二通目 12月10日

親愛なるオイレ



まずは無事に帝都に到着したとの知らせ、何よりです。ご苦労さま。


髪飾り、とても嬉しく思います。

皇女などと言っても、帝都から遠く離れたこの地で息をしているだけの、名ばかりの皇女ですから。他でもないあなたが贈ってくれるなら、どんなものでも喜ばしいです。

あなたがその手で私の髪に飾ってね。楽しみにしています。


帝都は賑わっているのですね。

お父さまが亡くなってから摂政となられたヒルシュ皇太后殿下、お義母さまの弛まぬ努力と類い稀なる手腕の結果なのでしょう。

皇族の一人として、大変喜ばしく思います。


ただ、来月には皇帝として即位するヴォルフが少し心配です。これまでも皇太子として尽くしてはいたのでしょうが、あの子はまだたった十三歳です。

辛いことも、ままならぬこともあるでしょう。

私が近くで支えてあげられたら良いのですが。いっそ、代わってあげたいぐらいです。


とはいえ、私は今の生活にも結構満足していましたよ。あなたも傍にいてくれますし。

二人だけの静かな生活も、そう捨てたものではありませんでした。


昨日、人形を一体拵えました。等身大オイレくん人形です。まるであなたが本当にいるような存在感。

たまには手芸も悪くありませんね。なかなか上手くいったと思います。

枕元に立たせてみたのですが、夜中に見てうっかり悲鳴を上げそうになりました。

枕カバーに藁を詰めて、そうそう、人形に着せるのにあなたのお仕着せをお借りしました。

ついでに、ほつれているところを見つけたので縫ってみました。上手くいきませんでしたので、戻ったら自分でどうにかしてください。

もう少し、刺繍とか真面目にやっておけば良かったと、ほんの少しだけ後悔しました。


キャンディアップルの件、帝都を楽しんでいるようでしたら何よりですが、後半の食し方についての詳細な説明は不要です。

丸ごと楽しむことができるというのは魅力的ですけど。

ともあれ、あまり無茶をせず、どうか無事で。


お土産は最初にお願いした通り、鹿肉の腸詰でお願いします。それ以外に欲しいものなど何一つありません。

必ず、私の元に持って戻ってください。


上手くいくことを願っています。



レーヴェ・フォン・ティーア

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