ババ引き①
サクが目を開けた瞬間───そこには澄み切った青空が広がっていた。
「……は?」
心地よい風が肌を撫で、草木のざわめきが耳に木霊する。
眼前には開けた草原が映り、遮蔽物など何一つなかった。
そして、視線の先———一脚だけ、木でできた小さな椅子が、場違いではあるが置かれている。
そして、その椅子にはトランプを手にするカルラの姿。上空には、9枚のトランプがサクに見えないよう浮かんでいた。
先程まで想い人の部屋にいたというのに、視界が真っ白になった瞬間にこの光景が広がっている。
そのことに、サクは動揺が隠し切れなかった。
「いや、そうか……これがお嬢の言っていた仮想空間か」
「ようこそ、サクくんっ!
目の前にいるカルラが両手を広げた。
無邪気な子供のような笑みを浮かべて。
「ここは
仮想であり造られた空間ではあるものの、その場にあるものは実態であるというのを、カルラは地面に生えていた草を抜き取ることで教える。
だが、初めての仮想空間———見慣れない新しいものがあまりにも大規模すぎて、動揺が未だに続いてしまう。
「えーっと……これ、ちゃんと戻れるんですか?」
「戻れるよ? でも、ゲーム中は戻れないかな……ゲームの決着がついた時以外は出られないようになってます!」
「お花摘みに行く時はどうすれば?」
「ねぇ……真っ先にそのことから確認しないで。盛り上がってたカルラちゃんの気分は急降下だよ」
どうやらこの部分はデリケートなところだったようだ。
「あと一応言っておくけど、ここで死んじゃっても大丈夫な感じになってるんだ! 死んだら仮想空間から強制的に現実世界に戻されるけど、命の心配はないよ!」
「待ってください、死ぬゲームとかあるんですか?」
物騒すぎませんかね? と、戦慄を隠し切れないサク。
「あるよ! だって、
「余興じゃないの?」
殺し合いなんて、何もできない自分にとっては不利でしかない。
というより、そんなことをしたら楽しむもんも楽しめんでしょうにという愚痴を吐きたくなるサク。自分の知る余興じゃない、とも思うサク。
「余興だよ? だから、皆楽しいんじゃん。だって考えてもみなよ……現実世界じゃ、簡単に人に剣を向けたり魔法を放ったら捕まっちゃうでしょ? でも、ここなら何をしても死ぬことはないし、周りを壊しても問題にもならないからね!」
「余興って、ストレス発散っていうことじゃないっすよね? 俺、少しお嬢を好きにさせるという決意が揺らぎそうに———」
「揺らいでもいいけど?」
「――—なりましたけど、復活しました!」
お目目を輝かせるサクを見て苦笑いしか浮かべないカルラ。
嬉しいような嬉しくないような、反応に困る言葉である。
「ま、まぁ……そういうことができるっていうだけで、メインはゲームだから」
「うっす、了解です!」
「サクくんは返事がいいなぁ……動機さえ違ってたら褒めたのに」
カルラの心境は大変複雑であった。
「でも、こんな仮想空間が作れるんだったら色々応用が利きそうですね」
「んー……どうなんだろ? 使おうと思えば使えるかもしれないけど、使ってる人は見たことがないなぁ」
「例えば、お嬢と「むふふ♡」みたいなことをする時、この仮想空間に隠れていれば音も人の目も心配することがなくな―――」
「待って、サクくん。私は一度も「むふふ♡」なことをした覚えがないし、容認したつもりもないんだよ」
「でも俺はしたいっす!」
「こっ……ッ!? こ、この正直さんっ!!!」
カルラは顔を真っ赤にしてサクに怒る。
……いや、怒るという表現は正しいのだろうか? 怒っているか恥ずかしがっているのかよく分からなかった。
「お嬢、とりあえず今回のゲームは結局どういうものなんです?」
一応、上空にトランプが浮いてあることや、カルラがトランプを持っていることから何かしらのカードゲームなのだという予想はしている。
しかし、13枚という中途半端な数字がゲームの概要を掴ませないでいた。
「はぁ……サクくんがこういう人だって知ってるもん。もう突っ込まないから……」
振り回されてばかりなカルラは大きく溜め息を吐いた。
「サクくん、とりあえず腕を振ってみて?」
カルラに言われ、サクはとりあえず腕を振る。
すると、虚空から一つの巻物が現れた。
その巻物は、先程カルラに見せてもらったものと同じで───
「この
「なるほど」
サクは
そこには———
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~ルール~
・
・参加者はジョーカーの手札を持つ。
・
・参加者は一度だけ、
・同じく参加者は一度だけ、
・
【勝利条件】
参加者:
===========================
「そうっ、今回のゲームは───『ババ引き』なんだよ!」
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