未来の王太子夫妻の恋 2

 キャサリンと別れたレイナードは、不機嫌さをも隠さぬ表情で母親のことを睨みつけていた。


「どうしたの?レイ。とっても不機嫌そうよ?」

「………母上のせいで、月の精霊さんみたいに可愛い子とあんまり話せなかったからですよ。」

「あらあらまあまあ!!レイにもついに春がやってきたのかしら!?」

「ないね。兄上の婚約者だし。」


 レイナードの不機嫌さの理由は3つあった。1つめは、母親のせいでキャサリンとの会話を邪魔されてしまったこと。2つめは、とっても可愛いキャサリンが、兄の婚約者であるということ。そして3つめは、あんなに可愛くて神々しくて、美しいキャサリンを兄がブスとのたまったことだ。

 兄の全てが気に入らない。

 レイナードはイライラが抑えられなくて思わず土を思いっきり蹴飛ばした。


「………なら、奪えば良いじゃない。私、他の人のを見ている分なら、略奪愛って結構好きよ?」

「自分のことになると好きじゃないの?」

「えぇ、私、人のものには極力触れたくないの。」


 側妃の言葉とは思えない言葉に、レイナードはふーんとしか言えなかった。ここにはもう触れない方が安全そうだ。危険なことを嫌うレイナードはあっさりと引き下がった。


「………あの子にはまた会えそうだし、それだけで僕は十分。ま、兄上にはちょこーっと気に入らなかった分の嫌がらせをするのもありかもだけれど。」

「へぇー、そんなに気に入ったのね。」


 母親の言葉に、レイナードは首をちょこんと傾げて微笑んだ。


「まあ、そこそこ?」


 天使のような笑顔には、僅かに腹黒さが滲んでいた。


▫︎◇▫︎

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