七通目 12月23日

親愛なる支配者たる姫君



まじですか。

俺の裏の顔、皆知ってるって本当ですか。皆って誰。

それもう、裏の顔じゃないですよね。え、表の顔が暗殺者ってこと?


ショックのあまり、梟の爪を斬り落としてしまいました。

伸び過ぎてた分ですけど。ちゃんと血管は避けましたよ。あとヤスリもかけときました。

おかげでこいつとも少し和解できたような気がします。なんか震えてますけどね。

やっぱり身嗜みを整えるお手伝いはいいですよね。心の距離を縮めるのに手っ取り早いと思います。


あいつらの名前と素性なんて知ってどうするんですか。

十年以上前ですよ。殆ど覚えてません。素性だって明らかな奴あんまりいませんし、まだ生きてるかどうか。

梟なんて、本当は使い捨てですから。あなたのような主人は特殊です。


キャンディアップル、実際に食べたんですよ。それも本当です。

同業者を二人ほど片付けはしたものの、あなたが手紙は隠語でとか言うから。

ダブルミーニングってやつです。

なかなか気の利いた言い回しだと思ってたんですけど。


ちなみにどっかの皇太子信者からの派遣だったみたいですね。

一応辿れますので、今後も煩わしいことしてくるようなら掃除してきます。


キャンディアップルは生の林檎をそのまま使うので、あまり日持ちしません。

美味しそうな林檎をたくさん買って帰ります。俺が作りますから、それで我慢してください。


それよりお義母さまの腸詰って何ですか。

普通に首じゃだめですか。

殺してからソーセージ作んなきゃいけないの俺。


まあその皇太后殿下はやはり帝都にはいないようです。

ただ、どこに行ったのか全然掴めません。ここまで足取りが掴めないのは、ちょっと気持ち悪いですね。


皇太子殿下は、普通に帝都にいます。

基本的には宮殿のご自分のお部屋と、執務室、あとは散歩に庭園に行くぐらいですね。

戴冠式が近いせいか、少し周囲がピリピリしてる雰囲気はあります。

ちなみに一日のスケジュールは以下。


6時 起床・身支度

7時 朝食

8時 勉強・執務

10時 庭園の散歩・運動

12時 昼食

13時 休憩

14時 勉強・執務

19時 夕食・入浴

20時 読書

21時 就寝


ここ数日、ほぼこんな感じで変わり映えないです。

もうちょっと刺激がないと毎日が楽しくない気がします。余計なお世話でしょうけど。


梟にこの手紙を託しますが、俺もこの後すぐに帝都を離れます。



あなたの忠実な暗殺者兼執事オイレ



追伸 心配ぐらいさせてください。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る