第9話 やる気とご褒美

期末試験のテスト週間。改は自分の家で都にテスト勉強を教えていた。


都「やる気でな~い!勉強たいくつ~!」


改は黙々と勉強していた。騒いでいる都に目を向けると都が座りながらバタバタしていた。


改「暴れるな、机が揺れて集中できないから。」


都「なんでそんなに集中できんの?アタシ、ご褒美ないと力出ないんだよね。」


改「やれやれ・・・・・・そんなことでしかやる気が出な・・・・・・」


改は一つ案を出した。


改「じゃあ今回の期末試験で一つも赤点を出さなかったらなんでも一つ願いを叶えてやるよ。」


都「・・・・・・ホント?何でもって言ったね。」


改「え、でもお金のかかることは無しで・・・・・・」


都「じゃあさ・・・・・・」


都はある条件を出した。


改「・・・・・・そんなことでいいのか?」


都「うん。」


こうして改は要求を呑んだ。次の日の昼休み、改は図書室で勉強していた。自分の勉強もそうだが、問題児の都と豪にどう教えるかを考えていた。


改「(この問題難しすぎるだろ・・・・・・アイツらにどう教えればいいんだよ。)」


改は自分の不甲斐なさに少しイラついていた。すると向かいの席に二人の女子生徒が勉強道具を持って机に座った。その二人は改のクラスメイトだった。


?「犬神さん、向かいの席使ってもよろしいでしょうか。」


赤髪のショートヘアの女子、空手部の「赤木 林檎(あかぎ りんご)」が改に話しかけてきた。


?「え、犬神っちもべんきょしてんの?頑張ってんね。」


隣の銀髪のボサボサ髪ロングで褐色のギャル語を喋るこの人は衣服部の「京谷 町子(きょうたに まちこ)」まさかこの二人が仲良かったとは改は思ってなかった。


改「(今そんなこと考えている場合じゃねえ。自分の勉強しないと。)」


林檎「犬神さん、その問題間違えてますよ。」


改「へ?」


林檎「この問題はひっかけ問題なんですよ。同じ公式で解くと間違うようにできているんですよ。」


町子「は、先生意地悪じゃね?マジヤバみ。」


改「そうか、このままだとアイツらに間違えたまま教えるところだった・・・・・・」


林檎「アイツらって、誰かに教えているのですか?」


改「実はな・・・・・・」


改は林檎と町子に事情を説明した。


林檎「そうですか・・・・・・でしたらモチベーションを上げる方法を考えればいいんじゃないんですか?」


改「その方法って?」


林檎「勉強をゲームと思えばいいのですよ。」


町子「そ、あーしとリンちゃんはゲムともなの!難し問題もゲームにすれば楽しめるって訳!」


改「・・・・・・その考えは予想してなかった。(後、こいつらもゲームするんだ・・・・・・)」


林檎「数学は公式当てゲーム、国語や歴史などは文章当てゲームにするのです。例えば、テレビのクイズ番組だと難しい問題でも楽しめるじゃないですか。私も勉強が得意ではないのでどうしたら勉強が得意になるのかではなく、好きなことを勉強に加えるという考えに至ったんです。」


改「(こいつ・・・・・・天才か?)」


そのアドバイスを聞いた改は放課後、フリーゲの部室で都と豪に勉強を教えることに・・・・・・しかし始まって約10分。


豪「(くっそ・・・・・・フラストレーション溜まりまくりだぜ)」


都「Zzzz・・・・・・」


改「(猫柳、寝てるな・・・・・・猿渡もイライラしてる。)」


改は二人の前に紙を置いた。


豪「何だこれは?」


都「ムニャ?」


改「お前たちにこの問題を解いてもらう。10問タイムトライアル。間違えたらその分ペナルティタイムを加算する。先に短い時間で解いた方が勝ちだ。」


豪「は?なんだよそりゃ。」


都「難しい問題解けないって。」


改「お前たち、これは勉強じゃない。ゲームだ。クイズという名のな・・・・・・」


都・豪「ゲーム!」


改「(食いついた。計画通り・・・・・・)」


豪「しょうがねえな、やってやろうじゃねえか!」


都「まあ狂犬くんには負けないけどね~」


豪「んだと、ぐうたら猫が!!」


改「よし、じゃあ始め!」


改がスマホのストップウォッチを起動した。


改「(まあ最初は見やすい問題だから半分すぎてからが勝負だな)」


都「犬神くん!」

(同時に言う)

豪「犬神!」


改「なんだ?」


都・豪「1問目、分からない!」


改はその場でずっこけた。しかし、この勉強方法は二人の勉強意欲を高めることに成功したのか、次の日から二人が集中して勉強に取り組むようになっていってた。


そして、テストの返却日・・・・・・


改「(すげえ、平均点80点・・・・・・)」


改は自分のテストを見て驚愕した。前の席の水鳥は落ち込んでいた。


水鳥「前より成績下がった・・・・・・」


改「どんまい・・・・・・」


桐谷先生「今回の期末、成績トップは水無月だ。」


水鳥「アイツすごいな。中間の時と同じ一位キープかよ。」


改「(ところで、猫柳はどうなったんだ?)」


改は隣の席にいる都の様子を見た。都は小さくガッツポーズをしていた。


放課後、改は都のお願いを聞くこととなった。それは・・・・・・


改「まさか海を見に行きたいとはな・・・・・・」


都「東京には海がないからこの機会に行ってみたいと思ってね。」


改「しかし、猿渡は惜しかったな・・・・・・答えは合ってても解答欄ずれてて一教科赤点になるとは・・・・・・」


都「ざまあないわね。私はそんな失敗しないけどね~」


改「お前、たまにクズな部分出てくるよな・・・・・・」


都「クズだなんて人聞き悪いわね~」


電車に乗って二人は伊豆の海に向かった。


都「わ~、これが海か~」


改「俺にとっちゃ全然珍しくもないけどな」


都は海に向かって砂浜を駆けた。その途中で靴下と靴を脱ぎ捨てた。


都「冷た~い、あと潮の香りがする。」


都が手で海の水をすくいあげて舐めた。


都「しょっぱ!!」


改「当たり前だろ、海水なんだから。」


都は足を水に浸けて遊んでいた。


都「よし、そろそろあれしちゃおうかな・・・・・・」


改「アイツ、何モゾモゾしているんだ?」


都は制服のシャツを脱ぎ始めた。


改「ちょっまて!!ここで何をするつもりだ!?」


都「なにって、今から泳ぐのよ。」


改「だからってせめて水着を着てこ・・・・・・」


都はシャツの中に学校指定のスクール水着を着ていた。


都「犬神くん。シャツを安全な場所に置いておいてくれない?」


改「・・・・・・お前。」


改に服一式を預け、都は海に体を浮かせた。


都「気持ちいい~暑い季節にピッタリね~」


改「(こんなことなら俺も水着持ってくればよかった。)」


都はその数分間浮かんだり、バシャバシャと水を跳ねて遊んでいた。


都「ちょっと遠くまで行ってみようかな。」


改「あまり遠くまで行くなよ。水位が深くなるからな。」


都「りょ~か~い」


都は泳いで遠くまで行っていった。しばらくして大きな水しぶきが見えた。都が泳いでいるのかと思ったが、手を挙げていた。溺れているように見えた。


改「あのバカ!!」


改は都のところまでシャツを脱ぎ、助けに泳ぎに向かった。


都「助かった・・・・・・急に足がつかなくなって死ぬかと思った。」


改「危ないから気をつけろって・・・・・・あーあ、ズボンがびしょ濡れに」


都「今回のこと、配信のネタにしようかな?」


改「下手すると炎上モノだぞ・・・・・・」


改はズボンをタオルで拭いていた。そこで改はある疑問が


改「(そういえば猫柳、着替えの下着はあるのか?漫画だと忘れているパターンだけど)」


帰り道、電車の中で都は顔を真っ赤にしていた。


改「ホントに忘れるとは・・・・・・」


都「不覚や・・・・・・スカートの下がスースーする・・・・・・」


都が改のズボンの裾を握りしめていた。


第9話(完)

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