第03話 未来



 レプトは朝の家事を終えると、朝市へ出かけた。


 そこで新鮮な食材を探すのが、クォークを喜ばせるコツだ。


 レプトたちは農村の出身だから、野菜の鮮度にはウルサイ。



「何かいい物あるか?」


 レプトは馴染みの行商人に声を掛ける。


「今朝は近くの川で捕れたての魚があるが、どうだい?」


「川魚か。2つくれ」


「まいどー」


 その後、野菜も買い込んで帰宅した。



 魚をさばいて、夕食用の仕込みを終えて家を出る。


 訪れるのは盗賊ギルド。


 盗賊といっても犯罪組織ではない。


 冒険者ギルドや商業ギルドに並ぶ、れっきとしたギルド組織である。


 誰もが12歳の洗礼の儀で、加護を授かる。


 【盗賊】は偵察や罠解除などで、冒険者パーティーにも重宝される。


 そんな盗賊たちが集まって何をしているのか?


 情報を売買する場所として、あらゆる人が利用している。


 国内情勢、他国の情報、魔獣の状況、さまざまな情報がここに集まる。



 【盗賊】のレプトもギルドの一員だ。


 毎朝、ギルドがオープンする前に顔を出し、目ぼしい情報がないか探っている。


 内容によっては、金を払って情報を仕入れる。


 昨晩殺した相手の情報がないか探ってみるが、目ぼしい情報は集まらなかった。


 レプトは、情報収集を諦め裏庭に出て、腕が鈍らないよう訓練することにした。


 戦闘訓練をしながら、別の事を思考する。


 矛盾するような行動だが、盗賊ギルドの先輩から教わった練習方法だ。


 いつでも、どんな時でも、頭で考えるより速く、条件反射で身体が動くように鍛える。


 考えるより先に手が出る、クォークのような行動は好きになれなかったが……。


 この訓練のおかげで、生き延びることができた経験もあったから続けている。



 レプトは、腰の短剣を抜いては戻すことを繰り返す。


――シュッ――カチャ。



 あの、辛く切ない想いを忘れないために……。


 素振りをしながら――――と過去のことを思い出す。


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