第02話 レプトの隠し事



 レプトはベットシーツを洗いながら、昨夜のことを思い出していた。



 近くの隠れ家に死体を隠したレプトは、街の中心地へ向け歩き出した。


 レプトは、昼間からカジノに入り浸るダメ男としても知られている。


 いつものようにヘラヘラした顔でカジノへ吸い込まれていく。


 出入り口近くのホールは、一攫千金を夢見る有象無象で騒がしい。


 人を避けながら進み、二階へ上がると奥のカウンターへ向かい、


――ココン――コン。


 レプトはリズムよくカウンターを叩いた。


「いらっしゃい」


「いつもの」


「こちらをどうぞ」


 出された鍵を掴み、さらに奥へ進む。


 廊下の最奥にある29号室の扉を、


――ガチャリ――カチャ。


 鍵を差し込んで部屋に入ると、すかさず内からロックした。


 ポケットからカードを取り出し、左の壁の隙間に差し込んで下に動かすと、


――カチッ。


 と解除音が聞こえる。


 少しズレた壁を押すと、その先に下へと続く長い階段が現れた。



 階段を下ると、カジノの地下にある一室へと到着した。


「珍しいな。こんな時間にどうした?」


「すまん。っちまった」


「どうしたよ?」


 レプトは、先の一件を詳しく語った。


「死体の身元調査を頼む」


「わかった。後は任せてくれ」



 この国・サンベール王国で許可されている賭博とばく場は、国営カジノだけだ。


 カジノには賭博場としての役目と、もうひとつ重要な役割がある。


 国として表には出せない――――闇の仕事に関する連絡所として使われている。


 世間からはクズ男と見られているレプトは、サンベール王国の闇にうごめく工作員の一人だ。



 カジノを後にしたレプトは帰宅を急いだ。


「遅くなっちまった。クォークのやつ、怒ってなければいいが……」



 その願いは叶わず、


「遅~い。お腹ペコペコ~」


 クォークはご立腹だった。


「ごめん。少し待ってくれ。晩飯はご馳走だ!」


「わ~い。何ナニ?」


「チキンの香草こうそう焼き」


 クォークの機嫌を取るには、美味しいご飯が効く。


 幼なじみとして長年一緒に過ごしたレプトは、クォークの弱点を知り尽くしていた。


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