス3期生の初配信日である。

クロノスタシスはかなり大きなvtuber事務所なのでその分

ネット民たちの反応も大きいと言える。

当然どっかのコミュ障極めている少年はというと...


「ああああやばいやばいやばい初配信だぁ...」


焦っていた。が、もう若干諦めていたので前回ほどはなかった。

紫苑は深く深呼吸をする。紫苑は無理やり落ち着くときに深呼吸するのだ。


「すぅぅぅぅぅ...はぁぁぁぁ...」


落ち着いた。流石ハイスペック、馬力が違う。紫苑はそのまま

機材の確認をする。


「...うん。抜かりはない...大丈夫。」


絶対事故らないとかなぜ言わないのだろうと思っただろうか。

理由は単純である。

紫苑はフラグの性質を理解している。フラグクラッシャーではない。

そもそもフラグが立たないのだ。

ただし他人のたてたフラグに巻き込まれることを考慮しないものとする。


「確か最初は最上さんだった筈...」


クロノスタシスでは新期生が初配信するときリレーで配信するようにしている。

紫苑たちの順番は蒼芭、七瀬、紗月そして紫苑である。

なぜ紫苑がトリを任せられたかというと、単純にインパクトである。

男であることを公表はしないが、自分自身のガワを作ったのが本人である

ことに加え、そのイラストレーターがであるということだ。


天音――僅か1カ月ほどでイラストレーター界に名を轟かせた、イラストレーター

    の中で知らないものはいないと言われるほどの人物。

    だが1年半ほど活動した後忽然と姿を消した謎の人物。

    正体は暇つぶしでイラストを描いていて、その人気からくるメッセージ量

    に耐え切れず絵を描くことをやめた紫苑である。


それに比べればどんな才能でも霞んでしまう。ということで涼葉が紫苑を

トリにしたのだ。


「...もう、時間だな。」


紫苑は3期生初配信リレーの時間になったことを確認し、パソコンを立ち上げた。

ちょうど蒼芭の配信が始まったようだ。

それと同時に、金髪碧眼の猫の耳が生えた少女が映し出される。


「みんな、はじめまして!私はフェリス。

 フェリス・シルヴェストリス・カトゥス!よろしくねー!」


「...え?」


......え?............おおっと危ない。

蒼芭が自己紹介をしただけなのに、コメント欄は阿鼻叫喚である。


《コメント》

・お、よくやったなクロノス

・今回もイラストが進歩しとる...

・かわいいな

・かわいい

・ケモナー大歓喜不可避w

・勝ったよ...人類は...かtt

・あーあ、死んじゃったよ...

・ん、今なんて?

・すまん、俺にはよく聞き取れんかった

・おう、俺もだ

・フェリ...フェリス...シルヴェスなんとか

・お前よく覚えてんなww

・ちょ、もう一回お願いしていいですか?


「えぇ~もういっかいぃ~?しょ~がないな~。今度はちゃんと聞いてよ~?」


紫苑はゴクリと唾を飲み込んだ。

私も飲み込もう...(;゚д゚)ゴクリ…


「フェリス!シルヴェストリス!カトゥス!もーちゃんと覚えてよね!」


「おーけー、フェリス・シルヴェストリス・カトゥスね。覚えた。」


《コメント》

・すまんやっぱわからん

・とりあえずフェリスちゃんね

・おk、フェリス・シルヴェストリス・カトゥスちゃんね、覚えたわ

・↑ニキ天才で草

・よく覚えたなww


「おーおー!ちゃんと覚えてくれた!嬉しいなっ!それじゃあファンネームとか

 配信タグとかいろいろ決めよっか!」


それから30分程して、配信などで使うタグやファンネーム、

視聴者からのリクエストや質問に答え、蒼芭の配信は終わりを迎えた。


「よし!そろそろ時間だね!次の子の配信も楽しんでね!乙猫!」


《コメント》

・乙ネコー

・乙ネコー

・乙ネコ!

・乙ネコー

・乙ネコー


視聴者と決めた挨拶を言い、蒼芭の配信は終了した。

次は七瀬の番である。


「最上さん凄いな...あんな大人数が見てる中堂々と配信できるなんて...」


蒼芭はコミュ力が高い方である。運動ができない分のステータスが

知力とコミュニケーション能力に振られているのだろう。


「次は柏木さんか...」


七瀬は言うまでもなく陽キャであり、圧倒的なコミュニケーション能力がある。

コミュ力がなければならないわけではないが、ではある。

七瀬の配信が始まった。


「みなさん初めまして!私立時乃学園で生徒会長をやっております、

 涼宮 和香すずみや のどかと申します!よろしくお願いします!」


《コメント》

・生徒会長きちゃ

・これはよき

・やっぱ今回アバター綺麗すぎる...

・イラストレーターよくやった

・これは...清楚ですねぇ...

・↑なんか怪しいやつおるww

・3期生の属性やべぇなww

・それ、ケモミミの次生徒会長って


「私頭はあまり良くないんですけどね?その分スポーツを頑張ったんですよ!

 そうしたらですね、生徒会長になってたんですよ!なんででしょうね?」


《コメント》

・多分人望とかじゃないかなぁ...

・あれ、なんか陽くさいな...

・陽くさいってなんだよww

・陽キャっぽいってことだよ!

・ま、まだわかんないぞ!陰かもしれん!


「人間に陰も陽もありませんよ!人類はみんな平等ですから!」


《コメント》

・あぁ、陽キャだわ

・ニキ手のひらグレン〇ガンやめいww

・これは陽キャ


「それでは、ファンネームなど決めていきましょうか!」


――30分後...


「それではみなさん!また次の会議で会いましょう!さようなら!」


蒼芭に続き、七瀬も大成功した。次の紗月の番が終われば、いよいよ

紫苑の番である。


「はぁ、緊張するな...」


紫苑は嘆息しながらも決意を固めた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

紫苑と紗月出せなくて申し訳ない...続きは後編で!


最後までご覧いただきありがとうございました。

誤字脱字、日本語のおかしなところがあれば、

ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします。

ブックマークや評価をつけてくださると嬉しいです!

それではまた次の話でお会いしましょう。








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