教習番号①速度生限~流れに乗ろう~



 車に乗ることは便利な反面、危険がいっぱいだ。


 例えば、速度。車は人間よりも早いスピードで動く。ただ、これを操作しているのは人間だ。エンジンで動く車がこの世に生を成したのは19世紀だ。たったの数百年。その間に車というものは進化を遂げてきた。しかし、人類はこの数百年で何か変わっただろうか? 一部の帝国が世界を分割し、いがみ合い、同じ仲間を大量に殺し合った。人類は愚かなままだ。つまりいまだに戦争なんかやってる人間なんぞ、車のスピードについていけるほど進化していないのだ。


 ああ、暗い話をしてしまったね。昔はいつも怒られていたもんだよ。言いたいのは車を乗りこなせると思うなよってことだ。車など一瞬で灰色の道を行く弾丸と化すからね。


 あそこを見てみろ。中央にオレンジの線が書かれた、片側一車線。丸い標識があるな。あそこに40と書かれてあるだろう? つまりこの道路は時速40kmを越えてはならないんだ。では今度は対向車を見てみよう。ビュンビュン走ってる。おかしいと思わないか。

 

 さっき過ぎていた車、あれは完全に出してたな。軽く20kmくらいは余分に出してた。次の車も、その次の車もだ。つまりはこういうことだ。


 あの標識は嘘! 我々を欺くための罠だったんだ! 一台だけ遅ければ目立ってしまう。まずいぞ、加速だ。交通の流れに乗るってやつだな。これで目くらましになったはず。あ、でも加速しすぎるなよ。普通にポリスに捕まるぞ。全く役立たずのくせに。チマチマどうでもいい奴らを……。


 あ、ごめんごめん。しばらく直進で。ここはしばらく田園風景だからな。景色いいだろ。

 






 

  

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