第4話 誰に刺されたか。かたくなに、明かそうとしないのだ。

、その結論に至った理由を!」

「落ち着け、本庄ほんじょう。……アタシまで、赤羽あかばねの仲間入りかい!? あの能天気と!?」


 今回の継子様に対する暴挙を。


 学園は放置する!?


 ありえない! 


 下手をしたら――死んでいたのに!


「説明するから。汚物に向ける様な視線をするな!?」

「……申し訳ありません。継子けいこ様が喜ぶ目付めつきをして」


 学園長に対して不敬ふけいですね。


 落ち着け、私。


「あいつは変態か!?……まあ、ゾクゾクしたのは確かだねえ。うふふふ」

「も、もう!? 裕子様まで!? 私が悪かったので!? せ、説明希望!」


 変な性癖せいへきに目覚められたら。


 厄介ですから!?


 こ、これでは、私に非があるみたいです!?


「やっと、強張こわばりが取れた。……その表情が一番似合ってるよ」


 まじまじと観察されるのは……嫌いです。


 ですが。


 数少ない理解者でもあるので。


 大目に見ましょう。


「さて、赤羽あかばねの件だが。大まかに説明すると……あいつしか証人が居ないのさ」

「被害を客観的に立証出来ない? と?」


 いまだに、継子けいこ様が襲われた事実は。


 一般の生徒達には。


 せられたままだ。


 あやふやな情報では。余計に混乱させてしまうからとの事。


「そうさ。『妹に刺された』と言っているが。可能性もあるだろ?」

「……はあ。だから、犯人の名前を明かせと言ったのに! ご丁寧に、証拠隠滅までして!」


 愛しい妹をかばって。事態を悪化させている。


 自身が負傷したのは。事実でしょうけど。


 か。


 かたくなに、明かそうとしないのだ。


「良くも悪くも。この学園の事を熟知じゅくちしている――元会長様だからねえ」

「妹の処遇に関しても。穏便おんびんに処理出来るなら……そちらが賢明ですか?」


 この響愛きょうあい学園は。


 それなりに、社会的地位が高い者の娘が。入学しているのだ。


 仮に、学園で問題が発生しただけで。


 株価やら名誉やら。


 もろもろ損害をこうむる親族も居るでしょうね。


 はっきり言って。


 私は――どうでも良い。


 継子けいこ様を傷付けた者は。


 豚箱ぶたばこにぶちまれながら。


 みずからの愚かさを。


 なげいてろ! ふん!


「だからと言って、隠蔽いんぺいするにも。ことことだからねえ。……今後、赤羽あかばね以外が狙われたら」

「それこそ、大炎上では? だからこそ――」


 これでは、堂々巡どうどうめぐりだ。


 証拠も証言も無いのに。


 事件として扱える方が。難しいだろう。


 今の所。


 継子けいこ様が。


 生徒会長を辞めた事によるストレス等で。


 自傷じしょう行為をした。


 しかも、妄想で。


 妹に刺されたと思い込んでいる。


 一連の流れとして。


 こちらの方が納得してしまうのでは?


 相変わらず、残念な人ですよ。


 はあ。


「学園としては、。……ため息しか出ませんね」

「まったくだ。こうなると、後々の保険として相談しないと。多額の寄付金、もやっている――」


 学園長よりも、影響力を持ち。


 資産家一族で。この学園も恩恵おんけいを受けている。


 ここ最近では『もっちり姫』として。


 世間で人気急上昇中の――


月夜野つきよの さつき様に?」

「その通りだよ」


 後々、事件が表面化したさいに。


『対応を検討中でした』では済まされない。


 アリバイとしても。警察に相談したと言う事実があれば。


 少しはマシですからね。ええ。


 それに、月夜野つきよの家の人脈で。


 この事態を適切に処理してくれるだろうか?


 期待と不安が支配しつつ。


 


 成り行きを見守るしか無かったのだ。

 


 



 


 


  


 


 






 


 



 

 

 


 


 

 




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る