杜撰な殺害計画

月見 夕

あの子は殺さなければならない

「ああ、もういいかな、殺しちゃって」

 彼の言葉に、カウンターの店員の顔色がさっと青ざめる。まったくこの人は……こういう話題は場所を選んで欲しい。

「駄目ですよ、もう少し我慢してください」

「いやもういいだろ、俺もう限界だよ」

「彼女が必要だって言ってたじゃないですか。どうしちゃったんですか」

「いや、あの子がいなくてもどうとでもなるなって気が付いちゃってさ。早々にご退場いただくのが俺の務めだろ」

 渋る僕に、彼は小さいスプーンでパフェを切り崩しながら言い放った。

「ええ……でも、殺すにしたって、どうやって」

「絞殺が一番手っ取り早いんじゃないか」

「そんな早々に足が付きそうな殺害方法、嫌ですよ。しかも誰にさせる気ですか」

「松尾」

「あの鉄砲玉ですか。絶対バレるやつ!」

「まあ見ててよ。彼に相応しい殺害動機を与えてあげるから」

「うう……まあでも代案もありませんし……試しにそれで行きましょう」

「よし、大枠は決まったな。――君はこの後どうする?」

「まずはそのパフェを食べきってからにしましょう。ほら、店員さん見てますよ」

 溜息混じりに立ち上がり、僕は会計に伝票を差し出した。

「領収書お願いします。宛名は――丸井出版で」

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杜撰な殺害計画 月見 夕 @tsukimi0518

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