第25話 西宮 豪⑤

 香帆と表向きな復縁……俺は栄子を取り戻し、真人に復讐する準備ができた。

俺は香帆を使って栄子に俺達の行為中の動画を送り続けた。

真人みたいな童貞もどきに栄子を満足させれる訳がねぇ!

動画を使って揺さぶれば、俺の元にくるはずだ!

どんなに理性を保とうとしても、人間は所詮欲望には勝てない。

時間はかなり過ぎ去ったが……ある日、栄子から俺に会いたいとラインが届いた。

俺はすぐに栄子を香帆のアパートに呼び出した。


「久しぶりだな、栄子」


「……」


「俺とヤりにきたんだろ? さっさとヤろうぜ?」


「……避妊はして」


「薬を用意してある。俺がゴムを着けるのが嫌いなの知ってるだろ?」


 俺は錠剤ケースの中から薬を1錠取り出し、栄子に手渡す。

栄子が薬を飲んだ瞬間、俺は彼女の服を後ろから優しく脱がせてやった。

栄子の顔はひきつっていたが、抵抗はしなかった。

下着も脱がせ、生まれたままの姿になった彼女の前で俺も身に付けているものを全て取り払う。

香帆も俺に続いて一糸纏わなぬ姿に変わる。


「それじゃあ3人で楽しむか!」


 俺たちはその後、時間を忘れてた快楽にのめり込んだ。

よっぽど真人の野郎に満足してなかったのか、栄子は狂ったように俺を求めてきた。

まるで以前の関係に戻ったみたいだ。


 だが……俺は1つだけ栄子に嘘をついた。

実は栄子とヤる前に渡した薬は避妊薬じゃなく……ただの胃薬。

錠剤なんてどれも同じだから見分けることができなくて当然だ。

俺がなんでそんなことをしたかって?

真人への復讐に決まってんだろ?

単に栄子を取り戻すだけじゃ、俺の怒りは収まらない。

奴にもう一度、俺のガキを育てさせ……頃合いを見計らってそのことをバラす。

俺にまた托卵された上、栄子まで奪い返されたと知れば……あいつの心は完全に終わる。

俺の大切な栄子を奪った報いだ!

ハハハ!! 寝取りクソ野郎ざまぁ!!


------------------------------


 栄子に俺の種を仕込み始めてから数ヶ月後……栄子はガキを1人生んだ。

俺のガキであるかは五分五分だが、このまま栄子とヤり続けていけばいずれ俺の子供を身ごもる時がくるはずだ。

香帆も俺の手元に戻ったんだ、まだまだ俺の復讐は終わらねえよ。

せいぜい苦しめ、真人。


-------------------------


ピンポーン!


 栄子の出産から何日か過ぎたある日の朝……アパートのインターホンが鳴り響いた。


「誰よこんな朝っぱらから……」


「ほっとけよ……どうせくだらねぇセールスかなんかだろ?」


 昨夜は香帆の帰りが遅かったせいで下半身にたまったモノが放出できず、俺は朝から機嫌が悪い。

これから香帆で発散させようと思っていたのに、間の悪い野郎だぜ。


ピンポーン……ピンポーン……。


「あたしちょっと出てくるわ」


 居留守を使って追い払おうとしたが、インターホンは鳴りやまない。

仕方なく香帆が応対しようと玄関に出る。

こっちはもう爆発寸前だってのにしつけぇ野郎だ……。


ドサッ……。


「……なんだ?」


 いきなり玄関で何かが倒れる音がした。

何事かと思って俺も玄関に足を運ぶ。


「おい香帆、何をして……!! なっなんだよ!お前ら!!」


 玄関で俺の目に飛び込んできたのは、覆面を被った3人の男達。

そいつらの足元にはなぜか香帆が転がっている。

まさか死んでんのか!?


「ひっひぃぃぃ!!」


 本能的にヤバいと思った俺は玄関に背を向けて窓に駆け出した。

ここは2階だ……安全とは言い難いが、飛び降りて外に出ることはできるはずだ。

香帆はどうするんだって?

知るかよっ!!

今は俺の身の安全が最優先だ!

所詮あいつは復讐のためによりを戻しただけの道具だ……栄子を取り戻した今となってはあいつの価値は体と金だけだ。

そんなのがあいつらに何をされようが俺には一切関係ない!

俺は真人のゲス野郎に復讐を果たして、栄子ともう一度人生をやり直すんだ!!


「フゴゴゴ!!」


 窓に足を掛けようとした一瞬の間に、覆面野郎の誰かが俺の口元に少し湿った布を押し付けやがった。


「……」


 嗅いだことのない奇妙な臭いが鼻に入ってきたかと思ったら……突然視界がゆらぎ、全身の力が一気に抜けて行った。

これ……なんだ?

一体何が起きたんだよ……。

俺の意識は遠のいて行った……訳も分からず……。


-----------------------------------------


「……うっ!!」


 目が覚めたばかりの俺の視界はモザイクを掛けたようにぐにゃぐにゃしていた。

頭もまだくらくらする……俺は……どうなっちまったんだ?


「目が覚めたか?」


 徐々に思考と視界が正常になってきた俺の前に立っていたのは……。


「智樹?」


「久しぶりだな……豪」


 例の暴露記事の一件で疎遠になっていた親友の智樹だった。

こいつ確か……何かやらかして刑務所にぶち込まれたって聞いたが……。


「智樹……なんでテメェが……いやそれより、ここはどこだ!?」


 薄暗くて周りは良く見えないが……パッと見て汚らしい倉庫みたいだ……。

埃がひどくてむせ返りそうだぜ。


「ここか? ここは地獄だよ」


「はぁ? 何を訳わかんねぇこと言ってやがる! あの覆面野郎はテメェの差し金か!!」


「だったらなんだよ?」


「ふざけんなっ!!……!!」


 智樹の野郎をぶちのめそうとした時に初めて気付いた……俺は両手を手錠で拘束されてつるし上げられていた……。

足はギリ地面に着くが、逃げることはできねぇ……しかもなぜか俺の下半身は裸だった。


「智樹テメェ……マジで俺に何をする気だよ!」


「何をって決まってんだろ? 復讐だよ」


「復讐だぁ?」


「俺は何もかも失った……地位も金もメイも……それも全て、お前が托卵ゲームなんてくだらねぇことを言い出したせいだ!

お前があんなゲームをやろうなんて言い出したせいで……お前のせいで俺の人生はめちゃくちゃだ!!」


「はぁ!? 寝言ほざいてんじゃねぇよ!! きっかけになったのはお前の托卵だろうが!!

ゲームだってノリノリで楽しんでたくせに責任転嫁してんじゃねぇよ!! カス!!」


 だいたいゲームの主催者は智樹なのに、何ほざいてやがる!!

托卵させていた旦那のことを”ざまぁ乙!!”とか言って笑ってたし……ガチの逆恨みじゃねぇか!!


「うるせぇ!!このクズ野郎!! 托卵がバレたのだって、お前がドジりやがったのが悪いんだろうが!!」


 ふざけんなっ!!

托卵がバレたのは真人の野郎が悪いんだろうが!!

あいつが暴露記事なんてゲスな手段で俺を地獄に堕としたんだ!!


「言っとくが……テメェに恨みを抱いているのは俺だけじゃねぇ……」


「!!!」


 ようやく暗闇に慣れてきた俺の目が智樹以外の人間を認識しだした。


『……』


 智樹と一緒に托卵ゲームを楽しんでいた連中だった。

どいつもこいつも俺をブチ殺してぇって目で訴えてやがる。


「俺と一緒に復讐しねぇか?ってネットで軽く集ったら、磁石みたいに飛びついてきたんだぜ?

みんなお前が苦しむ姿をたっぷり見たいだってよ……人気者はつらいよな~」


「ふっふざけんなっ!! 俺が何をしたっていうんだよ!?」


「何をしただと?……お前がドジったせいで……俺は全てを失ったんだ!!

金も地位も……今まで築いてきた人間関係も……それなのに毎日毎日……ネットで”クズ”だの”死ね”だの罵られるし、家にも嫌がらせの電話や手紙がしょっちゅう来るようになったんだ……どうしてくれる!?」


「はぁ!? そんなの知るかよ!!」


「関係のない親も被害を受けたんだ!……その挙句に2人共自殺しちまった……お前が殺したんだ!!」


「それこそ知るかよ!! 全部お前らの自業自得じゃねぇか!! 脳みそ腐ってんのか!?」


 このうるさいデブとスキンヘッドは高校時代の同級生だ。

ゲームに誘った時、面白そうだとか暇つぶしになりそうとか言って、2つ返事で乗ったのは

こいつらだ。

だいたいネットで叩かれているデブは、気に入らねぇ奴をネットで叩いて精神をズタボロにするのが趣味な鬼畜野郎だし……親が自殺したとかほざいているスキンヘッドは高校時代にバイクでクラスメイトの親をひき殺したことがあるクソだ。

どっちも親のコネを使って上手く警察から逃げて来たくせに、それを棚に上げて逆ギレかよ……ふざけるのもたいがいにしろ!!


「さて……そろそろゲストを紹介するか。 連れてきてくれ」


 智樹が閉ざされたドアに向かってそう言うとドアが開き……台車を押す真人が姿を見せた。

真人が押す台車には裸で拘束されている栄子が乗せられている。

口には猿ぐつわを付けられていて話すことすらできないみたいだ。


「なっなんでテメェが……つーか、栄子に何してんだ!」


「さあ……何をしてるんだろうな」


「はぁ!? 俺の栄子にふざけたことしやがって……ブチ殺されてぇのかテメェ!?」


「そんな恰好ですごまれても、空しいだけじゃないか?」


 真人の分際で舐めたことを……両手さえ自由に使えたら、こんな野郎すぐにブチ殺せるってのに!!


「お前ら……栄子に何をする気だ!?」


「それマジで言ってるのか? 女を知らねぇ中坊だって、この状況を見たら察することができるぜ?」


 智樹のその言葉が俺の脳に最悪のイメージを植え付けた。

こいつらまさか……。


「お前らまさか……栄子を犯すつもりか!?」


「犯す? そんな物騒な言葉は使わないでくれないか?

俺達はゲームがしたいだけだ」


「ゲーム?」


「ルールは簡単……これから栄子に体で俺達を鬱憤を下げてもらう……お前のせいでこんなことになったんだから、それくらいいいよな?

まあガキを仕込むのはやめといてやる。

それで俺やみんなが満足すればお前の勝ち。

栄子がお前や真人を捨てて俺達の奴隷として生きると誓うか…お前が栄子を俺達に譲ると言えば、俺達の勝ちだ。

お前が勝てばお前も栄子も自由にしてやる……だが俺達が勝ったらお前は自由にしてやるが、栄子は俺達専用の奴隷としてもらうぜ?

あぁ……安心しろ。 ゲーム中はお前に危害を加えるようなことはしねぇって約束してやるよ」


 何がゲームだ……結局、栄子を犯す気じゃねぇか!!

だいたい俺が栄子をお前らに譲るなんて狂ったこと言う訳ねぇだろ?

危害を加えないとか言っているが信じられるか!

逆恨みするような連中だからな……まともな常識がないんだろうな。

そもそも栄子を呼び捨ててんじゃねぇよ!! このサイコ野郎が!!


「もちろんお前に拒否権はない……さっそくゲームを始めさせてもらう」


「やっやめろ!! このクズ共!! 汚ねぇ手で栄子に触るんじゃねぇ!!」


 俺の声を智樹達は無視し、栄子に汚ねぇブツを押し付けてやがる!!

真人は何もせずにただ傍観しているだけだ……なんでこいつは智樹に協力してんだよ!!

これから栄子が犯されるんだぞ?

黙って見ている気かよ!!


「いや……やめて……」


 猿ぐつわを外された栄子が必死に懇願するが、智樹達は無視して乱暴に栄子を床に押し付けやがった。

マジで冗談抜きで栄子を犯す気なのか?

そんなの許される訳がねぇ……認められる訳がねぇ!!


「いやっ! 助けて真人!!」


「……」


「真人! 助けて!!」


「……」


 栄子が真人に助けを求めるが、真人の野郎は冷たく無視しやがった!!

仮にも栄子の夫だろうが!!

マジで神経イカれてんのかよ!!

そうだ香帆!

香帆は何をしてるんだ!?


「おい香帆! どこにいる!?」


「香帆ならお前の後ろで男達を慰めているよ」


 拘束されて身動きできない俺に真人が俺の後ろをカメラ機能で映したスマホの画面を見せてきた。

そこには全裸で複数の汚らしい男共の慰み者にされている香帆の姿が映っていた。


「香帆! 早く俺と栄子を助けろ!!」


 香帆の目と一瞬合ったが、あいつの目は無理だと訴えていた。

男共に押さえつけられて身動きが取れないからだろうな……この役立たず!!


「いや……お願いやめて……やめてぇぇぇ!!」


 いつの間にか智樹達は下半身に身に着けた物を全て脱ぎ去り、栄子に迫っていた。

やめろ……やめろぉぉぉ!!


「ゲームスタートだ!」


 俺と栄子の祈りもむなしく……栄子は俺の目の前で男達に汚され始めた。


※※※


 それからどれだけの時間が経ったのかわからない……俺はなす術もなくただ黙って栄子が犯されるのを見ていることしかできなかった……何度か拘束から逃げようと頑張ってみたが、それも叶わなかった。


「おいおいなんだよこの女のおっぱい……小さすぎてつまんねぇ……これじゃあ男の胸板と大して変わらねぇじゃん」


「かといってケツの締まりが良い訳でもないし、男の扱いも下手過ぎる。 これなら自分で慰めていた方が100倍マシだ」


「よく見たら、顔も特別美人って訳でもないし……マジで豪の奴、これのどこに惹かれたんだ?

もしかして、マニアか?」


「アハハハ!! 違いねぇ!!」


「つーか、あの香帆って女……マジ良い女だよな?

俺もうあっちでヤるわ」


「おいずりぃぞ! 俺だけ貧乏くじ引かせる気か?」


 あいつらは俺の栄子を侮辱した挙句……次々と香帆に乗り換えて行った。

次第に栄子で性を発散させる男はいなくなり、全員香帆に集まって行った。

相手にされなくなった香帆は再度拘束され、あいつらの汚い種だけを体中に掛けられ続けた。

屈辱ではあることに変わりないが、栄子が汚されずに済むならこれでいい。

あいつらがこのまま香帆で満足してくれるなら万々歳だ。


「どっどうなってんだよ……」


 ところが……俺自身に問題が発生してしまった。

なぜだかわからないが、俺のブツがはちきれるほど膨張してしまっていた。

女とヤル時は常に膨張し続ける俺のブツ……だが今は拘束されていてなんらかの刺激を受けている訳じゃない。

一体……何が起きてんだよ!!


「おい見ろよ! こいつ自分の女を寝取られて興奮してやがるぜ!?」


 俺の異変に気付いた智樹が俺のブツを指さしやがった。


「マジかよ……ガチドМじゃねぇか!! 気持ち悪ぃ!!」


「よう豪ちゃん? なんなら俺のケツでも使うか? アハハハ!!」


「うっうるせぇ!! 耳障りな声を出すな!」


「あぁ!? テメェこそ目障りで汚ねぇブツをしまえよ! ドМ変態野郎が!!」


 違う違う違う!!

俺は女を寝取られて興奮するような変態野郎じゃねぇ!!

クソッ! クソッ!!

なのになんでブツが膨張するんだよ!!

こんな状況で気は確かかよ!?

まさか本当に栄子を寝取られて興奮してんのか?

静まれ……静まれよ!!

俺は……まともだ!!


※※※


 俺の膨張はどんどんヒートアップしていき、気付いたらすでに臨界点にまで到達していた。

もういつ暴発してもおかしくないくらいだ。

だが俺はこの時……初めて自分のブツに拘束具がつけられていることに気付いた。

こいつが膨張をギリギリまで押さえつけていて、爆発を塞ぐストッパーのようになっている。

そのせいで俺は性を発散させることができず……出口を失った俺の種はその場でとどまり続けている。

だが欲望は無尽蔵に湧き上がって行く……今までは快楽であったその欲望だったが、発散できない今では俺を不快にするだけの毒でしかない。

トイレを我慢する感覚に似ているが、これはそんな比じゃない!!

爆発寸前の性欲を何時間も我慢させられる……それはある意味死ぬよりつらい。

もうブツを引きちぎってくれた方がマシなくらいだ!!

俺は気を紛らわそうと体を揺らすが意味はない。

拘束具は外そうにも、両手が塞がっているからそれもできない。


※※※


 それからどれだけの時間が過ぎたのかわからない。

だがもうつらい……辛すぎる!!

意識が朦朧としてきて、何度か意識が飛んじまっていた。

もう栄子が犯されていることすらどうでも良い!

今はただ、たまりに溜まったこの欲望を思いっきりぶちまけたい!!

それが無理なら俺のブツを引き抜いてほしい!!


「た……頼む……これを外してくれ」


 俺はプライドを捨て、智樹に懇願し始めた。

もう俺にはプライドなんてどうでもいい!!


「それは無理だ。 ゲームが成り立たなくなる」


「たの……お願いします!! 助けてください!!」


「それじゃあ栄子を俺達に譲ると誓うか? 誓えば外してやる」


「それは……」


 栄子をこいつらに譲るなんて冗談じゃねぇ!……そうは思ってる。

だが今はもう、俺は俺の欲を満たすことしか考えれない。

他のことはもうどうでもいい!!


「誓う……誓います!!」


「何をだ?」


「栄子はお前らに譲る!!」


「俺達の奴隷にしちまってもいいのか?」


「あぁ!! 好きにしてくれていい!! だからこいつを外してくれぇぇぇ!!」


 涙と唾液で俺は顔をぐちゃぐちゃにし、駄々っ子みたいに懇願しちまった。


「アハハハ!! 聞いたか? こいつ自分が楽になりたいために自分の女をあっさりと俺達に譲ったぜ?」


「だっせぇ!! マジで自分のことしか頭にないんだな!!」


 もう周囲から何を言われてもいい!!

栄子がどうなってもいい!

この苦しみから逃れられるのなら!!


「わかったよ……お望み通り外してやる。

だがゲームはお前の負けだ。

栄子はもう俺達のものだからな?」


「あぁ!! それでいい!!

だから早くこいつを外してくれ!!」


 俺の願いは聞き入れられ、智樹が俺の両手の自由を奪う拘束具を外した。


「外してやったぜ?」


 両手が自由になった俺は真っ先にブツを縛り付けてる拘束具を外し、何時間も溜っていた性を解放することができた。


「ありゃぼりゃべたとのりもともあただあぁぁぁ!」


 ただただ気持ち良かった……もうここが天国にさえ思えた。

いっそこのまま死んでもいいとさえ思える幸福感が俺を包み込んだ。

もう何もかも今はどうでもいい……今はただ……この快楽に浸かっていたい……。


※※※


「……!!」


 性を出し切った俺は我に返り、現実をようやく目にすることができた。


『アハハハ!!』


 智樹や周囲の連中は腹を抱えて笑っていた。

しかもなぜか、栄子が俺に軽蔑の眼差しを向けてくる。


「やっぱりお前は最高だぜ! 豪!

まさかこんな極上のネタを俺達に提供してくれるなんてな?」


 智樹がそう言って俺の眼前に突きつけてきたのは奴のスマホだった。

画面に映し出された写真には、性を解放した直後の俺の姿が映っていた。

それは俺自身も信じられないほど、あまりにも不細工で惨めな顔だった。

目は白目を向き、口を馬鹿みたいに開いて舌を大きく出し、まるで脳を失った猿みたいだ。


「なっなんだよこれ……」


「何ってお前が俺達に提供してくれたネタだろ?

さっきネットにアップしたんだけど、超盛り上がってるぜ?」


 智樹のスマホにはネットに上げた俺の写真に関してのコメントがいくつも届いていた。


『こいつ昔、托卵騒動を起こした西岡じゃねぇか?』


『ぶっさ!! マジでこれ人間? キモッ!!』


『加工なし? ネタ通り越してもはや芸術じゃん!!』


『まさかこの世に俺以上の不細工がいるとは……』


『イケメンの変顔って結構好きだけど、これは生理的に受け付けないわ。 

夢に出てきそうで吐きそう……』


 なんだんだ?

なんなんだよこれ……。


「よかったな? 豪。 お前はこれからネットのみんなにおもちゃとして愛されてるぜ?」


「あっ……わぁぁぁぁ!!!」


 俺は思わず声を上げて智樹に殴り掛かろうとしたが……軽くあしらわれてしまった。

さっきので足に上手く力が入らない!! クソッ!!


「テメェ……恩を仇で返しやがって……ブチ殺すぞ!!」


「ひぃ!!」


 智樹がポケットから取り出したキラリと光るナイフが目に入った瞬間、俺は足にムチを打ってその場から逃げ出した。

あいつの目、マジで俺を殺そうとしていた。

全てを失ったあいつなら、やりかねない!!

栄子のこと?

そんなの後だ!!

今は俺の安全だけが第一だ!!

幸運にも窓の鍵は内側から簡単に開けられるようになっていて、そこをくぐると歩道に出ることができた。


「まちやがれ!!」


 智樹達が俺を追いかけてくる!!

捕まってたまるか!!

俺は逃げようと道路を横切った……次の瞬間!!


キキーン!!


 車のクラクションの音が耳に入った瞬間、俺の体に一瞬激痛が走った。

まさか……車に引かれたのか? 俺。

こんなところで死ぬのか?


……。


-----------------------------------------


「……!!!」


 目を覚ますと……俺は見知らぬ白い天井を眺めていた。

今度はどこだよ……また何かされるのかよ……。


「目が覚めたようだな……」


 俺が横たわるベッドの横に立っていたのは真人だった。

生気のない目で俺を見降ろす真人だった。

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