第2話

夜鳴きを始めた彼女は、程度の差はあれど、私を睡眠不足にするくらいには毎晩鳴いていました。

SNSで泣き言のように笑い話のように愚痴を書いたこともあります。



そんな日々の中で迎えたのが、あの夜でした。

夜鳴きが特にひどかった夜。


あの夜を境に、彼女の体調は一変したのです。



何をどう対処しても止まないまま、一晩中鳴き続けて、もうすっかり外が明るくなってから、彼女はようやく眠りについて。

そうして。

次に起きてからは。

それまでは自分一人で歩くことが出来ていたのに、立ち上がることすら出来なくなり。

そして、その日からゴハンも食べなくなってしまったのです。



今思えば。

本当に、今、思えば、なのですが。


あの夜、彼女は自分の体調の変化を必死に訴えていたのだと思うのです。


「お母さん、あたし、お腹が痛いの。すごく痛いの」

そう教えてくれていたに違いない、と。


なのに私は『今夜は夜鳴きがひどいなぁ』としか思わず。

気遣うような事を何一つ言ってあげませんでした。

ずっと睡眠不足で疲れていたなんて、言い訳にもなりません。

あの夜、彼女はどんな気持ちでいたでしょうか。


この夜の事は酷い後悔となって、私の中に残り続けることになりました。



とにかく、彼女の変化に驚いた私は病院に駆け込んで。

数日間、何回かの血液検査やエコーを経て、彼女は『急性膵炎』と診断されました。


その診断が下った時に、私は獣医師の先生に静かな声で言われました。

「かなり状態は良くないです。覚悟はしておいてください」

と。












  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る