ニート呪詛使いと花園の結界

眩惑（げんわく）の乙女 プロローグ

第1話 この学園に犯罪者は。存在しないのさ。

　僕でも人並みに。

　取り乱す事は多々ある。

　例えば、寝坊して。

　愛しいメイドさんに。説教をされる時とか。

　学園の麗人（れいじん）と称されているけど。

　端的（たんてき）に言えば。

　アイドルとファンの解離（かいり）かな？

　イメージと。本当の姿が違う。

「単刀直入（たんとうちょくにゅう）する……妹には見えなかったけどな」

　精一杯の。ポジティブな発言をする。

　いや、ダジャレか。

　これでも、学園生徒会――元会長なのだから。

　短刀で。

　わき腹を刺されても。

　学園に在籍（ざいせき）している。年下は。

　皆、家族で。

　大切な妹達なのだから。　

　この事件は発生していない。

　詰（つ）まる所（ところ）――この学園に犯罪者は。

　存在しないのさ。

　どうだ！　決まった！

　僕は、やはり格好――

　劇団の男役の気分に……浸（ひた）っている場合じゃないな！？

　そ、そろそろ救護が来るかな！？

　連絡済みとは言え。

　痛いのは、誰だって苦痛だろ！？　やせ我慢だから！

　キャモン！　メイドさん！　

　冥土（めいど）へのご案内だけは！？

　いつもの冗談と思われてるのか！？

　それにしても。

　あの妹は――無事に逃げられたかな？

『乙女だから。刺しました』

　理由としては。

　漠然（ばくぜん）としているけど。

　僕は。

　君が思っている程。

　乙女でも無いのだ。

　ほら。

　やっぱり、認識がずれている。

　彼女は何か問題を抱（かか）えて。

　眩惑（げんわく）か。

　幻惑（げんわく）したに違いないのだ。

　そうさ。

　きっと。

　だから、罪に問うのは。

　酷（こく）なのだ。

　無用なのだ。

　それと。

　予想外――想定外の場面に遭遇（そうぐう）すると。

　頭の中が。ごちゃごちゃしてしまうな。

　そ、走馬灯（そうまとう）だろうか！？　この現象は！？

　だからさ！？　自分のメンタルを崖っぷちに追い込むなよ！？

　僕は、いつだってプラス思考で――気高（けだか）い。

　お、遅いって！？　放置してる！？　揚羽（あげは）さん！？

　それはそれで。メイドさんにお仕置きが。

　く、くだらねー事、考えてる暇！？　

　僕は、こんな時に。

　自分がアホだと。

　ようやく自覚出来たらしい。

　でも、そんな自分も。

　大好きさ！　もちろん！