第11話 リハビリ開始



 拘束から開放されて一番嬉しかったのは、食事ができたことだった。


 白米・味噌汁・豆腐、どれもが懐かしく、すんげーウマかった!


 異世界での旅は本当にキツかった。


 子どものころアニメで見たような、便利なスキルやアイテムボックスとか、あるわけない。


 何より、食料の確保にはいつも苦労した。



 足の力を戻すためのリハビリが、今日からはじまった。


 車いすで運ばれて到着したリハビリ室は、ドラマで見たような場所とは違って狭かった。


 数日拘束されていたから、足以外の全身の筋肉も弱っているようで、思ったように動けなかったのは地味にショックだった。


 今日のリハビリは、1時間ほどで終わった。


 先生にお礼と、


「暇だから自室で足以外の筋トレをしたい」


 と伝えたら、筋トレ用具を貸してくれるようだ。



 付き添ってくれていた鹿妻さんに手伝ってもらいベッドに戻る。


 車いすを押してくれたり、こうして介護をしてくれるのは助かるんだが……。


 鹿妻さんはとてもよく喋るから、どちらかと言うと静寂を好む俺とは相性が悪いと感じてしまう。



――ゴロゴロ。


「事務員の岩沼いわぬまです。はじめまして」


 台車を押して病室に入って来た女性が、礼儀正しくお辞儀をしながら挨拶をしてくれた。


「事務と言っても、病院ではなく国連のです」


 俺としてはどちらでも同じと言うか、どうでもいいことを説明してくれた。


「着ている服で事務の人だって判るのは、制服ってやっぱすごいな」


「あっれぇ~? 制服フェチなんです?

 今どきはナース服ってないんです。残念でしたねー」


 鹿妻さんが相変わらず絡んできて、若干のウザさを感じる。


「どう思考したら、そういう方向へ会話が向かうのか理解できん」


 岩沼さんは俺たちのそんなやり取りを気にもしない様子で、台車で運んできたダンボール箱をゴソゴソ漁っている。


「じゃあ私は行くね。後よろしくー」


「はい。お任せください」


 俺がリハビリに行っている間に、室内のレイアウトが変更されたようだ。


 ベッドから手が届く範囲に、冷蔵庫や本棚などが置かれている。


 岩沼さんはダンボール箱から本を出して本棚に収納して、


「ひととおり作業も済みましたので、詳しく説明いたします」


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