第45話 探索者養成学校



 夕食後のまったりタイムに、雄二と一花いちかに向けて話題を振る。


「お前らの学校の資料を見せてもらってたが、俺の学生時代と違いすぎて驚いた」


「ん? 逆に蒼大そうたの学校の話しを聞けば、私たちがビックリするんじゃない?」


「だろうな。昔の日本は平和だった。学校の意味がぜんぜん違う」


 二人が生まれた時には、全世界で魔力災害が発生していたんだ。


 平和の意味がわからなくて当然だろう。


「それにしても、探索者養成学校ってのは、大昔の軍人育成施設のようなとこだな。

 更衣室やシャワー、トイレなんかも男女共用なんだろ?」


「そだよ~。でもさぁ、トイレに個室は欲しいって今でも思う。さすがにねぇ?

 慣れないってか、慣れたら女子として終わりだよ!」


 一花は頭を掻きむしりながら喚いている。


 探索者養成学校の目的は……。


 異世界のダンジョンへ行き、魔獣との戦闘に勝利して無事帰還できる人材の育成。


 そのために必要なことは、世間から非難されてでも実施している。


 異性の裸に気を取られないよう、普段から見慣れておけというのは、ある意味では正しいと思う。


 魔獣との戦闘は、命をかけた殴り合いだ。


 楽ではないし、気軽にできるものでもない。


 それは、シーカーの死亡率が正直に語っている。


 二人の話しを聞く限りでは、二人とも裸くらいは慣れてると言うが、俺はその話しを信用していない。


『安全な学校でなら裸になっても大丈夫』


 きっとこんなニュアンスじゃないかと考えている。


「先生たちの言ってることはわかるけどさー、本当なのか、アタシには、わっかんない」


「そうだな。男、とくに若い男子ってのはバカなんだよ」


「それは知ってる~。ほんっとーに、バカだよね!」


「同じパーティーに気のある女子が居ると落ち着かないし、

 戦闘中にその子の服が破れて下着とかが見えると、つい目で追ってしまう。

 それくらいバカだ」


 それがとくに、童貞をこじらせているような男子だと、戦闘の手が止まってしまうかもしれない。


「戦闘の最中、他のことに気を取られるのは命取りだ。

 異性の裸が気にならなくなるよう、裸体くらい普段から慣れておけってことだろうな」


「それな~。そういう理屈らしいよー」


「それと同じ理由で、トイレに個室がないんだと思う」


「えーーーーっ。違くない?」


「ダンジョンにトイレはない。

 簡易トイレを持ち込むよな? パーティーと離れた場所で用を足すのは、かなり危険だ」


「うっ……、そうだけどさぁ……」


 一花は腕を組んで唸っている。


「この世界で暮らしていると、風呂やトイレはプライベート空間だから、気を緩めることが多い」


 もうひと押しか。


「気を抜かないと決めても、必ず見張りを立てる必要がある。慣れたら慣れたで、それも危ないんだ」


「ねぇ。蒼大は異世界でトイレとか、どうしてたん? それくらいは聞かせてくれるよね?」




――――――――――――


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これを記念して、近況ノートに一花のイラストを貼りました。

ぜひ、ご覧になってください。


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