プロローグ いきなりの最終決戦
「フハハハハハッ! よくぞここまで来たな! 誉めてやろう!」
時は二〇XX年。空を薄暗い暗雲が覆い、所々で稲妻が走っている。その空の下、どこともわからぬ誰もいない高層ビル街の真ん中で、そのマントを羽織った男は高笑いを上げていた。
その男の目の前に、傍から見ればどこぞのコスプレかと思えるような格好をした五人の少女がいた。年齢は全員中学生か高校生くらいだろうか。何度も派手な色合いの衣装を身にまとった彼女たちは、剣や杖などそれぞれ何らかの武器をもって、その男に対して真剣な表情で対峙している。
「闇の帝王・サッカキバー! ついにここまで追い詰めたわ!」
その後人の中央にいる、赤い衣装を着た少女が剣を構えながら鋭く叫ぶ。それに同調するように、他の四人もそれぞれ武器を構えながら続き、それぞれがこういう場面ではお約束の名乗りを上げていく。
「燃える緋色は正義の炎! ジャンヌ・スカーレット!」
「芽吹く若葉は正義の緑です! ジャンヌ・バイオレット!」
「輝く琥珀は正義の証拠だよ! ジャンヌ・アンバー!」
「み、乱れる蘭は正義の移ろい! ジャンヌ・オーキッド!」
「舞い散る桜は正義の舞踏! ジャンヌ・サクラ!」
『五人合わせて、少女戦隊「ジャンヌ・ピュア」! 正義の名において、あなたを許さない!』
と、五人の傍を飛び回っていた幼い姿をした妖精が可哀い声で呼びかけた。
「みんなぁ、これが最後の戦いですぅ。サッカキバーを倒して、この世界に平和を取り戻しましょう」
「もちろんよ、マリアン。ここまで来たのよ。私たちの身代わりに命を散らしたジャンヌ・スノーホワイト……白雪の思いをここで無駄にするわけにはいかない。必ず、あなたを倒すわ!」
そうスカーレットが言った時だった。
「ふ、ふふ、フハハハハハ!」
サッカキバーが突然今までで一番の高笑いをした。
「何がおかしいの!」
「スノーホワイトの思いだと……貴様ら、本気でそんな綺麗事を口にしているのか?」
「そうよ! 彼女は自分の命を犠牲にして私たちを先に進ませてくれた。すべてはあなたを倒すために。私たちは、あの子の思いに応えないといけない! あなたには、こんな気持ちはわからないでしょうね」
「ふん、確かにわからんな。だが、少なくともそのスノーホワイトとやらがそんな事を思っていなかったというのはわかるぞ」
「何を言い出すの! 彼女の命を無残にも奪ったあなたに、そんな事を言う資格はない!」
アンバーが啖呵を切る。だがその言葉を聞くと、サッカキバーはにやにや笑いながら意地悪そうに告げた。
「心外だなぁ。私がいつそのスノーホワイトとやらを殺したと言った?」
その言葉に、その場に緊張が走った。
「何を言い出すんだ! スノーホワイトは実際に、貴様の手にかかって死んだんだ!」
「死んだのは確かなのかもしれない。だが、それが私の手によるものだという証拠でもあるのかな? もしかしたら、この場にいる誰かがどさくさに紛れてスノーホワイトを消したのかもしれないぞ」
「な、何を……」
はったりだ。そうわかっていながらも、一瞬動揺が走る。
「み、みんな。騙されちゃ駄目ですぅ。あいつの得意の手ですぅ。私たちを動揺させて、その隙に何かを仕掛けるつもりなのかもしれないですぅ」
妖精・マリアンが必死に皆を説得する。
「さぁ、どうなのかな。見ろ、人間など、多少揺さぶっただけでこの様だ。友達だ、仲間だと言いながら、そんなものは些細なもので崩れる。そんな貴様らが、この私に勝てるとでもいうのかね?」
「き、貴様ぁ!」
スカーレットが突っ込んでいく。マリアンが絶叫した。
「だ、駄目ぇっ!」
「ハハハハハハ! 怒りに我を忘れたか! 来い! その怒りの感情のまま、貴様を押し潰してくれる」
サッカキバーの挑発にスカーレットが絶叫する。
「来たれ炎よ! 我に力を! スカーレット・マグナム!」
激しい光とともにその場を強烈な爆音がつつむ。そして……。
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