第4話 親友二人と俺の食生活
「おはよっ、海斗っ!」
「おーっ、海斗っ、引越し終わった?」
二人とは、受ける講義が一緒で、大学に入ってから仲良くなった。
凛は、マンガが好きで、アニメも見るが、別に制作会社が何処とか、声優は誰とか、そんな事は気にせず見ている。
……まぁ、大抵の人はそうなんだろうけど。
祐樹の方は、そんな俺に気を使う事なく、『オタク野郎』とか平気で言ってくる。
気持ちいい位に裏表のない性格で、デリカシーが無いのが難点だが、俺も祐樹にはまるで気を使わずに言いたい事言えるから、一緒に居て楽しい。
ちなみに二人は、高校の時から付き合っていて、お互い頑張ってなんとか一緒の大学に入ったらしい。
「手伝いに行けなくてゴメンなっ」
祐樹が言うと、
「はいっ、これ、二人からの引越し祝い」
凛が、手提げ袋を渡してきた。
「いくらあっても困らないと思って、バスタオルと、フェイスタオルのセットよ」
「うわっ、わざわざありがとう! そんな気使わなくていいのにっ」
「引越しは、バイトの人達が手伝ってくれたから助かったよ! それより、片道二時間が、徒歩十五分だぜっ! もう、天国だよっ!」
「そうだよなぁ、それは全然違うよなぁ、今度、遊びに行っていいか?」
「ああ、構わないよ」
……何か、溜まり場になりそうな気がするんだが。
「そうだっ、合鍵作ってさー、海斗がバイト行ってる間も、俺達入れる様にしてさっ!」
祐樹が、ニヤニヤしながら自分勝手な事を言っている。
「お前ら、俺の城を『無料のラブホテル』にしようとしてないか?」
「もうっ、ちょっと位は払うわよっ、ちゃんとキレイに使うしっ、ププッ!」
凛がいたずら顔で笑った。
「絶対ダメだっ! ベッドは使うなっ、ソファーも!」
「あはははっ、冗談よっ! 人ん家でヤる訳ないだろっ、どうせ『お兄ちゃん大好き妹』が入り浸るんだろっ」
「祐樹っ、違うわよ! 『妹大好きお兄』よっ」
二人して揶揄ってきた。
「俺達はそんなんじゃないよ、ウチは、母子家庭だから、夏海が小さい頃から俺が父親代わりだったんだ」
「でも、この間四人で映画見に行った時、私達よりイチャイチャしてたじゃない? ……しかも、ずっと腕組んでたし」
凛が脇腹をツンツンしてきた。
「ちょっと、……甘えん坊に育っただけだ。でも、片道二時間もかけて毎回来る訳いかないから、日曜日だけって約束したんだ」
「もうっ、さみちいでちゅねぇ?」
凛が泣きマネしながら言った。
「バカにしてるのかっ?」
「……でも、海斗に彼女が出来たら大変だろうなぁ?」
祐樹が言うと、
「そうなったらなっちゃん、海斗ん家住み着くわよ、絶対っ!」
凛も続けた。
「……夏海も兄離れしないとなぁ」
まあ、兄離れする前に、俺に彼女が出来る気がしないが……。
ーー
「じゃあなっ、海斗っ」
「また明日ねーっ!」
「今度遊びに行くからー」
「おうっ、二人共お幸せにっ!」
二人と別れた後、新居に足りない物をちょこちょこ買ってから帰宅した。
「はぁ、疲れた、……思ったより買い込んじゃったなぁ」
帰る途中に家の近所を探索した。
へぇーっ、意外と食べ物屋あるんだなぁ。
コンビニも近いし。
……料理出来なくても全然平気そうだ。
あちこち見て回ったら、七時過ぎになってしまった。
あっ、タッパー返さなきゃ
部屋を出て、白河さんの部屋のチャイムを鳴らす。
すると、しばらくして慌てた声が、
「あっ、ちょっと待ってー! もうすぐ出来るからっ」
ん? どういう事?
すると、ドアが開いて、
「ちょうどギョーザ焼いてたのよ! はいっ、お裾分け」
「あっ、タッパーちゃんと洗ってある! エライエライっ」
白河さんはタッパーを受け取って俺の頭を撫でて来た。
そして、またタッパーを受け取った。
「あー、タッパー返す時、袋に入れてドアノブに掛けておいてくれればいーよ、お互い何時に帰ってくるかわからないじゃない? ……私も、こんな早い時間に帰ってご飯作るなんて事、あんまりないから」
白河さんは、頭を掻きながらそう言った。
白河さん、今日は髪型ちゃんとしてるんだな。
……相変わらず化粧はしてないけど。
「ご馳走様でした。すっごく美味しかったです! 特にあの鶏肉っ、ヤバかったです!最高ですっ!」
「あははっ、どういたしましてー」
「あっ、そうだ、LIME交換しようよ。そしたら、私がご飯作った時に都合があえば、お裾分け出来るし」
「何かそんな甘えちゃって、悪いな」
「じゃあ、……いらない?」
ちょっと不満気な顔にドキッとした。
「LIME、交換させてくださいっ!」
思わずプロポーズで花束を渡す男の様に、スマホを両手で持ち、白河さんの前に頭を下げて差し出した。
「あははっ、オッケー、よろしくねっ!」
……思わぬ所で、俺の食生活が改善されそうだ。
※※※※※※※※
♪読んで頂きありがとうございますっ♪
白河さんの美味しいご飯食べたいっ!
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