第2話 近所を見に行こう

「はあ~~」

 正直、ため息がでた。

 やってられない。

 学校行く前にかなり疲れた。

 花柄模様の壁のキッチンテーブルでフレンチトーストと、湯気と香りが立つコーヒーには手を付けずに呼吸を整えていた。けれど、大好物の厚切りのショルダーベーコンだけは既に食べている。


 目覚めが悪い。

 何故かというと、さっきまで変な夢を見ていたからだ。

 それは、幼い頃の俺がナイフを持った自分の影に襲われている夢だった。あっけなく俺の何かが殺されてしまった。俺の何かが発した悲鳴が俺の耳にいつまでも残っている。そうだ……俺の影が死んだんだ……。


 うぎっ?

 こんな変な夢を見るなんて、夢の世界で影に襲われているのは昔あったけかな……。

 風呂、トイレ、物置、キッチンetc、etc……。色々と悲鳴を上げて逃げ回ったからか、夢の中だというのに物凄く疲れた。


「あれ?」

 気づくと、左手に刃物による切り傷があった。まったく覚えはない。出血はしていないけど、かなり痛い。


「え、怖っ!! なんだってんだ今日の夢はーー!!」


 もう一つのため息の原因は、外の天気だ。何故か朝の7時なのに真っ暗。これで、ため息をつかない奴はいないんじゃ? まだ夢の世界にいるのかと思うとひどく憂鬱になる。

 家の中も暗くて照明をつけていた。

 7月の半ばだというのに、かなり寒くなってきている。冬の寒さに似ているな。


「はあ~~~。やってられないなあ~学校休もうかな?」


 俺は何度目かのため息を吐いていた後、なんか明るいニュースでも……と。うん?


 部屋の片隅にポツンとある小さなテレビを点けると、丁度ニュースが流れるところだった。


 ニュースキャスターのいる下の字幕に、次はお天気コーナーと書かれている。


「ふーむ、そうですか。今後ますます不景気になるかも知れませんね……。あ、次は天気予報ですね。このところ寒い日が続きますねえ。それでは、小春さん。今日の天気はどうでしょうか?」

 ニュースキャスターの一声の後で、場面が変わった。何故か近所の比水ひすい公園が映っていた……。


「おはようございますー。今日は、比水公園に子供たちと来ていますよー。それと、今日の天気は晴れ時々、春ですね……」


 気象予報士の後ろには子供たちの平和な笑い声の中で、気象予報士が不思議なことを言っている。


 場所は、ここの近くにある比水公園だ。


「へえ、そうですか。……次は、経済です。中東の経済状況が……」

  

 何故……比水公園で……それに春……?

 一体……?

 おかしいだろ?


 外の闇の中から……はあ?

 桜の花弁が落ちているーーー??


 俺の家の隣は比水公園だった。そこの桜の木が満開のようだ。

「うーんっ! 確かに綺麗な夜桜ッスね?」

 俺は呆れて冗談を言うしかなかった。風に乗って桜の花弁がガラス窓の外でひらひらと舞い落ちていた。

「おにいちゃーーん! 遅刻だよーーー!! なんで起こしてくれないのーー! おにいちゃんバカ!」

 その時、妹のひかるの絶叫が二階から降ってきた。

 あれ? もうこんな時間か?

 いつもの妹を起こしてやることを忘れてた。

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