第3話:ひきこもり、社長と通話する

午後3時

vtuber事務所クロノスタシス

涼葉はパソコンの前で笑みを浮かべていた。


「やっと彼と話すことができる...楽しみだ...」


今日はこの前沙結が紫苑を1時間程説得した結果、30分だけならと

紫苑が通話にOKを出した日である。


「約束の時間まであと30分...か...」


そう言うと、涼葉は背もたれに腰を預けながら、SNSの巡回を始めた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


一方そのころ紫苑はというと...


「ああああもうあと30分しかないぃぃぃ!」


焦っていた。見事なまでに焦っていた。だがそれも自業自得なのだ。

沙結の口車に乗せられたのが悪い。それは、紫苑も理解していた。


「あーくそっ全部沙結姉ぇのせいだ...」


約束の時間まで、残り10分。流石にそろそろ準備をしなければならない。

ここで約束を破ろうとしないあたり、紫苑の律義さがわかるだろう。

さて、約束の時間だ。紫苑はパソコンからネット通話を開始した。


「やあ、1週間振りだね、紫苑君?」


「あ...え...ぁ...はい...」


「どうした紫苑君?この前はもう少しはっきり喋ってたじゃないか。」


「ご、ごめ!...ごめんなさい...」


「まあ、大丈夫だよ。まだデビューまでは時間がある。それまでに、

 ある程度慣らせばいいさ。」


「はい...す、すいません...」


「今日君と話したかったのは君をどういうキャラで売っていくか...だ。」


「え...?」


「そんな心底意外そうな声を出すな...これでも私は社長だぞ?」


「そ...そうでした...」


「フン...まあいい...まず一つ目、それはガワのビジュアルだ。」


「...はい」


「まず、こちらとしては女性...銀鏡 夢月の妹としてデビューしてほしい。」


そう言われると、


「!...な、なぜですか...」


「ふむ、理由か。3つある。」


「み、3つも...」


「ああ、一つ目、君の声で男性のvtuberをやるのは難しいことだ。」


「う、わ、わかってましたけど...」


「いや、私もこれくらいなら男性でいく道も考えたんだが。」


「...だが?」


「いままでクロノスタシスに所属したvtuberは全員女性だ。

 急にそこに男が入ったら、どうなると思う。」


「...あまりよく思われない...ですか?」


「そんな甘いもんじゃないよ。ファン...特にガチ恋勢と言われている人は大激怒

 だろうね。」


「ヒィィ...」


「これは沙結にも同じことが言える。いや、沙結はもっと酷いかもね?」


「ど...どうして?」


「だって男と同棲してるんだぞ?ガチ恋勢からしたらたまったもんじゃない。

 最悪、家を特定されて押しかけてくるかもしれない。」


「お...押しかけて...どうするんですか?」


「決まってるだろ、殺すか誘拐するかどっちかだ。まあ、どっちにしろ

 君は死んでいるだろうね。」


そこまで聞いて、紫苑は青ざめた。それはそうだろう。

男性vtuberとしてデビューする=死だと言われたのだから。


「わ...かり...ました...女性として...デビュー...します...」


「おや、すんなりOKしてくれるんだね。やっぱりやめるとか言うと思ったのに。」


「だって...僕が採用されたってことは...僕の代わりに不採用になった人もいるから」


「...それがわかっているなら、いいんだ。じゃあ、名前や性格、それに絵師

 とかも決めていこうか。名前の苗字は銀鏡でいいと思うが、

 性格はどうにかなっても絵師はな...絵師も夢月を描いた人と同じがいいんだが。」


「あ、あの...絵師って、必要なんですか?」


「ん?当然だろう?イラストがなければvtuberは成立しないからな。」


「僕じゃ...駄目ですか?」


「というと?」


「僕も少しネットで絵描いてたんですけど...」


そういうと、紫苑はメールでSNSで自分のアカウントと送った。


「な!?、天音!?君”あの”天音なのか!?」


「はい、趣味程度で1年ほど...なんか、いっぱいメール来て...怖くなって...         

 やめました...」


「一人の絵師を潰したのは、世間からのプレッシャーだったか...世の中って

 怖いな...」


数ある紫苑の才能の1つ、イラストレーターが他人に知られた瞬間であった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

今回は短めです。語彙がなくてすみません。


最後までご覧いただきありがとうございました。

誤字脱字、日本語のおかしなところがあればご指導ご鞭撻のほど

よろしくお願いします。

ブックマークや評価をつけてくださると嬉しいです。

それではまた次の話で会いましょう。

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