第10話 勇者



 クォークは公園に到着すると、辺りを見回した。


 他国の工作員は、それを公園の外から監視している。


 クォークは持っていた荷物を地面に置くと、フッと姿をくらませた。


 工作員はクォークの姿を見失ったのか、キョロキョロしている。


 クォークと工作員を視界に収めるため、距離を開けていたことが幸いし、レプトはクォークの挙動を追えていた。


(あいつ。気づいてたのか!)


 クォークは工作員に肉薄し、腹にパンチを入れた。


 後は知らないとばかりに、クォークは置いた荷物を持つと公園を出て行った。


 クォークの腹パンで沈んだ工作員を回収するため、レプトはマントを脱いだ。




     ◆




 数ヶ月の時が経ち。


 クォークに王城からの使者が来た。


 とうとう来てしまったかと、レプトは気を引き締めた。


 クォークたち勇者候補を王都に集め、次代の勇者を決めるための招集だ。


 クォークは了承して、王都への旅の準備にかかった。




     ◆




 王都に到着したクォークは、充てがわれた家に着くと、


「忙しくなりそうだから、よろしく!」


 笑顔でレプトに握手を求めた。


「任せろ!」


 クォークの手を握りしめ、


「王都の市場いちばは調査してある。旨い飯作るよ」


「そうじゃなくて。私のこと、これからも守って」


「えっ?」


 レプトは頭の上に?マークを浮かべた。


「黙ってたけど――――」


 クォークは、レプトが隠れて護衛していたことを、2年前から知っていたと告白した。


「私はバカだけどさー、レプトのことは何でもわかるんだからっ!」


 クォークは、ことここに至ってはコソコソと護衛するんじゃなく、ずっと隣に居てほしいとレプトに頼んだ。


 黙っていたのは、レプトが隠そうとしていたからだと告げられたレプトは……。


 その笑顔にやられ……、必ず守ると誓うのだった。




     ◆




 1年後。


 クォークは次代の勇者に選ばれた。


 レプトは未来の記憶も活用し、敵になりうる相手を葬り続けた。



 当初の目的、6年後に殺される運命は回避できた。



 これからは魔王軍との戦いがはじまる。


 レプトに、ここから先の未来の情報はない。


 今まで以上に気合を入れ、クォークの隣に立ち続けると誓い、レプトは拳を握りしめた。


 二人の人生はまだまだ続く。






     [完]


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幼なじみは勇者候補で俺はヒモ 大然・K(だいぜん・けー) @daizen-K

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