第39話 ポイントカードの利用規約

 ピィとルディス。

 大切な2人との絆を確かめた後。

 俺達は、魔女の捜索から戻ってきたカルチュアを出迎える。


「ふっ、一夜明けて……いい顔になったな、リュート」


「分かるのか?」


「ああ。お前だけではなく、隣の2人も活き活きとしている。一体、どのような魔法を使ったのか教えて欲しいものだ」


「えへへへっ♡ それはですね、いっぱいちゅーを……」


「うぉっほん! そんな事よりも、魔女は見つかったのか?」


 幸せそうに答えようとするピィを遮り、俺はカルチュアに本題を訊ねる。

 流石にカルチュアや他の兵士達がいる前で、2人とキスをしていたなどと打ち明けたら……今後ロリコン扱いされてしまうだけだ。

 いやまぁ、もはや本当にロリコンなんだけども。


「魔女そのものは見付けられていないが、魔法転移の痕跡は発見した。それを辿れば、奴がどの街を狙おうとしているのか……おおよその位置は掴める」


「そうか。じゃあ、その街で魔女を迎撃すればいいんだな?」


「いや、話はそう簡単じゃないぞ。もしも迎撃に手間取れば、奴は街の住人の精気を吸って真の姿を……」


「手間取る……だって?」


 俺がそう答えた瞬間、カルチュアを筆頭に……背後に控えていた兵士達もが、一斉にゾワッと背筋を震わせる。

 どうやら無意識の内に、魔女に対する殺気を放ってしまっていたようだ。


「安心しろよ、カルチュア。今の俺達なら、もうそんな事にはならない」


「私達の心は1つ」


「誰が相手であろうとも、心を乱される事は無いわ」


 ぎゅっと、俺の両脇の2人が左右の手を握る。

 カルチュアはそんな俺達を、どこか羨ましげに見つめた後……小さく頷いた。


「要らぬ心配をしたようだ。許してくれ」


「いや、こっちこそ生意気な事を言っちまったな。元はと言えば、昨晩俺達が取り逃がしたせいでもあるのに」


「……急な事で動揺したのも無理はない。我とて、その状況ならばメルディの……いや、魔女の首を取る事は出来なかっただろう」


 カルチュアはそう呟くと、俺の隣を通って砦の中へと戻っていく。


「少し疲れたので、正午まで休ませて貰う。それから、魔女の出現する街へ向かうぞ」


「ああ、分かった」


「……我にも」


「ん?」


「我にも、元気になるおまじない……しに来てくれてもよいからな?」


 チラリと俺の顔を見て、頬を朱に染めるカルチュア。

 もしかすると、今朝俺達が何をしたのか……勘付いているのかもしれない。


「マスター……駄目ですからね?」


「アタシ達というものがありながら、浮気は許さないんだから」


「ああ。分かってるって」


「いずれ、愛人を作るのは構いませんけれど。今日は私達が正妻になった記念日ですから!」


「そうよ。一生残る記念日に、他の女とちゅーなんてあり得ないわ」


 正妻2人は俺の腕に自分の腕を絡ませて、幸せそうに微笑む。

 もうすっかり、昨日の落ち込みや動揺は感じられないな。


「正午まで何をしますか? もっといっぱい、ちゅーしてもいいですか?」


「それも魅力的だが……その前に。ピィ、確認したい事がある」


「え? マスターが望むなら……私、いつでも初めてを捧げますけど」


「いや、そうじゃなくて」


 モジモジと内股を擦るピィにツッコミを入れつつ、俺はずっと気になっていた事を彼女に質問する。


「実は、スキルヒントについてなんだが」


「スキルヒント、ですか?」


 そこで俺は説明する。

 メルディを救おうと、新たなスキルを思いつこうとした瞬間。

 エラーというウィンドウが表示され、失敗してしまった事を。


「なるほど……そんな事があったんですね」


「何が原因だったのか、検討もつかなくてさ」


「うーん。単に覚えられないスキルだったとかじゃないの?」


「それなら、エラーとは出ないんじゃないか?」


「マスター。私はその理由、なんとなく分かった気がします」


「え? 本当か!?」


 ピィはコクンと小さく頷くと、自分の推論を語り始める。


「マスターのスキル入手は、私に貯まったポイントを消費して獲得するものです」


「ああ、そうだな」


 こんなにも可愛い顔をしているから、つい忘れがちになるが。

 ピィの本来の姿は、俺が転生前から愛用しているポイントカードである。


「つまり、ポイントを消費する際にはポイントカードのルールに則らないといけないのではないでしょうか?」


「ポイントカードのルール? 何よ、それ」


「一定期間未使用だとポイントが無効になるとか、カードごとに細かいルールはありますけど。今回、マスターがエラーを起こした理由は……【本人と家族以外のカード使用】なんじゃないかなって」


「本人と家族以外……どういう事だ?」


「はい。神丸スーパーのポイントカードは、本人と家族以外のポイント付与、ポイントの使用は禁止されていました。ですので、この世界でもマスター以外にポイントを使用する事は出来ないと思われます」


 俺が貯めてきたポイントなんだから、当然と言えば当然だ。

 だけど、それとエラーになんの関係があるっていうんだ?


「そこでエラーの話に戻りますが。マスターが獲得しようとしたスキルは全て、メルディさんを救う為のスキル……でしたよね?」


「……まさか」


「自分ではなく、他人であるメルディさんの為にポイントを使用する行為。それがカードの規約に引っかかり、エラーとなったのだと予想されます」


 言われてみれば、たしかにそうかもしれない。

 ステータスアップ、武器適正。

 『状態異常耐性』、『メスガキ理解らせ』、『騎乗スキル』。

 そのどれもが、俺自身の為となるものだ。


「待ちなさいよ。アタシやアンタの擬人化はどうなるのよ」


「ルディスの擬人化はインポティ様のサービスでしたし、私の場合は……その、マスターのお嫁さんなわけですし。家族カウントだったんじゃないかなーって」


「ああ、それは間違いないよ。俺は最初から、ピィの事を家族だと思ってる」


「ンヒィーッ♡」


 俺が頭を撫でると、ピィは雌豚のような歓喜の声を漏らす。

 まぁそれはともかく、これで納得がいった。


「自分と家族以外へのポイント利用が出来ない……盲点だったな」


「ねぇ、今のアタシなら……ポイント使えるのかしら?」


「使えると思うぞ。ルディスも大切な家族だからな」


「おほぉ……♡」


 頬を優しく撫でてやると、今度はルディスがアヘアヘ状態に。

 この子達の将来が、ちょっと不安になってきたぞ。


「ポイントを使えば私のおっぱいをもっと大きく出来るかも……」


「それよりも、年齢を成長させた方が得策じゃない? 合法的に(禁則事項)が出来るようになるわけだし」


「いや、それはマズイ……いろんな意味で」


 俺達の冒険を配信で見ているらしい神々は、きっとロリコン紳士ばかりだからな。

 ピィとルディスが成長なんてしたら、きっと怒り狂うに違いない。

 なぁ、そうじゃないのか? 神様達よ……


「冗談はさておくとして。アタシにもポイントが使えるのなら、ちょっと試したい事があるんだけど……」


「試したい事?」


「昨晩、【魔力】を上げていたけど、魔法を扱えないままだと少し勿体ないでしょ? だから、アタシに担い手の【魔力】を流せるようにするのはどう?」


「魔法剣ならぬ、魔法斧か。それはいいアイデアだな」


「(担い手の【魔力】を流し込まれるって……なんかちょっとえっちぃわね)」


「なぁーにを赤くなってるんですかぁー? このこのぉ……可愛いですよ、ルディス」


「きゃっ!? 急に触らないで……あんっ、ほっぺスリスリしないでぇ……ちゅーしたくなっちゃう」


「ちゅー」


「んっ……ちゅー」


「「ちゅちゅちゅっ♡」」


「こらこら、急にサカるんじゃない」


 俺を挟んだまま、ちゅっちゅしながら体を触り合う2人。

 俺までムラムラしてしまいそうなので、やめさせる。


「「むぅー」」


「魔法斧は採用しよう。どういう方向性にするか、魔女との決戦までに練っておくよ」


「構わないわ。今度こそ、アタシ達で魔女を倒しましょ」


「それと……メルディの件なんだけど」


「……っ」


「俺に、ちょっとだけいい考えがあるんだ」


「「え?」」


「このままクソ魔女を倒しても、スッキリはしないだろ? やっぱり、全員がハッピーになれる結末じゃないとさ」


「でも、どうやって……?」


「そう簡単には……」


 不安そうに呟くピィとルディス。

 俺はそんな彼女達の心配を吹き飛ばすように、力強く答える。


「ロリだよ」


「「ファッ!?」」


「やはりロリは全てを解決する」


 驚きで目を丸くする2人を抱きしめながら、俺は脳内で完璧な計画を作り上げるのだった。







【ネクスト チャプターズ ヒント!!】

・強制ロリ化スキル(消費10000P)

・そのハメ技コンボ、うちのシマじゃアリだから





・吸精の魔女「なんで……笑ってるの? ロリコン!」




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