喜怒哀楽の犯罪

そうざ

Crime of Emotions

 突然、友人がやって来た。可愛がっていた犬が看病の甲斐もなく死んでしまったと言う。友人は犬との思い出話を涙ながらに語り続ける。最初は冷静に聞いていた私も、次第に目頭が熱くなり、思わず涙が零れた。すると友人が――


「ねぇ、何で貴女まで泣いてるの?」

「何でって、貰い泣きよぉ」

「……ちょっとぉ、勝手に泣かないでくれる?」

「何、それ。あんたが泣くからいけないんでしょ」

「私は貴女に涙をあげる為に泣いたんじゃないわよ。話を聞いて欲しかっただけ」

「だったら泣かなきゃ良いじゃない」

「私は自前の哀しい思い出で泣いてるの。只乗りしないでくれる?」

「はぁ? いつ料金制になったのよっ」

「涙の返金対応は出来兼ねます。これは立派な犯罪ね。名付けて、号泣の窃盗事件!」

「号泣なんかしてないわっ。そもそも犬っころの下らない話なんか興味ないしっ」

「貴女……もしかして怒ってる?」

「当り前でしょっ!」

「先に怒ったのは私よ。パクるなんて最っ低ぇ。名付けて、憤怒ふんぬの盗作事件!」

「違うわよっ。オリジナル激怒よっ」

「ぷっ、オリジナル激怒って何よ」

「あぁっ、今、笑ったわね! 勝手に笑わないでくれるっ⁉」

「貴女が笑わせたんじゃないのっ」

「そんな意図はありません。便乗しないで下さい。名付けて、抱腹の横領事件!」

「もう何だか馬鹿々々しくて、寧ろ楽しくなって来たわ」

「名付けるとしたら?」

「悦楽の……贈賄事件!」

「それでOK?」

「んんっ、やっぱり……至福の連続殺人事件!」

「意味が分からん」

「人生なんてそんなもんでしょ」

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喜怒哀楽の犯罪 そうざ @so-za

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