第42話 リトライ



 昨日は、入り口で5体のスケルトンを相手にしただけで帰還したから、換金額は4万円で大赤字だった。


 しかし、ここでアイテムをケチると昨日の二の舞いになってしまうから、追加でアイテムを買い込むことにする。



「さて。仕切りなおしだ」


 左手に購入した魔石を握りながら、新調した盾を構えてみる。


「うん。問題ないな」


 これまで使っていた盾は、左手で握りしめて持つタイプのものだった。


 新調した盾は、前腕にベルトで止めるタイプだから、左手に別のアイテムを持つこともできる。


 扱いには慣れが必要だけど、俺はどちらのタイプも異世界で使っていたから問題ない。


 冷却アイテムをペタペタと貼り付けて、気合を入れてダンジョンに入る。



 潜って15分。


 スケルトンのパーティーとエンカウントした。


 前衛・後衛、各3体。


 このダンジョン、スケルトンメイジが多すぎだろ!


 左手に握っている魔石に魔力を送る。


 全身に防御の魔法がかかった頃合いで、突撃だ。


 ダッシュ。


 後衛のスケルトンがファイヤーボールを打ってくるが、俺は着弾点にもう居ない。


 前衛の攻撃を盾で受け流し、1体を剣で突き、もう1体には蹴りを入れて転ばせてやる。


――――ガン――――キン。


 前衛が崩れたのを見て、スケルトンメイジが後退しはじめたが、気にせず前衛を全滅させることに専念。


 距離を取ってファイヤーボールを飛ばしてくるが、ダッシュで駆け寄って一気に切り裂く。



 魔石への魔力供給を切る。


「ふぅ」


 改めて辺りを見回すと、奥から別の魔獣がやって来た。


「休む暇なしかよ」


 あいつが、このダンジョンが高温の原因かもしれないな。


 2体のフレイム・ドッグがゆっくり歩いてくる。


 体躯は小さめだから、2体を包み込むくらいの大きな水弾を作って飛ばす。


 同時に駆け出し水弾の後を追う。


――――バシャリ。


 水弾が当たって弾けると、フレイム・ドッグの炎が弱まった。


 チャンスとばかりに剣を振り上げ、前進を続ける。


 1体がジャンプ攻撃、残りの1体はそのままダッシュしてくる。


 やはり、ここの魔獣は賢いな。


 前進のスピードを落として盾を下げられるようにしながら、剣の袈裟斬りで対応。


 盾で防がれた1体は下がろうとしている。


 ジャンプした方は空中で進行方向を変えられるわけもなく、あっさりと切り裂いた。


 1対1ならこちらが有利。


 残った魔獣も切り裂いて戦闘終了。


「これだけアイテムを用意しても、ひっ切りなしに出て来られると辛いな」


 タオルを出して汗を拭う。


 魔石を回収しながら、どうするかを考える。


 マップを見る限りでは、かなりの広さがあるから、このまま地下1階を探索してみるか。



 水分補給の休憩を挟みながら、2時間ほど経ったところで帰還した。


 本日の魔石換金額は28万円。


 1日の稼ぎでは最高額を記録した。


 魔獣を倒すのが大変だから、これくらいにならないとやってられない。


 しかし、ここに来てからの収支は……。


 まだ赤字だ。


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