飴ちゃんと恋ちゃんの嘘～この愛を守る為ならこの身を全て捧げよう～【彼×彼と彼女×彼女のお話】【仮】

恋ちゃんの想い

カランカラン…

風鈴の扉を開けるとダンディなマスターが出迎えてくれた。

「いらっしゃいませ」

俺は、店内を確認してからマスターにあの席がいいと頼んだ。

「どうぞ」

カウンターの角に、恋さんが座っていた。

「お疲れ様です」

「ああ、飴ちゃん。お疲れ」

恋さんは、酔っぱらっているようだ。

「ご注文は？」

「ビールで」

「かしこまりました」

マスターが、向こうに行く。

「恋さんは、いつもここで？」

「さんは、いらないから。恋でいいよ」

そう言いながら、恋は、手を横にヒラヒラと振った。

「恋は、いつもここにいるの？」

「うん、そう。抱ける子探してる」

そう言いながら恋は、カクテルをいっきに飲み干した。

「マスター、おかわり」

「はいはい、恋ちゃん。もう飲み過ぎだよ」

マスターは、恋にそう言いながらも、新しいカクテルを作りにいく。

「ビールどうぞ」

入れ違いでやってきた、あどけなさの残る店員が、俺にビールを差し出してきた。

「あ、京君。顔赤いよ。飴ちゃんタイプでしょ？」

「恋ちゃん、違うよ」

京君と呼ばれた店員さんは、首を横に必死で振っている。

「抱いてもらいなよ。京君」

「そんなの、ないない」

そう言って、必死で手を横に振りながら戻っていった。

彼が去った後、マスターが、カクテルを持ってきた。

「飴ちゃん、バイでしょ？」

「えっ、あっ、両方いける」

俺は、恋の言葉に咄嗟にそう答えた。

「やっぱりね、京君もバイ」

そう言って、恋は笑ってる。

「恋も、両方いけるのか？」

「私？私はね、女専門。男としたら吐くから無理」

そう言って、恋はまた手を横にふる。

「そうか」

俺は、ビールを飲む。

「ここには、女の子探しにきてるのか？」

「そうだよ。ノンケを探してる。ママには内緒だよ」

シーって唇に指を押し付けてから恋は、「私ね、ずっと紗綾（さあや）が好きなの」と言った。

「紗綾とは？」

「飴ちゃん、芸能関係強いと思ってた。ハリーさんの紹介じゃないの？」

「そうだが…。って事は、芸能人なのか？」

「そうだよ。笹森梓って名前のがわかる？」

「あっ、美麗と撮られた人だな」

「そうそう。最近撮られたよね。あっちは、ゲイだよ。ハハハ」

そう言って恋は、楽しそうに笑ってる。

「本名、紗綾って言うのか？」

「そうだよ。磯部紗綾（いそべさあや）。笹森梓ってつけたのは社長が決めたんだって。美麗君も違うでしょ名前？」

そう言って恋は、グラスの中のオリーブをつついてる。

そう、美麗（みれい）は、本名の高梨美麗ではなく、美麗（ミレ）と言う名で活躍している。

「漢字は、一緒か。ハハハ」

「よく知ってるね」

俺の言葉に恋は、頷いた後で、寂しそうな表情を浮かべて笑う。

「３ヶ月前、紗綾の会社の人が来て、別れてくれって言われたの」

そう言うと、恋の目から涙が流れ落ちる。

恋は、俺と同じだ。

「それからは、辛くて。元々あんまり会えないうえに終了宣言でしょ？私、紗綾に子供欲しいし結婚したいとか嘘まで言っちゃったよ」

恋の目からは、さっきよりも涙が、ポロポロと落ちていく。

恋は、本当に俺に似ていると思った。

「わかるよ。俺も、そう言って美麗と別れたから、内緒だよ」

そう言って、俺は、唇に人差し指を押し当てる。

「ええ」

恋は、俺の言葉に驚いて目をパチクリさせる。

「そんなに驚く事？」

「まさか、飴ちゃんだと思わなくて」

「ハハハ、確かにな」

「だったら、飴ちゃんが、私のソフレになってよ」

「ソフレとは？」

「添い寝友達。時々、京君にやってもらってたんだけどさ。今日みたいに、誰もツレナイ日だけでいいから」

そう言って恋は、カクテルを飲んでる。

一緒に寝るぐらい俺は、構わなかった。

「構わないよ。そんな事でいいなら」

「じゃあ、決まりだね」

そう言って、恋はカクテルをいっきに飲み干すと「マスター、お金足りる？」と言った。

「大丈夫だよ」

そう言ったマスターに恋は、「じゃあ、帰るね」と言って歩き出す。

恋は、酔っぱらいすぎているのかと思っていた。でも、足取りはしっかりとしていた。

「ありがとうございました」

マスターと京君にお辞儀をされながら、俺と恋は、店を出た。

店を出てすぐに止まっていたタクシーに乗り込んだ。

「飴ちゃんの家ね。今日は…」

そう言って恋は、笑ってる。

俺は、住所を運転手に伝えた。

夜中の３時。

いつも、この時間に美麗がマンションに来ていた。

そして、朝までゆっくり休んで早朝からの仕事に出かけるのだ。

まだ、別れてから１日しか経っていないけれど…。美麗は、ちゃんと眠れているのだろうか？