第4話:ひきこもり、デビュー前に同期に家凸される

先日のネット通話で、紫苑は大体のvtuberの設定を決めた。

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銀鏡 しろみ なぎさ――(16)

姉に憧れてvtuberになったはいいものの、自分がコミュ障であることを

忘れていた、高校1年生の女の子。

コミュ障を治すことを目標にvtuberを頑張ることにした。

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うん、まあいいだろう。コミュ障とコミュ障を治すところ以外は全部嘘だが、

設定なんてそんなもんだ。全部本当だったらそれは設定ではなくただの事実だろう。

ちなみに外見的な特徴は銀鏡 夢月の妹という設定からきた銀髪と

セミロングの髪、学生特有の制服を羽織っているところだろうか。


「同期の子たち...か。」


涼葉は紫苑に同期が3人いると言われたのだが、まだ誰とも会えていない。

会ったことがあるわけがないのだ。会話をしたことがある涼葉ですら

紫苑は顔を知らない。


「会いたくないわけではないんだけど...」


同期はこれから仕事をやっていく同僚、仲間だ。

いくらコミュ障の紫苑でもデビュー前に会っておきたい感情はある。

せめて、紫苑が外に出れれば、話は違うのだが。


「沙結姉ぇにでも聞いてみるか。」


そう言いながら、紫苑は隣の沙結の部屋に行く。

すると沙結がパソコンの前で何やら喋っているではないか。


「何してんの?」


「え!?あ、ちょっ一回部屋出て!」


「なんで?」


「今配信中だから!!」


「配信中...ってええええ!?今配信してんのぉぉぉ!?」


《コメント》

・ん、誰?

・誰?

・でも女の子っぽいよな?

・妹とか?オカンはないだろうし

・オwwカwwンww

・さすがにオカンはねぇわww

・妹かー

・地味に前下の子が~とか言ってた気がするし

・え、マジ?

・マジマジ


「ごめんね...配信の邪魔して...」


「うん...」


紫苑はそそくさと沙結の部屋を出たあと、光の速さで部屋に戻る。

そのまま流れるようにベッドにくるまりながら、紫苑は思った。


(やっちゃったー----!!)


配信中の部屋に入るなど、言語道断だ。

ましてや姉の、今トップのvtuberの配信に入ってしまうなど。


「はぁ...困ってるだろうなぁ、沙結姉ぇ...」


一方そのころ、沙結はというと――


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「いやーみんなごめんね!今日は”妹”ちゃんに配信するって言い忘れてさー」


《コメント》

・ええんやで

・しゃーないしゃーない

・たまにはこういう事故があったっていいやろ

・↑それな


「ほんと?ならいいんだけど...じゃあ続きやろっか!」


あんまり困っていなかった!

それもそうだ、彼女はプロだ。この程度のハプニングなら慣れている

伊達にトップのvtuberのわけではないのだ。

そして紫苑はというと――


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「ん、涼葉さんからメッセージだ」


露木 涼葉 すまない、紫苑君...私には止めることが...できなかった...どうか、      

     彼女たちを...責めないで...やっ...て...くれ...ガクッ」


「涼葉さぁぁぁぁぁぁぁん!?」


悲報:涼葉、死す

そんなことになぜなったか、簡単に言ってしまえば、涼葉が紫苑の同期たちに

住所を教えてしまったのだ。

家から出ることのできない紫苑を慮ってしたことなのだがまさか涼葉も


「うううぅぅそうなんでずか!?わがりまじた!今からその子の家に行きます!」


「え?」


「そうね!一人だけデビュー前会ってないなんて不平等だものね!」


「え?え?」


「うん...まだ一人だけ会ってないなんて...ふびょーどー...」


「え?え?え?」


「よし、行こう!」


「ええ!」


「いえっ...さー」


タッタッタッタッタ


こんなすぐに行動を起こすとは思わなんだ。

もう少し、せめて1週間くらいあけて、綿密に計画を立てると思っていた。

まあ、涼葉が言えたことではないのだが。

だがそのことを紫苑は知らない。


ピーンポーン!


「ん、なんだろ...郵便かな...」


そしてもう一つ、不運なことに紫苑は外に出ないギリギリ、

それも相手と喋る必要のない郵便などは受け取れてしまうことだ。

よって、紫苑はいつも通り”郵便だと思って”玄関に行く。


「はーい」


「「「君が紫苑君?」」」


「え?...キュウ...」


「紫苑君!?」


スキル:陰キャ、コミュ障が発動した!!

紫苑は気絶状態になった!


「「「ごめんなさい」」」


「い...いんです...ミスは...誰にでも...あります...」


「やさしい...」


あれから30分後...紫苑は目を覚ました。

なぜか自室のベッドに寝ていたが。


「と...とりあえず...じ、じこ...紹介します...」


「僕は...篝...紫苑、今年高校二年生に...なりました。一応...男です...」


「じゃあ私も、私は最上 蒼芭もがみ あおばです。高校1年生なので

 紫苑君の年下ですね。」


「私は柏木 七瀬かしわぎ ななせ!紫苑君と同い年!よろしくね!」


「ん、最後は私、早坂 紗月はやさか さつき...高校3年生だから...みんなの

 お姉さん...よろしく...」


「み、みなさん...よろしく...お願いします...」


特に根拠はないが、紫苑はこの人たちとなら、もしかして楽しく過ごすことが

できるのではないか。

そんな淡い期待を抱いた。


無許可で家凸してきたことを忘れて...


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

次回はキャラ紹介、そしてその次にデビュー回にします!


最後までご覧いただきありがとうございます。

誤字脱字、日本語のおかしなところがあれば、

ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします。

ブックマークや評価をしてくれると嬉しいです!

それではまた次の話で会いましょう。

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