第2話 実に、馬鹿げて。目眩を引き起こしそうだ。

 今日こんにちにおいて。


 メイドと言う職業は。


 主に喫茶店で。もえもえきゅん! をしている存在だ。


 もはや、架空かくう、空想的産物。


 、私――


 本庄ほんじょう 揚羽あげはも。


 メイドのコスプレをして。


 とある方の。付き人をしてる。


 それだけだ。


 正式のメイド作法も知らない。


 所詮しょせん、簡単な世話係。


 赤羽あかばね 継子けいこ様。


 貴方の変態趣味で。


 こんな服装で。


 学園内を。


 貴方の部屋を目指し。


 奔走ほんそうしている。


 実に、馬鹿げて。


 目眩めまいを引き起こしそうだ。


 

 


『やあ! 僕だよ! ウケる! ! 内密、隠密で医療班を! 僕の部屋に! ああ! 愛してる! 揚羽あげは!』

『また、いつものアホですか。……残念な人』


 数分前。


 私のスマホに。明るく陽気ようきな声で。


 能天気な冗談を聞かされた。


 辟易へきえきする。


 これでも学園で人気者なのだ。……この学園がイカれてる証明なら。


 納得だ。


 それでも。


 好ましいと。感じてしまう私は。


 あまのじゃくだろうか?


 ともあれ。   


 そろそろ、ネタバレをする頃合ころあい。


『私をからかって。楽しそうですね。痴情ちじょうのもつれが死因ですか? 継子けいこ様』

「おまwww でも、そんな南極大陸みたいな態度も。素敵――」


 切ってやった。


 切断してやった。通話途中で。


 電波の無駄使いは。他の利用者に迷惑ですからね。


 日用雑貨にちようざっかを仕入れに。


 学園内のショッピングモールに立ち寄ると。


 いつも、定例報告みたいに。


 飽きないご主人様ですこと。ええ。


 口元が緩んでいる私を。


 目撃出来るチャンスなのに。やはり、残念な――


 刹那せつな


 心臓の鼓動こどうが激しくなる。


 


 どんなに、ふざけたとしても。


 無闇むやみに年下の妹を。


 傷付ける発言をしない人だ。その位の分別ふんべつは持ち合わせている。


「もしもし! 学園危機管理課ですか! 至急、赤羽あかばね 継子けいこ様の部屋に救護班を!」


 気がついたら。


 緊急連絡先に。震えながら。


 私は電話していたのだ。


 


 


 






 

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