冬の希雪(きせつ)

芥川 みず。

朽ちた星。

この季節になると『雪』が降る。


それは、音もなく一面に降り注ぎ


もれなく全ての生物を『幸せ』にするのだと。



遥か昔、その街に初めて雪が降った時のこと。


さまざまな学者が「なんだあれは」と


未知の物質にあたふたとして


街の大人は「危険だ」と


窓を隔てて、子どもたちを叱った。


そんなある日、


ある青年が何処からかやってきて、こう言ったのだ。


「雪の正体は『朽ちた星』なんだ」と。


煌々と輝いた夜空の星は


瞬けなくなると冷たくなって、色を失う。


すると、夜空はひどく怒って


その冷たくなった星たちを捨ててしまうのだ。


「こんなのいらない」と。


そして捨てられた星たちは、自分で浮かんでいられずに


重力に乗って、この惑星に降り落ちる。



もしかしたら冬が寒いのは


そんな星たちの哀しい体温が


僕たちに伝わっているからなのかもしれない。

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