追われるもの、負うもの

バブみ道日丿宮組

ホラー系肉まん

『生きて帰れたら、付き合おう』。

 そう約束をしたのは3時間ほど前。

 今彼女が何をしてるのか、生きてるのかはわからない。

 別々に逃げるという選択肢を選んだのは僕らなのだから、それは仕方ないことかもしれない。

 生き残れる可能性を少しでも高めるための決意だった。

 でも、それはあべこべだ。

 付き合おうというのであるならば、他のやつが死んだとしても二人だけは生き残らなきゃいけない。別々となった今助けられるのも助けることができない。

 彼女が死んでしまえば、セックスできないままお別れになってしまう。

 童貞のまま死ぬのは嫌だ。

 僕だけ生き残っても意味はないんだ。 

 だったら、やることは一つだ。

 彼女のもとへ向かい、二人でこの街を出る。

 

 ーー人食い中華まんがいるこの街を。


 彼女が向かった方角を確認する。

 街を包囲する壁がある場所に僕がつけてないことを考えると、彼女も到達してないと考えられる。

 追おうとすれば、3時間のフリータイムが存在する。

 その間に彼女が何をするのか考える。

 トイレ、お風呂、睡眠。

 建物の中に中華まんが入ってこないのであれば、ホテルに入るのが一番最善。

 ならばと、スマホを地図アプリを起動する。

 ホテルの場所を確認。

 ラブホテルのような場所に入ることはないだろう。人が喰われた街でお金をわざわざ使って逃げ込むのは意味がない。

 ならばと可能性のあるホテルを列挙してお気に入りに追加してく。

 彼女が誰かと一緒にいるかはわからないが……皆でばらばらになって分かれたことを踏まえると、おそらく一人。

 ……待てよ。

 こんな推理をする必要はないじゃないか。

 連絡すればいい。

 簡単な事実確認だ。

 連絡先を開き、彼女へコールする。

 電話はすぐにつながった。

 息を乱した彼女が、『あぁ?』と何かを伝えてくる。

『今どこにいる。そっちに行くから』と伝えようとすると、甲高い『あぁ、あっ、うぅ』という喘ぎ声が耳元に響いた。

 驚きしかなかった。

 まさか、誰かとセックスでもしてるのか? 付き合おうといったのは嘘だったのか? 清楚を象った彼女はビッチだったのか?

 詳しい話を聞こうと口を開こうとすれば、ビデオ通話が開始された。

 それは肌色と、白色。そして赤色が画面に映った。

 肌色は全裸の彼女で、白色は中華まん、赤色は中華まんから出てる触手のようなものだった。

 彼女は中華まんの具がある部分の上を上下に動かされてた。

 触手が彼女の腰を持ち、ペットボトルのような赤い肉片へと落としてく。赤は彼女の破瓜によって彩られたものなのか、もともと中華まんのものかわからない。他の触手は彼女の柔らかそうな乳房に絡み、乳首を先端で吸ってた。

 彼女は喘いで、『やめて、たすけて』と息をつっかえながら吐息してる。

 どうしてこんなことになったのか。

 場所は建物の中だった。入ってこれないはずの建物の一室で、中華まんは彼女を凌辱してた。

 カメラ越しにそいつと目があった気がした。

 中華まんの動きが激しくなり、彼女もまた声を強くする。

 見せつけだった。

 自分ができないことを相手に見せるという支配欲。

 逃げる僕たちの様子から、関係を見通したのかもしれない。

 僕は静かに通話を終えた。

 終わりだ。

 彼女はもう食べられる未来しかない。

 僕が向かったとしても、何も残ってはいないだろう。

 

 でも、それでもと、足は彼女がいる方向へと向いた。


 時間にして4時間。

 彼女が生き続けるのであれば、4時間凌辱されたままとなる。それはもう人の心を失ってしまってる可能性すらある。

 逃げるしかできなかった中華まんに僕は何ができるだろう。

 性の限りをはき出した中華まんであれば、打倒できるのか?

 他の仲間も呼ばれるかもしれない。

 スマホを弄れるのであれば、僕らを呼び出して食すことも可能だ。

 他の奴らに連絡するべきだろうか。彼女を助けてと送るべきだろうか。

 ただのサークルメンバーに仲間意識なんてないか。

 

 最悪の事態、中華まんが徘徊してないかを確認しながら、僕は彼女がいるだろうホテルへと向かった。

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追われるもの、負うもの バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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