にほん下ネタむかしばなし ~うらすじたろう~

@dekai3

うらすじたろう

 むかしむかし、ある秘所に、うらすじたろうという、村のはみだしぼろんしたものがいました。


 うらすじは村のはずれのざっきょビルのいっしつにすんで居て、どや街にぶらりとくり出しては街行く人をながめながらうらすじをなでてえつにひたって暮らしていました。

 うらすじに家族はおらず、ずっと一人でくらしています。




 ある日、うらすじがどや街にくり出すと、道ばたに人だかりができていました。


ドヤドヤ ドヤドヤ


 うらすじはなんだろうかと思いながら人だかりに近寄り、聞き耳をたてます。


「ワレェ! 何考えとっとるぁ!」

「簀巻っぞ沈めっぞおぉん!!?」

「おまんみたぁなたんちんはどんせのーなってもだぁーれもこまらせん!!」


 スジモンです。

 野生のスジモンの三人がなにものかを囲んでひぼうちゅうしょうをしています。


「や、やめ、やめてください! でももっとののしって!!」


 どうやら、ひぼうちゅうしょうされているのは全裸の男性です。

 ひぼうちゅうしょうされながらも御立派様をびんびんにして、亀の首も天をむいてそり返っています。

 なかなかのつわものですね。


「おうおう、そいつぁカタギじゃねえのか? よってたかってどうしたよぅ」


 見事な亀の首の男性を見たうらすじは、思わず男性をたすけるためのスジモン達に声をかけました。


「なんだぁ、てめぇ」

「おらんらスジモンやぞ」


 声をかけられたスジモン達は亀の男性から目をはなし、うらすじに顔をむけます。


「「「!!??」」」


 すると、三人のスジモン達はうらすじの顔を見て驚きました。


「「「ウ、ウラスジモン!!」」」


 そうです。うらすじはウラスジモンなのです。

 スジモンの生たいはよく分かっていませんが、スジモンはウラスジモンを恐れているのです。


「何か事情があるんだろうがぁ、今日は俺の顔に免じて離してやりな」

「「「へぇ!!」」」


 うらすじのひと言で、野生のスジモン達はれいぎ正しくおじぎをして帰っていきました。そして、ドヤドヤしていた人達もどこかえとちらばっていきました。

 あとに残されたのは立派な亀の首の男性と、うらすじだけです。


「た、たすかりました。ものたりなかったけどありがとうございます!」


 亀首の男性は、それはもうみごとに亀首をぶんぶんとふるわせながら、うらすじに感謝しています。


「しかしおめぇさんどこのもんだ? このあたりのもんじゃねえだろぅ?」


 うらすじは亀首にたずねます。

 うらすじは毎日ドヤ街にでむいているのでこの辺りにすんでいる人の顔はすべて覚えているのです。そんなうらすじが見た事がないという事は、よそからきた人なのかもしれません。


「はい、わたしは店舗型泡マッサージ洗体の竜宮城の従業員です」

「竜宮城? 聞いた事がねぇなぁ」

「ええ、西の方ではまだ無名なんです。全国チェーンに先駆けてまずはこの辺りから始めようと思いまして」


 なんと、亀首はとかいからやってきた体を洗ってくれるお店の従業員でした。


「なるほど、だからさっきの奴らに絡まれてたってぇのか。服まで脱がされちまって」

「いえ、裸なのは私の趣味です」

「お、おぅ、そうか…」


 よそから商売をしにきたものにわからせるのはスジモンの生態のひとつでもあり、ドヤ街ではだいじな事です。

 うらすじはスジモン達を帰してしまったのをはやまったかと後悔しかけましたが、もうやってしまったことは取り返しがつきません。

 しかたないので、ここはウラスジモンなりにスジを通そうとまえむきに考える事にします。


「よし、ここでおめぇさんを助けたのも何かの縁だ。竜宮城を利用してみてもいいか?」

「ええ、本当ですか!? これは都合が良い。いい子付けますね!」


 亀はそう言うと全裸のままうらすじの手を取り、ドヤ街の奥へとうらすじたろうをいざないました。










「ここが竜宮城です」

「まさかこんな場所にこんな物があったなんてなぁ」


 うらすじは亀につれられて竜宮城へやってきました。

 竜宮城はドヤ街の奥ふかく、廃ホテルのあと地にありました。

 その見た目はドはでなネオンでいろどられていて、まるで異世界のようです。


「ささ、どうぞ。いい子がそろってますよ」


 亀はいったん「助けてもらった説明をしてきます」と言って先に竜宮城に入り、ボーイの服にきがえてからでてきました。

 そしておうねんのボーイのようにうらすじを竜宮城の中へとあんないします。


ウィーン ピンポンパンポンプンポーン プンポンパンポンピンポーン


「いちめいさまごあんな~い」

「「「いらっしゃいませ~」」」


 自動ドアをくぐるとコンビニエンスストアのようなチャイムがなり、中でたくさんの女性達がひらひらした着物みたいな衣装を身に付けて三つ指ついておじぎしていました。


「ささ、中へ中へ」

「お、おぅ」


 うらすじはドヤ街にふさわしくなごうかな竜宮城の内装とサービスにおどろいて止まっていたのですが、亀に後ろから押されて中へと入りました。

 無理もありません。外見からは中華風のたてものに見えたのですが、中はホテルをりゅうようしているからか左右に別れた階段のあるごうかなホールとなっていて、天井にはシャンデリアまであります。

 うらすじは軽い気持ちでりようすると言ってしまいましたが、てもちのお金が足りるかどうか心配になってきました。


ジャーンジャーンジャーン


 うらすじがカードのりようげんどがくがまだあるかどうか思いだそうとしていると、とつぜん奥のへやからドラの音が鳴りました。

 そして、階段の上のバルコニーにピンク色のミニスカゴス浴衣(下は白スパッツが裾からはみ出ている)を着た女性があらわれました。


「あっれー、私の下僕の亀を助けてくれたのがこぉ~んなナイスミドルなオジ様だなんて聞いてないんですけどぉ~」


 オトヒメスガキです。

 竜宮城のナンバーワンキャストのオトヒメスガキです。


タッタッタ


 オトヒメスガキはわざとらしさたっぷりなあぶなっかしい足取りで階段をおりると、そのままうらすじの腕をつかみます。


「ほぉらぁ~、こんなところでつったってないで私の部屋に行きましょ~。たぁ~っぷりお礼させてもらうわぁ~」


 そしてつかんだ腕にからだをからませると、そのままうらすじに階段を上る様にうながしました。

 オトヒメスガキは左手と胸からお腹にかけてでうらすじの腕をロックし、右手はさりげなくうらすじのふとももにまわしています。かなりのやり手です。このしゅわんで竜宮城のナンバーワンになったのでしょう。


「そ、そうか、俺はナイスミドルか?」

「もぉ~、私を疑うのぉ~お? めちゃくちゃカッコよすぎなのにぃ~」


 にやけがとまらない顔で自分のようしを問ううらすじに、オトヒメスガキは腕をだきしめたまま体をくねらせながら答えます。流石ですね。


「そうかぁ~、そいつぁうれしいな~」

「えへへ~、オジ様がうれしいと私もうれしくなっちゃう~」


 完全に手玉に取られたうらすじはうながされるままに階段をのぼり、オトヒメスガキがやってきた奥の部屋へと足を進めます。


「今日はお礼なんだからたぁ~っぷりサービスしますね、オ・ジ・さ・ま」

「本当か? じゃあ色々してもらおうかな」

「あはっ、オジ様のえっちぃ~」


 ウラスジとオトヒメスガキはこれから行うワンナイトについて会話を弾ませながら部屋へと入りました。


バタン カチリ


 見た目も豪華で作りも豪華なオトヒメスガキの部屋の扉は閉められ、中からカギがかけらます。

 中ではきっとパイをひらめいた舞い踊りが行われるのでしょう。










~~~ 8時間後 ~~~


ガチャ バタン


「いやぁ~、凄く良かったなぁオトヒメスガキちゃん」

「ほんとお~うれしぃ~。オジ様もすごかったぁ」


 そうぜつなたたかいを終えてウラスジとオトヒメスガキは部屋から出てきました。

 二人はとても満足そうでスッキリとした顔をしています。


タッタッタ


 二人は腕を組んだまま階段をおり、待合室をかねている階段下のロビーへと行きます。

 そこでは亀がニコニコの笑顔で待っていて、ウラスジが降りてきたのを確認するとふところから何かの紙をとりだしました。


「うらすじさん。あんたが楽しんでる間に、この辺りのスジモンの頭は押さえさせて貰ったよ。これがその証拠の血判状だ」


 その紙にはドヤ街を仕切るスジモン達のボスの名前と拇印が押してあり、文面には『オトヒメスガキを新しい頭とし、ドヤ街は竜宮城が支配する』と書かれています。


「な、なんだそれは!?」


 これにはうらすじもびっくりです。

 思わず声を荒げて亀に掴みかかろうとしましたが、オトヒメスガキに捕まれた腕を振り払えず、動くことが出来ません。


「ここらのシマを手に入れるにはウラスジモンのあんたが邪魔だったんだ。だからちょっとばかし街の様子が分からないここに閉じ込めさせてもらった」

「なんだとぉ! じゃあこの女も!!」

「『女も』じゃあないわよオジ様。私がボスなの。あっははぁ、こんな小娘に手玉に取られてどんな気持ちぃ?ねぇどんな気持ちぃ??」


 急に悪い目つきになったオトヒメスガキの腕をようやく振り払い、ウラスジは亀に掴みかかろうとします。


ババッ


「ワレェ! 何考えとっとるぁ!!」

「簀巻っぞ沈めっぞおぉん!!??」

「おまんみたぁなたんちんはどんせのーなってもだぁーれもこまらせん!!」


 スジモン達です。

 待合室のソファーに座っていたスジモン達がウラスジを拘束しました。


「お、おまえらぁ!! 俺をうらすじと知ってやっとるんかぁ!!?」

「うるさぁわおっさん!! おまんはもううちのシマのもんじゃなきに!!」


 叫ぶうらすじを拘束したまま、スジモン達はじりじりと竜宮城の出入り口へと向かいます。

 このドヤ街を新しく収めるのはオトヒメスガキです。

 うらすじは古いウラスジモンなので、新しいスジモン達には関係無いのです。


「あっ、そうだぁオジ様。忘れ物よぉ」


 外へ連れだそうとされているうらすじに、オトヒメスガキは亀から渡された封筒を持って近付きます。


「こぉ~れ、外に出てからちゃんと確認してね。絶対に見ないとダメだからねぇ」


 オトヒメスガキは無造作にうらすじの胸元へと封筒をつっこみ、もう用はないとばかりにきびすを返して自分の部屋へと戻っていきました。


「おまぁ!! こんガキぃ!! 許さんぞぉ!!!」


 うらすじはスジモン達に連れ出されながらもオトヒメスガキに向けて叫び声を上げ続けていました。











ドンッ


「おう、ころすないわれとんけぇの! これぐらいで勘弁したらぁ!!」


 うらすじがすむ雑居ビルの駐車場にて、うらすじはようやくスジモン達から解放されました。


「くそ、くそぉ!」


 顔や体をなぐられたうらすじはあくたいをつきながら自分の部屋へと向かい、ドアにカギを差し込みます。


ガチャガチャ ガチャガチャ


 しかし、そのカギはあきません。

 それどころか、ネームプレートを見るとうらすじの名前がぬりつぶされており、「お前のいばしょはない」とらくがきがされていました。


「ちくしょう、そういうことかよ…」


 うらすじは「居場所をすべてうばわれたんだ」というのを理解しました。

 最初に亀がひぼうちゅうしょうされている時、亀の体のどこにもスミが入っていなかったのでカタギだと思ったのですが、あの時からすべて計算されていたのでしょう。

 オトヒメスガキはかなりのさくしでした。これがとかいのスジモン達のやり方なのです。


「そういえば、あのガキの封筒!!」


 うらすじは最期にオトヒメスガキから絶対に見るように言われた封筒の事を思い出し、懐をまさぐって封筒を取り出します。

 そこには「うらすじ様へ、竜宮城より」と書かれています。


ビリビリィ


 うらすじはすぐさま封筒をやぶり、中を確認しました。


「う、うわぁ!!」


 そこに書かれていた文面は


「入 会 金 30.000円

 初回指名料 50.000円

 会員登録料 50.000円

 90分コース 100.000円

 延長料金(30分につき30.000円) 390.000円

 プレミアムオプション 200.000円

 禁止行為罰金 500.000円


 合計 1.320.000円」










~ しばらく後 ~


「おい、じいさん、ゴミを漁るんじゃねえよ! あっちいけ!!」

「へ、へぃ…」


 うらすじは竜宮城の一件いらい急に老け込み、まるで老人の様な外見になってしまいました。

 そしてウラスジモンではなくなったのにもかかわらずドヤ街から出る事をえらべず、周囲からあたまのおかしくなった人あつかいされてばんねんを過ごしたそうです。


 みなさんも夜のお店にはきをつけましょう。

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