第12話 一日のスケジュール

第12話 一日のスケジュール



「こちらが、明日からの足守さんのスケジュールになります」


 岩沼さんが手渡してくれた紙を見る。


 朝食後から午前中はフリータイム、

昼食後にリハビリ、

その後は診察や検査、

夕食後はフリータイム。


 大雑把にこんな感じになっている。


「フリータイムは自由に過ごしていただいて結構ですが、

 そちらの教科書で自習をしていただけると、

 現代の世情が理解しやすいと思います」


 本棚に目をやると、”さんすう”とか”こくご”など、いかにも小等部用の教科書が置かれている。


「流石に算数とかは必要ないと思うんだが?」


「全教科揃えるようにと、先生から指示がありました」


「自由時間が多いようだから、まぁ勉強はするが暇つぶし用に何かないか?」


「そうですね。先生に聞いてみます」


 その後は細々こまごまとした説明をして、岩沼さんは帰って行った。



 部屋にはテレビやネット環境はない。


 徹底的に情報遮断されている感じがする。


 異世界で旅をしていた時は、時間を持て余すなんてことは皆無だった。


 どんな時でも、一手先、二手先を考えておかないと生き残れない。


 そんな環境に居たせいで常に気を張っていた。


 この世界に昔のような安全はないと言われてもなぁ。


 ここで寝てるだけの俺には実感がない。


 美味しい食事と柔らかいベッドが提供されているんだから、どうしても気が緩んでしまう。


 ここは俺の信条、


『ポジティブに行こう!』


 で考える。


 せっかく自由な時間をのんびりと過ごせるんだから、知識は得ておくことにしよう。


 やはり一番気になる歴史の勉強、”れきし1”の教科書から読みはじめる。



 教科書に目を通していたら島松先生が入って来た。


「リハビリが始まったそうですが、どうでしたか?」


「はじめての経験だったから上手くいかなかったけど、続けるしかないよな」


「そうですね。諦めない気持ちが大切だと思います」


 今日は、こんな軽い感じの会話を交わしただけで先生は帰って行った。


 やんわりと情報封鎖のことに触れてみたが、


「もう少し我慢してください」


 と言われた。


 ネットには正確でない情報や、明らかに嘘の情報とかもある。


 26年の空白がある俺では、自分で情報の信頼度を測ることができないだろう。


 だから、間違った知識を持たせない為には必要な措置かもしれない。


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