僕の決意

僕が彼女のようにはなれないと気付き、死ぬことを止めた。

そして僕はただひたすら考えた。

彼女が残してくれた言葉の一つ一つを。

その意味を。

もう彼女からヒントですら聞くことは叶わない。

だから一人で考え、正解を探さなければいけない。

当然答え合わせもできない。

こんなことは無意味だと叫ぶ僕もいる。

だけど僕は考え続けた。


考えて考えて、僕はようやく一つの結論を導くことができた。

彼女の言葉にはきっと正解なんてものはない。

言うなれば僕が僕自身の頭で、心で、感情で考えることこそが答えだ。

僕の人生は数学の問題集のように決まった答えがあるものではない。

だからわからないからと言って答えを聞けば解決するというような簡単な話ではない。

たくさん悩み、考え、間違えることによって僕の世界は広がっていく。

そんな簡単なことを僕は分かっていなかった。

だから彼女に答えを求めてしまった。

だから僕は一部だけを見て汚いと切り捨ててしまった。

それこそが間違いだった。


僕が見ていたものはそ一面でしかなく、違った見方をすれば別の表情が見えたかもしれない。

僕が見ようとしていなかっただけだ。

僕が見ようとさえすれば世界はいくらでも広く美しくなれるのだ。

世界の見方を、この世界の歩き方を彼女は教えようとしてくれていた。

僕は彼女のおかげでそのことに気が付くことができた。


だから僕は自分の目で見て、自分の頭で考えて、自分の足で立ち、歩いていく事を決めた。

どこへたどり着くかはわからない。

間違えることもあるだろう。

だけど間違えたっていい。

僕が僕の足で立っている限り僕の道はそこに在る。

進むことを止めない限り道は在る。

僕の人生は僕次第で美しくも汚くもなる。

どう進むのか、決まりなどない。

僕の自由、僕だけのものだ。


彼女とで出合わなければ僕は自分の価値観を疑うことなく、限られたものしか見ずに狭い世界で息苦しい日々を過ごしていただろう。

与えられた時間を無意味に浪費し、世界がこんなにも大きななことに気が付かず、ちっぽけな僕は惨めな死を迎えていたかもしれない。


僕は彼女に救われたのだ。

何度目かわからない感謝を彼女に捧げると僕は立ち上がる。

そして僕はキリンに会いに動物園へと向かうのだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

遺書  銀髪ウルフ   @loupdargent

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ