味確認
そうざ
Confirmation of Taste
患者の訴えはこうだ。
甘い筈のケーキがしょっぱく、しょっぱい筈の塩辛が酸っぱく、酸っぱい筈の梅干しが苦く、苦い筈の
つまり、味覚に異常を来たしている訳だが、味覚というものは極めて主観的な感覚だ。舌や脳に機能的な異常があれば外科手術の施しようもあるが、精密検査でも異常は認められない。原因は他にあると思われる。
あり得べき仮説は、患者が『甘味』『塩味』『酸味』『苦味』の感覚を誤認識している可能性だ。人は他人の体験を正確に感知する事は出来ない。他人の認識は常に想像の範疇で処理された虚像でしかない。これは色の認識と似ている。或る人が見ている『赤』と自分が見ている『赤』とが全く同じ『赤』だとは誰も断言出来ない。同様に、自分にとっての『甘い』が他人にとっての『甘い』と同じかどうかは本質的に計測不能だ。私にとっては紛う事なき『甘いケーキ』も、患者にとっては正真正銘の『苦いケーキ』なのかも知れない。
もう一つの仮説も成り立つ。言語認識能力の
一計を案じた私は、ケーキ、塩辛、梅干し、
「不味いです、おげ〜っ」
正常である事が判明した。
味確認 そうざ @so-za
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
表現のきざはし/そうざ
★26 エッセイ・ノンフィクション 連載中 60話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます