第52話 俺の就職先



 クリスマスが近くなり、街中が騒がしくなってきた。


 雄二と一花いちかは、俺の作ったトレーニングメニューを毎日まじめにこなしている。


 身体に柔軟性が出て、動きがよくなってきた。


 あいつらに必要なトレーニングは、まずは基礎体力で、次に怪我をしないための柔軟性だ。


 このままトレーニングを続ければ、春に卒業するころにはマシな体躯たいくになっているだろう。




     ◆




 今日は俺の進路、就職先の報告をするため国連日本支部にやって来た。


 岩沼さんに案内されて会議室に入ると、人吉先生と島松先生が待っていた。


 俺は来年からの仕事について話しをする。


「足守さんなら問題ないと思いますが、気をつけてくださいね」


「はい。怪我をしないよう気をつけます」


「やはり国連には来てくれませんか?」


 岩沼さんが残念そうな、悲しそうな、そんな顔を俺に向ける。


「すまない。今となっては、あそこは俺の家だ。甥と姪の面倒を見たい」


「残念ですが諦めるしかないですね。頑張ってください」


「頑張ってみる。みんなには世話になった。お礼を言うよ。ありがとう」


 先生たちに頭を下げて感謝を伝え、それを合図に解散となった。



 借金50万円の一括返済の手続きを終えると、岩沼さんが駅まで車で送ってくれた。


「甥や姪って可愛いよね。私にも姪が居ますから、わかります」


「最初はどう接すればいいのかわからなかったけど、俺の素性を知ってる貴重な理解者だ。

 生意気なことも言うけど、それも込みで可愛いもんだと思う」


 キィィと車が停車して、


「着きました。次は三ヶ月後ですね。忘れないでくださいよ?」


「了解した。ちゃんと来るよ。送ってくれてありがとう」


 岩沼さんに手を振って、駅に足を踏み入れた。



 定期的な健康診断は、身体の不具合より精神的に健康かを重視している気がする。


 異世界帰りの貴重なサンプル。


 簡単に手放すとは思えないから、一生国連に付きまとわれるのかもしれないな……。




     ◆




 雄二と一花はトレーニングを続け、かなり身体ができてきた。


 これなら、魔力渦へ連れて行っても問題なさそうで一安心だ。


 妹夫婦も二人の成長を喜んでるし、俺の決断は間違ってなかったようで正直ホッとしている。



 卒業式を終えた雄二と一花が帰宅した。


「卒業おめでとう! 二人ともがんばったな!」


「「ありがとう」」


 一花は、「へへっ」と頬を搔いている。


「ライセンスカードは発行されたか?」


「うん、見せたげる」


 どうよと一花が自慢しているが、ランク1ではお世辞にも褒められないぞ?


「よし。準備はOKだな?

 明日、神奈川のランク1魔力渦まりょくうずに行くぞ。準備しておけ」


「うん」


「やったぁー。シーカーデビューだぁ!」


「明日は異世界には行かないぞ?

 今後の計画を覚えてるだろうな?」


 一花は雄二を指さして、


「まっかせてー。雄二が覚えてるから!」


「一花よぉ。そろそろ雄二離れしないと、これから辛いぞ?」


「わかってるよーだ。ちゃんと覚えてますぅ」



 俺は二人の卒業を待って、3人でパーティーを組んでシーカーとして活動することにした。


 どうやら二人は学校ではマジメ過ぎて浮いた存在らしく、卒業後にパーティーを組むメンバーが居ないと言うから、俺が手を上げた次第だ。


 よし。明日から活動開始だ!




 愛とは求めるものじゃない。


 与えるものだったんだな!



 今頃になって、


 こんな簡単な事に気がついた。



 今からでも遅くはない。


 両親が俺を愛してくれたように、


 二人を愛していこう!






     [完]



――――――――――――――――――


 あとがき


 最後まで、

『異世界から帰還した勇者~戻った世界は人類滅亡待ったなしの世紀末!?~』

をお読みいただき、ありがとうございます。


 web小説にはじめて投稿した初執筆の作品で、手探りで書いていました。


 楽しんでいただけたのなら、幸いです。



 さて、主人公たち3人が今後どんな活躍をするのか? それは別のお話しになります。


 主人公が異世界でどんな冒険をしていたのか? それも別のお話しです。



 打ち切り漫画でよくある、『俺たちの戦いはこれからだ!』エンドになってしまったことは、反省しています。


 主人公の成長を書いたつもりですが、上手な終わらせ方ができなかったのは、作者が実力不足だからです。

 今後の課題にして、精進してまいります。






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異世界から帰還した勇者~戻った世界は人類滅亡待ったなしの世紀末!?~ 大然・K(だいぜん・けー) @daizen-K

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