第3話 佐山 香帆③

 琴美の婚約発表から数週間後の夕方、あたしは久しぶりに実家へと足を運んだ。

正直、もう一生この家の敷居をまたぐことはないって思っていたけどね。

この日、琴美の婚約者である釘崎真人(くぎさき まさと)が実家に赴いてあのクズ両親にあいさつをすることになっている。

本当なら高級レストラン等、きちんとした所で顔を合わせたいみたいだけど、婚約発表後にうろつく記者がうっとおしいみたいだから断念したみたい。

どうして芸能人っていうのは、いちいちこんなプライベートなことをネットに書くのかしらね?

まあそのおかげであたしは、あいつらが集まっている場に居合わせることができるんだけど。


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「……何しに来たの?」


「姉の婚約を祝福しに来た妹に随分な言い様ね」


 家に入って最初に目が合ったのは琴美とその婚約者である真人だった。

あたしを見た瞬間、花のような笑顔からあたしがよく知る醜い顔へと変貌する。


「ここはあんたみたいなドブネズミが来る場所じゃないのよ。

まして、親孝行もせず勝手に家を出た女を妹に持った覚えはないわ。

さっさと消えなさい。 さもないと警察を呼ぶわよ?」


 当然琴美はあたしを追い出そうとする。

あたしだってこんな胸クソ悪い家、すぐにでも出て行きたいくらいよ。

でも豪のために、あたしは耐えた。


「まあまあ琴美。 わざわざ来てくれたんだし、何も追い出さなくても……」


「でも真人さん。 こいつが今まで何をしてきたのか、話したことがあるでしょ?」


「それはわかってるよ。 でも血を分けた妹に変わりはないだろ? 今日は琴美の家族との顔合わせなんだし、今日くらいいいじゃないか」


「……」


 真人の意外な説得で、琴美はしぶしぶあたしが家にいることを了承した。

リビングにいたクズ両親も、最初は琴美と同じ反応を示していたけど、真人がなだめたおかげで大人しくなった。

真人がいるから、あたしをゾンザイに扱うことはできないと思っていたけど、真人のこの行動は意外だった。


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 クズ母の作ったクソまずい夕食を食べ終えたあたしは、琴美の部屋であるものを探していた。

この間、琴美は入浴中で母は食器洗い、父は野球中継を見ているので見つかる可能性は低い。

真人に関しては、婚約者とはいえ、本人のいない自室に入ることはまずないと思う。


「……あった」


 あたしは机の引き出しにあった目当ての物をつかみ取った。

それは琴美の錠剤ケース。

これは家族しかしらないことなんだけど、琴美は子役時代にうつ病を発症したことがある。

子役としての精神的疲労と両親からの強いプレッシャーが原因だと言われている。

琴美はその事実を決して表には出さず、精神科に通院し、処方してもらっている薬を服用してどうにか女優を続けている。

その薬というのが今あたしが持っているこの錠剤の中身。

琴美は入浴後にこの薬を必ず飲んでいる。


「さてと……」


 あたしはポケットに忍ばせていた錠剤の入った小瓶を取り出した。

小瓶の錠剤とケースの錠剤を1つ入れ替えた後、ケースを元の場所に戻した。

あたしが入れたのは媚薬。

いつも男を寝取る際に使っているもので、効果が出てくるのもかなり早い。

普段から服用している薬とはいえ、錠剤の違いを見分けるなんてまず不可能。

まして3つある錠剤の内の1つしか変わっていないんだからバレる可能性は皆無。

つまり、ほかの薬と一緒に媚薬を飲む可能性がかなり高いってことね。


「これでいいわね……」


 混ぜ入れた媚薬は男慣れしているあたしでもきついくらいの代物。

クズのくせに性行為は結婚してからとかほざいている琴美なら性の衝動を耐えることなんてできるわけがない。

そして、衝動を静める方法は2つ。

1つは自分で済ませること。

でもあまり広くないこの家で1人になれる場所は風呂場と自室くらい。

真人がいる今、自室ですれば鉢合わせする可能性がある。

いくらゴミのような女でも、それは不本意だろうね。

となれば、もう風呂場しか残っていない。

そこならだれかと鉢合わせすることもないし、終わった後の処理も楽。

もう1つは真人をはけ口にすること。

婚約者である真人なら、行為に対する抵抗感も少ない。

あたしが琴美の立場なら、真人を選ぶわね。

でも貞操観念が固いあの女が、初夜をこんな雑な形で過ごすというのも考えにくい。

まあ可能性はあるけどね。


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 風呂から上がった琴美が自室に戻ってから10分くらい経った。

そろそろ媚薬の効果が出てきたと思っていたら、案の定琴美が部屋から出てきた。


「……」


 顔から滝みたいに汗を掻いて顔もかなり赤くなっている。

息も荒々しく、もぞもぞと内股を右手でさすっている様子から、媚薬を飲んだみたいね。


「あれ? どうかしたの?お姉ちゃん」


「なっあんた!」


 あたしはわざとらしく声を掛けた。

いつもなら憎たらしそうな顔であたしを睨んでくるのに、今はまともに目を合わせることもできていない。


「どうかしたの? 随分苦しそうだけど、体調悪いの?」


「うっうるさい……あんたには関係ない……」


 琴美はそう言って、風呂場の方へとおぼつかない足で歩いて行った。

やっぱり自分で処理する道を選んだみたい。

その結果どうなるかも知らず……。


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「琴美が風呂に入った。 媚薬も飲んだみたい」


『よし、裏口を開けてくれ』


 琴美が風呂場に入ったことを確認した後、近くのカフェで待機していた豪に電話を掛けた。

裏口を開けてから数分後、豪がやってきた。


「やっとか……待ちくたびれたぜ?」


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 あたしと豪は脱衣所に向かった。

クズ親と真人はリビングで談笑している。

リビングと風呂場は離れているから見つかるリスクは低かった。


「香帆。 見張り頼むよ」


「うん、楽しんできて」


 あたしは豪が脱いだ服や下着を脱衣所の隅に隠し、誰も入ってこないように半裸の状態で脱衣所に留まった。

風呂場は脱衣所を通らないといけない。

半裸のあたしが脱衣所にいれば、真人はまず入ってこないし、あたしに興味のないクズ親共は無言で立ち去るのがオチね。


「さ~てと、結婚目前の女の体を堪能しますか……」


 豪はスマホを持ったまま、全裸で琴美のいる風呂場に入って行った……。

ここまで行ったらもうわかるわよね?

あたし達が何をするつもりなのか。

まあ要するに、媚薬を使って豪が琴美を犯すってこと。

貧弱な上、媚薬でまともに動けない琴美じゃ、豪に抵抗らしい抵抗なんてできない。


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 それから約1時間弱……風呂場からは小さな悲鳴や抵抗する音が響いたけど、それが外に漏れることはなかった。

風呂場のドアが開くと、満足そうな顔で豪が出てきた。

琴美は死体みたいにぐったりして床に倒れていた。

目は虚ろで涙がスゥーと流れている。

体や床には所々白い液体が点々と付いている。

豪はスマホでぐったりしている琴美の姿を数枚写真に収めた。

もちろん記念写真じゃなく、脅し用のネタ。


「このことを誰かにしゃべったら、この写真と行為中の動画をバラまく。

そうしたら、婚約者もお前の元を離れるだろうな……」


「!!!」


 何てベタなと思うかもしれないけど、いつの時代もこの手の脅しの効果は絶大。

それが婚約者のいる身であるなら、なおさら……。


「まあ、今後も仲良くしようぜ? 琴美ちゃん」


 豪は琴美の頬に皮肉めいたキスをし、服を着て裏口から出て行った。

あたしもすぐにリビングの真人やクズ親共に軽く挨拶をし実家を後にした。

しばらくしても、豪の行為は公にはならなかった。

どうやらあの女は豪に従う道を選んだみたい。

賢明な答えだと、初めて琴美のことを褒めたくなったわ。


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「アハハハ!! マジで最高だったよ!あの女。 しばらくは良い暇つぶしになりそうだ」


 帰宅した豪はしばらく上機嫌になって琴美の動画や写真を眺めていた。

前々から狙っていた琴美の体を、あっさりと物にできたんだから、無理もないわね。

でもちょっと妬けてきたわ。


「ねぇ豪……いつまでもそんな女のことばかり見てないで、あたしのことも見てよぉ……」


 あたしは下着姿になって豪に甘える。


「ったく……仕方ないな、香帆は」


 その後、あたしは豪に抱かれた。

琴美の強姦とは違う……愛のあふれる絡み合い……。

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