第27話 本物の女神ですから!女神ですから!!

「お? 遂に投票結果が出たみたいだぞ」


「っ!」


 俺がインポティから騙し取ったタブレット。

 この世界の理すら操作するこのチートアイテムをどうするのか。


 元女神インポティに返すのか。返さないのか。壊すのか。

 俺はこの状況を見物しているという神々に、その決定権を託した。


「えー……まず、お前に良いニュースと悪いニュースがある」


 俺は目の前に表示されている投票結果を見ながら、涙目のインポティに声を掛ける。

 彼女はすかさず俺の足元に寄ってくると、ズボンにしがみついてきた。


「良いニュース!? 返してくれるのですか!?」


「良いニュースは、タブレットは壊すという票が少なかった事だ。結構、お前の事を可哀想だと思ってくれている神様は多いらしい」


「ふふーん! 当たり前でしょう? なにせこの私は、神々の人気者……」


「じゃあ、次は悪いニュースを伝えるぞ」


「あぇ……? 悪いニュース?」


「お前にタブレットを返すという票は0だ」


「……じぇろ?」


「そんでもって、タブレットを返さないという投票が圧倒的。そういうわけだから、コイツは俺が預かっておく事にするよ」


 そう答えた瞬間、俺の手の中のタブレット全体がピカッと光る。

 やがて光は縮んでいき、俺の手のひらの上で銀色の指輪に変化した。


「おお、これなら持ち運びが便利だな」


 俺はその指輪を右手の人差し指に嵌める。


「わだじのだぶれっどがえじでぐだざいよぉぉぉぉぉっ!」


 すると突然、足元のインポティがぴょいーんっと飛びついてくる。

 しかしその顔を俺はアイアンクローでカウンターする。


「ふぎゃああああああああああっ!? いだっ、いだいぃぃっ!?」


「暴れたら指が食い込むぞ。離すから大人しくしろ」


「う、うぅっ……どぼじで、どぼじでごんなごどずるのぉ……?」


「自業自得だろ。人間のことを散々バカにしておいて、自分がいざ人間になった感想はどうだ?」


「ちぎゃう……にんげんじゃないもん。わだじめがみだもぉん」


「……まぁ、自分がどう思うかは勝手だからな。それでいいんじゃないか?」


 さっきまではもっと痛めつけてやろうとか、辱めてやろうとか思っていたんだが。

 こうして目の前で綺麗な女の子がメソメソと泣いているのを見ると、流石に罪悪感が半端ない。

 もうこれで十二分に復讐は終わったわけだし、もうコイツに関わるのはやめよう。


「さて。それじゃあ時間停止を解くか……」


「……あ、あの? 本当に、タブレットを返してくださらないのですか?」


「ん? ああ、だって返したら復讐されそうだし」


「…………しません」


「せめてもっと上手に嘘を吐けよ。バレバレだっての」


 脂汗を垂れ流しながらそっぽを向くインポティに呆れつつ、俺は上の方に向かって話しかける。


「なぁ、神様! 誰でもいいから、この時間停止を解いてくれないか?」


 俺がそう言った瞬間、周囲の白黒が次第に色を取り戻していく。


「リュート、本当におめでとう」


 パチパチパチパチと、拍手の音も戻ってきた。

 しかしすぐに俺を祝福する賛辞の声や喝采は、ざわざわとどよめきに変わる。


「な、なんだ……? リュート、お前の足元にいるその女は? いつそこに現れた?」


「ああ……そっか。みんなの目線だとそうなるのか」


 時間停止と共に顕現したインポティは、カルチュア達にとってはいきなりパッと姿を現したようにしか見えないのだろう。


「「ええええええええええええっ!?」」


 インポティの素性を知るピィとルディスは揃って、目玉をポーンッと飛び出させて驚いているようだ。

 そりゃそうだよな。自分達を生み出した創造主が、いきなり姿を見せたのだから……


「な、何をしているんですかぁぁぁぁぁぁぁっ!? いくらインポティ様といえど、マスターに密着するなんて許せません!!」


「ふざけてんじゃないわよ!! このクソババア!! アタシの担い手から離れなさいよ!!」


「えー……? そっち?」


 あの子達の優先度的にはインポティ<<<<超えられない壁<<<<<俺であるらしいな。

 それはとても嬉しいのだけれど、愛が重すぎて将来が怖いです。


「う、うぅ……なんですかぁ。自分の作った子にもぞんざいに扱われるなんてぇ」


 シクシクと涙を流し、ダンダンと床を叩いて悔しがるインポティ。

 この点に関してはちょっぴり同情しなくもない。


「インポティ……だと? まさか、女神インポティ様か?」


「お?」


 カルチュアを中心に、会場全体の貴族達が顔色を変え始める。

 ああ、そういえばインポティはこの世界でも女神として周知されているんだっけか?


「ふ、ふふっ……あはははははははっ!!」


 その事に気付いた途端、先程までの落ち込みぶりもどこへやら。

 ムクッと立ち上がったインポティが、ドヤ顔で俺の方を見てくる。


「そうです!! 私は女神インポティ!! 私を信仰し、崇め奉る人間達よ!! この私の前にひれ伏す事を許しましょう!!」


「コイツ……!!」


「おやぁ? 思惑が外れて残念でしたねぇ、愚かな人間よ。私はこの世界の神!! たとえ力を失っていようとも、信者達が私を支えるのは当然の事!!」


 だから今後の生活も安泰だ、と思っているのだろう。

 凄まじいドヤ顔で、俺を下から覗き込んでくるインポティ。

 うぜぇ……と思うが、こればかりは仕方ない。


「まさか……本当に」


「フフフフ。カルチュア王女、貴方には特に私は目をかけていましたからね。祝福も与えてあげましたし、私にとても感謝している事でしょう」


 ドヤ顔のままインポティは目を見開いているカルチュアへ近付く。


「本当に信じられない事だ」


「ええ、そうでしょう。しかし、これは現実です。さぁ、まずは私に……」







「よもや、インポティ様の神聖なるお姿を真似する不届き者がいようとは」


「ひょ?」


「それだけでも恐れ多い不敬だというのに、自分がインポティ様であるかのように振る舞うとは……許しがたい。即刻、この場で首を刎ねてやろう」


「……ひょひょひょ?」


 驚愕の顔から一転。

 凄まじい憤怒の表情に変わったカルチュアが、近くの兵士に目配せをする。


「カルチュア様!! この剣をお使いください!」


「チッ、バハムートが治療中でなければ……消し炭にしてやったものを。しかし、今はこれで我慢するとしよう」


「ま、待ちなさいっ! 私は本物の……!」


「ふんっ!!」


「ひゃあああああああああああああああああっ!?」


 カルチュアが振り下ろした剣の一撃を紙一重で躱すインポティ。

 その時、前髪がバッサリと切られてパッツン前髪になってしまう。


「か、神ごろしぃーっ!?」


「黙れ!!! まだ言うか!!! この偽物が!!!」


「偽物じゃありません!! ほら、見てください!! 私、美しいでしょう!? どこからどう見てもインポティではありませんか!!」


 インポティは必死に自分が本物だと訴える。

 それはカルチュアだけではなく、周囲にいる貴族達に対しても……だが。


「たしかに綺麗なおなごだとは思うが」


「なんというか、オーラが足りぬ」


「どこからどう見ても人間であろう?」


「インポティ様の絵画や石像は、もっと美しかったはずだ」


「あああああんっ!! 人間の芸術家って仕事しすぎぃっ!! こんな事なら人間に啓示を与える時、フォ○ショで修正なんて入れるんじゃなかったぁー!!」


「修正していたんかい」


 誰からも信用して貰えず、喚き散らすしか出来ないインポティ。

 しかし、そんな茶番をいつまでも許すようなカルチュアではない。


「さぁ、辞世の句を読め。お前に出来る事はそれだけだ」


「ひゃ、ひゃぁ……待って、証明しゅりゅ……しましゅからぁ」


「……証明? では、神の力を見せてみろ」


「あう……それは今、ちょっと調子が悪くて出来ないのです」


「では、神の翼を見せろ。光の輪があるはずだ」


「そ、それは盛った設定で……神にはそういう身体的特徴は無いんです」


「そうか……では、死ね」


「おんぎゃああああああああああっ!?」


 さて、どうしたもんか。

 こんなヤツを助けても、なんの得にもならないと思うけど。

 一応こうなった責任は俺にもあるわけで。


「っ!?」


「落ち着けよ、カルチュア」


「リュート!?」


 俺はカルチュアが振り下ろした剣を片手で受け止める。

 バハムートならいざしらず、ただの剣の一撃では俺の薄皮一枚すら切れやしない。


「あ、あわわわぁ……下等生物ぅ……!」


「……助けた相手から下等生物呼ばわりされたのは人生初だよ」


 未だに傲慢さが抜けないインポティを見ていると、助けるんじゃなかったという気持ちがこみ上げてきやがる。


「なぜ止める!?」


「せっかくの祝いの席を血で汚す事は無いじゃないか。それに、あの子達の前でそういうシーンをあまり見せたくないし」


「……それもそうだな。すまない、我は女神インポティ様を深く敬愛している。それゆえに、このような質の悪い偽物には本当に腹が立つのだ」


「……」


 一応、コイツは本物なんだけどな。

 その事実を知ったら、カルチュアはどう思うのだろうか。


「おい、この不届き者を地下牢にぶちこんでおけ!!」


「「「「「ハッ!! おら!! さっさと来い!!!」」」」」


「は、放しなさいっ!! 私は女神ですよ!! 女神なんですよぉぉぉぉぉっ! ああああああああああああああ!! ゴミクズ人間!!! 私を助けなさぁぁぁぁいっ!!」


 カルチュアの命令を受けた兵士達数人に引きずられて、パーティー会場から連れ出されていくインポティ。


「(可哀想に……後で覚えていたら、助けに行ってやるよ)」


「マスター!! これは一体どういう事ですか!?」


「担い手!! ちゃんと説明しなさいよ!!」


 俺が壇上を降りると、駆け寄ってきた二人が不安そうに訊ねてくる。


「大丈夫だよ。今からちゃんと話すからさ」


 俺はそんな彼女達の頭に手を乗せて、詳しい事情を説明するのだった。




<安藤流斗(レベル0)>>

【体力】3001 【力】 1001 

【技】 1001 【速度】1001 

【防御】3001 【魔力】1

【幸運】1001 【魅力】3001


【武器適正】

・斧 1001(SSSランク)

・剣&槍&弓&杖 各1(Gランク)


【所持スキル】

『カード擬人化(20000P)』

・ポイントカードに肉体を与える事が出来る)

『アックス擬人化(0P)』

(斧に肉体を与える事が出来る)

『状態異常耐性レベル5(5000P)』

(ありとあらゆる状態異常を完全に無効にする)

『メスガキ理解らせ(消費P1000)』

(生意気なメスガキを理解らせる)


【残ステータス・スキルポイント】

・59999(神丸ポイント)

・900(登録者)+300×10(評価点)=3900(ボーナスポイント)←NEW!!

(ボーナスポイントは各100(登録者&評価点)毎に支給されます)


【所持金・貴重品】

・約580万ゲリオン(1ゲリオン=2円)

(宿代食事代で定期的に消費されます)

・女神のタブレット ←NEW!!

(インポティの顔認証さえあれば、世界のルールを改変可能)

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