第22話
ひとまず、久々の野外を楽しむために、ベースキャンプの設営。
広い草原に林が点在する環境のため、山脈からの吹き降ろしの風がくる時がある。それを避けるために林の中が最有力候補になる。視界の悪さはソフィアの感知能力があるので問題にはならない。けれど見晴らしはいい方がいいよね。ってな事で断崖上の林を見つけて、ここをキャンプ地とする。
普通なら水の問題もあるが、魔法でお風呂を作れるほどの水を確保できる僕達にはそれも、阻害要素とはならなかった。
「ここなら、群れが下の草原を通ってくれれば狩り放題だね。」
「群れが来る前にちょっとしたい事があるんだけど、いい?」
「いいよ、見てても大丈夫?」
「問題ないわ。ここの林、世界樹の小さいのがはえてるから樹液を集めたいの。キレイな容器、、瓶とかって持ってるかしら?」
こうしてはいられない、群れの監視はソフィアに任せて、瓶を大量に準備して樹液を集めなくては!
アマテラス様!緊急事態です。大きいサイズの瓶と採取セットを大量におねがいします。
≪わかったわー!すぐ送るわねー。それと今晩くらいはお楽しみしたいでしょうから、明日の晩にお邪魔することにするわー。ザリガニとミード楽しみしてるわー♪≫
気を使われてしまった。
「甘いのです!」
ヘレンが感動したように言いながら穴からしみだした水を指につけて舐めている。
蜂蜜のように濃い甘さではないが、うっすらと感じる甘さ?
「この樹液って時期はないの?」
幹に穴を開けて送ってもらったノズルと瓶を取り付けながら聞くと、
「冬が本番だけど、ほぼ年中採れるわね。昔の人は川が無い森の中で水が必要になった時にこの木から採水してたなんて話もあって、水の木なんて別名もあるくらいなの。
この木がしげるところには、水の妖怪がつくから大事にしないと悪戯されるなんて言い伝えもあったりするわ」
使用目的を聞くとやっぱり煮詰めてシロップを作るとのことだった。甘味として、調味料として、薬用として、蜂蜜と並んで便利に使えるので商品価値も高いらしい。
集められるだけ集めねば。
勢い余って樹液集めに走ってしまったが、居住空間を作らなければならない。今回からはテントは大きめの物を一張り。展望露天風呂を作って、火の周りを作って、トイレを設置。
「ああ、これよ!お風呂とトイレ!! これに慣れちゃってから世界樹のを使うのは、、きつかったわ」
「そこかー」
「そこよ!木の上で水って言ったら雨水か樹液か魔法で出す水しかないから、その貴重な水でお風呂が無理なのはわかるけど、流せて洗ってくれて、おまけにこの巻いてある紙の柔らかさ。戻れるわけ無いじゃない。私もう一生ケイから離れない!」
「理解はできるけど、なんだかなー」
じゃれてても しょうがないから晩御飯のおかずの調達でもしよう。ちょうど良くはぐれたらいし小さい群れが来てるらしいし。
でかいけど、破砕しちゃまずいから天の軽トラ・テクニカルで銃架付けて天のブローニングM2ライフルスコープ付与狙撃カスタム。
獲物がいない方向に向けて一回試射していざ本番、直してる暇がないから、ちょい左に修正で撃つ。距離約2キロ。一匹目命中、二匹目、、、三匹目、撃つ前に残りは皆逃げた。
「獲物回収してくるー」
「いってらっしゃーい!新たなお肉、楽しみなのです」
軽トラを出しちゃうと獲物に警戒されそうなので徒歩。遠っ。
崖を回り込み、草原の中をテクテクと、ジャッカロープ、近くで見てもでかいな。確かに後ろ足がウサギっぽいような気がしないでもないけど、角はヘラジカ。空飛びそうな大面積。
収納にしまってさて帰ろうとしたら、近くに群れが来た。距離1.5キロ 先日の天のナイトプレデター、PG-14.5を取り出して伏せる。「ひとーつ、人の世の生き血を啜り」「ふたーつ、不埒な悪行三昧」「みーっつ みっちゃんみちみち、、、あっまた逃げられた。」二匹追加、帰路がさらに遠くなった。
帰還後、近くの木に設置していた樹液受瓶がいっぱいになっていたので、他の瓶も回収に向かう。このまま何日か集めればかなりの量が確保できそうだ。
ついでにジャッカロープを近くの木に吊るして血抜きを開始。
周りに極低温の氷で壁を作って氷室、体温を一気に下げさせる。
昼、鎧竜の燻製肉500gを串に刺して軽く炙って、パンとスープと果物とでご飯。
「この脂の甘い味がまた、そこに持ってきて噛み応えはあるけど、硬すぎない絶妙さが」
「お肉があれば勝つるのです。夕ご飯には今より旨い奴に会いに行くのです」
「ジャッカロープも美味しいわよー。最初淡泊だけど噛むと野趣溢れる味がにじみ出て 生を焼いたのもいいけど、燻製も、、、あっスープも美味しかったわ。」
ヘレナが聞きながら涎を垂らしている。ある程度の数を確保しないと食べ尽くされてしまいそう。
あの大きさならモツとか他の希少部位もいけるかな?
初日で数がとれたので午後は全員でノンビリ過ごすことにする。こーゆー所にきて余裕無く動くのは、なんか違う。
「生き返るねー」
「んーーーーー」
「昼風呂最高なのですーー」
贅沢に昼からお風呂。全員分のジュースを用意して軽いおやつも用意して、縁に頭を乗せて全身伸ばす。
二人共、しなだれかかって来ぬように、気持ちいいではないか。
『完全にだらけてますね。近くに群れはいないので引き続きそのままで大丈夫です』
「んーーーー、ソフィアにも味わって欲しいねー。この気持ちよさ」
『大丈夫です。高天原の本体はしょっちゅう温泉にいっておりますので、フィードバックは頂いております』
「そーゆーもんかい」
出たり入ったりで、かなり長時間を優雅に過ごして夕食。
お待ちかね、ジャッカロープ!やはりサーロイン部分から、、、でかいので牛の様に部位が分けられる。
厚めに切って筋切、塩コショウしたステーキと、ロース部分を丸焼きに。
今回からの新兵器、熱した厚鉄板にサーロイン3枚一気に投入して表面を焦がすと、芳ばしい匂いが辺りに立ち込める。返して裏面も焦がし、しばらくしたら完成!
鉄板前でナイフとフォークを持って待ち構えている二人の皿へ乗せる。ナイフで切るのももどかしくガッツいて食べていた。
「旨いぞー!ジビエの極みなのです!」
「これ食べると帰ってきたって気がするわー。焼き加減も最高ー!この金色のタレも合うー!」
もういっちょ追加で焼いとこう。
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