第8話 改初めてのバイト

?「ただいま~疲れた~」


茶髪のロングヘアの長身でスレンダーな体系が特徴な少女「御門 炎歌(みかど ほのか)」は部活が終わり家に帰ってきた。


炎歌の母「炎歌お帰り~」


炎歌「母さん、玄関に人の靴があったけど誰か来ているの?」


炎歌の母「実はね、家庭教師を雇ったのよ。あなた、このままだと第一志望の高校に行けないと思ってね。」


炎歌「勉強?そんなの必要ないって、家庭教師の先生には帰ってもらって・・・・・・」


炎歌の母の座っていた机の反対側に座っていたその家庭教師の先生がその場で立ち上がり、振り返った。そこには犬神改の姿が。


改「こんにちは、あなたが御門炎歌さんですね。あなたの学力を上げに来ました。」


炎歌「ひっ・・・・・・ひえ・・・・・・」


なぜ、改が家庭教師の仕事を始めたのか。それは数日前にさかのぼる。

豪は約2週間ぶりに学校へ来た。来るや否や担任の桐谷先生にこってり絞られていた。

豪はその後、フリーゲのゲーム大会での不適切な行動や発言の謝罪会見を配信で行った。まだ許さないリスナーもいたが時間が経っていたのもありこの事件がこれ以上広がることはなかった。


豪「は~めんどくせーな。先公にはどやされるし、謝罪動画を上げさせられるし。」


改「でもこれで炎上は収まるし、また同じことを繰り返さないようになるしな。」


豪「これはお前の賭けに負けたから仕方なく従っているんだよ。」


改「(素直じゃないな・・・・・・)」


真理佳「ところで、次の夏休みにフリーゲ合宿を行うよ。」


改「合宿ですか?」


真理佳「そう、表向きには明かされていないけど実はここで親睦を深めるのを第一で行うイベントよ。」


豪「俺、参加しないっすよ。なんで夏休みまで一緒に遠出しなくちゃなんないんすか。」


真理佳「これは部長命令よ。」


豪「卑怯な・・・・・・」


真理佳「でも安心して、そこの旅館は山奥にある歴史ある旅館で確か今年から高校生になる女将さんもいるから。」


改「へ~同い年の高校生が女将をしている旅館ですか。」


真理佳「その代わり、予算は学校からは出ないので実費でお願いします。」


改「え!?」


真理佳「この部は一部の先生しか知らないからね。学校の資金を使わずに広告収入だけでやりくりしているの。」


改「(そうか、さすがに仕送りのお金を使うわけにもいかないし、バイトでも探してみるか。)」


真理佳「それと、期末テストは大丈夫?」


改「心配無用ですよ。中間試験も平均点以上でしたし。」


真理佳「そういえば、寅好先生が言うには猫柳さんと猿渡くん。赤点あるみたいね。」


都・豪「ギクッ・・・・・・」


都と豪は目線を逸らした。


改「お前ら・・・・・・なんで勉強しなかったんだ。」


都「う~ん・・・・・・ミャー子、勉強分からない♡」


改「かわいこぶってもダメだ!ここは配信じゃなくて現実世界!」


都「ふえ~ん、犬神くんがいじめるよ~」


都が泣きの演技に入るが改は無視を続けた。


改「で、猿渡。お前は・・・・・・まあ言わなくてもわかる。授業中は基本居眠りしてるし、しばらく休んでいたしな。」


豪「自慢じゃねえが学校の勉強には自信がねえ!」


改「本当に自慢じゃねえな!!干支珠高校は静岡有数の進学校だぞ。このまま卒業できなかったらどうするんだよ!」


真理佳「そうね、犬神くん。この2人の先生になってくれないかしら。」


改「え、僕がスか・・・・・・」


真理佳「このまま放っても問題は解決しないからね。」


改「分かりましたよ・・・・・・」


改は喫茶ブルマンで豪と都の勉強を見ることに。


改「猫柳、掛け算間違えているぞ。」


都「え、7×8は54じゃないの?」


改「56だよ!なんで小学生の問題で間違っていんだよ!」


豪「なあ、問題分からねえけど。」


改「この公式使えば解けるぞ。」


豪「は?こんな公式知らねえけど。」


改「おい、これ数学の初めに習った問題だぞ。」


豪「そんなの覚えているわけねえだろ。」


改「どや顔で言うなよ!」


改は2人のあまりのできの悪さにイラついていた。


強羅「まあまあ、落ち着きなさいよぉ。怒っても何もいいことないわよ。」


店長の強羅が都の頼んだパンケーキを持ってやってきた。


改「店長、甘すぎですよ。」


都「パンケーキだけに甘いってか~」


改「黙れ!」


都「怒った~こわ~い」


強羅「先生ならもう少し優しく接するのも大切なのよ。」


改「・・・・・・なんか女装おじさんに正論言われるとムカつくな。」


強羅「もう、可愛くないわね!」


強羅がテーブルにパンケーキを置く。改はコーヒーをすすりながらバイト雑誌をめくり始めた。


改「(バイトはいろいろあるけど大した稼ぎがない・・・・・・かといって高額バイトとなると重労働か深夜バイトになるからな。)」


改がめくっているとあるバイト情報に目がいった。


改「(家庭教師・・・・・・しかも、短期間で高収入。これなら、時間のない俺でも稼げるかも、だが・・・・・・)」


改は豪と都の様子を見る。豪はよだれを垂らしながら眠っており、都はおいしそうにパンケーキを頬張っていた。目の前の問題児を教育できていないのに家庭教師なんて勤まるかと・・・・・・改は深呼吸をした。


改「猿渡起きろ!!」


豪「わ!?なんだなんだ!」


都「!?」


隣にいた都も驚きのあまり食べようとしていたパンケーキを顔につけてしまった。


改「ここから俺も本気モードだ。お前たちを教育してやる。覚悟しとけよ。」


豪は寝ぼけ眼を擦り、都は鼻についた生クリームを紙ナプキンで拭いていた。


ここから3時間の間、ブルマンのバータイムが始まるまで改の鬼の勉強会が行われたのであった。


そして今に至る。


改「(あの時の勉強の成果で猫柳も猿渡も勉強の理解がよくなったんだよな。)」


炎歌「先生、できました!!」


改「どれどれ・・・・・・」


改は赤ペンで答案用紙に丸付けをしていた。


改「・・・・・・御門、94点。」


炎歌「お~今までそんな高得点取ったことないです。私やっぱり天才ですかね~」


改「馬鹿か!!これは小学校低学年の計算問題だぞ!本来なら100点だろうが!」


炎歌「ええ!?でもケアレスミスですよね。」


改「そのケアレスミスが成績ダウンに繋がっているんだよ!」


炎歌「犬神さん、落ち着いてください。キレは体に毒ですよ。」


改「お前がキレないようにすればいいんだろうが!」


炎歌「全くその通りだと思います。」


改「開き直るな!」


改は思わずため息をついてしまった。この御門炎歌、小学生の問題すらわからないくらい知識がないのである。


改「(これでどうやって小学校卒業したんだよ・・・・・・)御門、今、中3だろ。このままで高校いけると思うのか?」


炎歌「私、剣道部の推薦で入ろうと思っているんです。「帝国学園高校」って言うんですけど。」


改「帝国・・・・・・確かあそこ今、文武両道を教育方針にしているらしくて、ある程度の学力ないと入れないって聞いたぞ。」


炎歌はこの世の絶望みたいな顔をしていた。


炎歌「わたし・・・・・・高校諦めます。」


改「あきらめんなよ。そのために勉強教えるからな。」


炎歌「でも私、学力見ましたよね。このままだと間に合いませんよ。」


改「その気持ち、よく分かる。お前には言っておくけど俺、中学の時、学校行っていないんだ。」


炎歌「中学に行っていないのですか?」


改「俺は学校にいい思い出が無くてな。だけどお前はちゃんと学校に行っている。それだけですごいと思うよ。やりたいこともあるしな。だからこそ勉強面でその学校生活をつぶしたくないんだ。お前の成績向上の手伝いをさせてもらえないか?」


炎歌「犬神さん・・・・・・私、頑張ります!」


改「よし、じゃあ改めてよろしく。」


こうして改の初めての家庭教師はいいスタートを切れた。のだが・・・・・・


改「だー!!同じミスすんなって何回言えばいいんだよ!!」


炎歌の学力向上にはまだ時間がかかりそうだ。


第8話(完)

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