怖かった夢の話

月ゲッコウ

甘いものと黒いもの

甘ったるい臭いのする村

村人たちは皆、暗い顔をしている

僕は「なぜそんな表情なのか」と聞くと

「最近、村人が減っているんだ」と返ってきた


村を散歩する

僕の膝くらいの鳥居が道の途中にいくつも建っている

気にはなるけど散歩を続ける

着いたのは村の神社


神主と巫女がやってくる

「ここに来られる方も珍しい」

「どんな村なのですか?」

「甘いものが特産の村です」

「たとえば?」

「大福、饅頭、団子、水飴・・・」


話を聞いていると鳥居の向こうに黒いものが見えた

僕は神主に今見えたものについて話す

「忘れなさい」

巫女の顔を見ると怯えた表情だ


「今日は泊っていくのですか?」

神主に聞かれる

「はい」

「では明日、起きたら食事を取らずに帰ると良いでしょう」

そう言って神主は巫女を連れて消えた

僕は訳も分からず、宿に帰って寝た


次の日

起きると同時に着替える

宿のおばさんが朝ごはんについて聞いてきた

僕は断り、荷物をまとめて宿を出る


昨日会った村人に出会う

相変わらず暗い表情

「また一人減った」

「次は自分かも、それとも家族か」

甘い香りが辺りを漂う

道端の小さな鳥居の向こうが真っ黒いものでいっぱいだ

村人が懐から饅頭を取り出して食べ始める


鳥居の向こうから真っ黒い手が伸びてきた

僕は怖くなる

そして考える

彼を連れて行くのかと


ふと思いつくことを口走る

「梅干しは好きですか?」

村人は饅頭を食べるのを止めて答える

「何年も食べていない」

「では、今度送りましょうか」

「嬉しいね」

彼の肩を掴もうとするところまで来ていた真っ黒い手が止まる

そして戻っていった

僕は安心して、彼から住所を聞き村を後にする


村から出る時に舌打ちと呟きが聞こえた

「すっぱいものは嫌いだ」

僕はそこで目が覚めた

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怖かった夢の話 月ゲッコウ @moongekko01

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