第7話 ここはどこ?
「ぅんん...」
微睡みの中、目は開けず耳を澄ませる。パチパチと弾ける音、目は閉じてはいたがほんのりと火の明かりのような暖色が瞼越しにわかる。
ゆっくりと目を開けると、私の寝ていたはずの藁のベッドはふかふかの赤いソファーに変わっていて、目の前には暖炉があった。
「んぇ...?」
驚いて、ぱっと起き上がると薄い布が床に落ちる、落ちた布をソファーに置き、私にかけられてものだと理解した。
周囲を見渡すと、暖炉と、向かいあったソファーとの回りにこれといった家具は無く、奥にテーブルと椅子、そしてベランダにも置いてある。一部屋なのにめちゃめちゃ広い...。相当なお金もち?
ーーいや、それよりも...。
「ここ...どこ...?」
もしかして夢?天国?と思い、ほほをぐにり。
「痛い...」
ここは現実だと理解したがどういう風の吹き回しだろうか、と思っていたらガチャリとドアが空く音がする、咄嗟にソファーに倒れこみ、狸寝入り。
ヒタヒタと足音が近づく、誰かわからないけどここで目を開けるのは怖いっ!
近づいて来た足音は私の寝ているソファーの目の前で止まり背もたれに寄りかかる音がした。
「おきた?」
声がする、女の人の声だった。
「...」
私は寝ています!私はまだ寝ていますーっ!
「起きてるでしょ」
私の狸寝入りを見透かしているようだった、でも目を開けるのはちょっと怖い...と思っていると頬に痛みがっ!
「いててて!ごめんなさっ」
「ほらやっぱり」
「ほぇ...?」
私の頬から伸びる指の先を辿ると女の人の顔にたどり着く、それも
「学園...長...?」
「はぁい、学園長のエリナよ」
「えっと、なんで学園ちょ..それにこの部屋、えとっ...!」
「ハイハイ落ち着いて、深呼吸して」
すー、はー。私が落ち着きを取り戻した所で横に学園長が座ってきた、
「ここは私の部屋の一つよ、エフィリアちゃんは今、私の家にいるのですっ!」
目を細めて微笑む学園長、なるほど...なるほど?
「てことは私はあの檻の中から出して貰えたんですね...」
何とかなったんだ私、ここで私はやっと胸を撫で下ろした。
「そうよ、街の警備兵から連絡が来て慌てて飛び出してきちゃった!」
学園長の顔は全く迷惑とも思わない、不機嫌そうな顔ではなく笑顔のままだった。
「迷惑でしたよね...私」
「そんなことないわ、むしろ仕事休めてラッキー的な?(むしろエフィリアちゃんに会う建前が出来て超ラッキーなんだよねぇ、ぐへへ可愛いry)」
仕事を休みたいという、学園長らしからぬ意外と邪な理由だった、
「それと、ちゃんと私から説明してエフィリアちゃんは無罪!明日からまた錬金術士として頑張れます!」
「よかったぁ...ありがとうございます!学園ちy「エリナ」」
学園長の声に遮られた、エリナ?
「エ・リ・ナ!はい復唱!」
ここで先生の名前だと理解した、流石に学園長を呼び捨ては無理っ!
「エリナ...さん」
「まぁ...100点ね」
"まぁ"からでる点数じゃないような気がするけど学園長って結構グイグイくるタイプの人なんだ。
ちなみに生の学園長は壇上でしか見たことない、あとたまに授業覗きに来たとき位か。
錬金術学園のトップとして活躍する学園長、学園に入る前、それもうんと前、子供の頃に憧れてた人。私はこの人に憧れて田舎の村からこの学園のある街まで飛び出してきた。...正直今も憧れの人だ。
「ありがとうございます...」
「しっかし大変だったねエフィリアちゃん、まさか捕まっちゃうだなんて。前代未聞の学園のニュースだよ。連絡来たとき椅子から転げ落ちちゃった」
「そんなにですか!?」
私なんて赤点ばっかの劣等生だから見向きもされていないと思っていたけれど、何となく普段から世話を焼いているような感じがする。
ーーこれが年上の女性の包容力...!
「こう見えても学園長は皆のことを見てるの、勿論エフィリアちゃんのこともね、はいこれ」
学園長の懐から私の作ったダイナマイトがっ!でもこれ
「ちょっと違う...」
>ーーー<
改良されたダイナマイト++++++
手を加われて完全に安定したダイナマイト、威力は前と同じままに投げた先で確実に爆発するようになった。
価格???
完成度???
>ーーー<
「私がちょこっと改良したの、もしかして余計だったかな?」
「いえ、全然。むしろありがとうございます!」
学園長がいつの間にか持っていた私の鞄を受け取り、ダイナマイトをしまった。今度こそこういうモノは出しっぱなしにしないようにしよう。
「今日はもう夜遅いし、ここで泊まっていくといいよ」
「え、でも」
「真夜中に外に放り出すのは色々問題になりそうだから、厚意に甘えちゃいなさい」
「はい、エリナさん」
「よろしい」
このあと私は学園長と同じベッドで寝ることを初めて知ったが、一度承諾したので断りづらく大人しく学園長と共にするのであった。
試験が始まってからあったことを話していると、先に寝たのは学園長だった、
「あの...エリナさん...学園ちょ...苦し、まさかもう寝てる...っ!?」
思い切り足と腕をクロスして抱きつかれ、しかも私がどんなに押しても引いても1mmも動かない。早めに抵抗するのを諦め、宿泊代として今夜は抱き枕を徹する私であった。
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