玩具箱と規定書
「さぁ、サクくん! 今日は本格的に私が
サクがチェカルディ家に戻ってきてからの、翌日昼下がり。
可愛らしい装飾が目立つカルラの部屋にて、サクは頭にバンダナを着けた状態で正座していた。
「うっす、お嬢!」
「……ねぇ、なんかいつも以上に張り切ってない? 普段よりも「頑張る」オーラがぷんぷんなんだよ」
「そりゃ、だってお嬢に好かれるためですから」
「……正面から言われると恥ずかしい」
真顔で言ってのける執事に顔を逸らすカルラ。
その顔は耳まで真っ赤であった。
しかし、このままではいけないとわざとらしい咳払いを一つ入れる。
「ごほんっ! ま、まぁ? 私に好かれるうんちゃらかんちゃらは置いておいて───執事として、同伴者としてこれからパーティーに参加するようなら、ちゃんと教えておかないといけないよね」
「そうっすね。マナーとか作法とか流れとかは勉強しましたけど、
カルラに「頭のいい人が好き!」と言われてから。
サクはパーティーのことについて一生懸命勉強をした。
もちろん、主人の傍に控える者としての最低限礼儀作法は弟子入り期間の間に学んでいたため、それ以外のことだ。
しかし、その中には
何せ「私が主人らしく教えてあげるね♪」と言われてしまったのだ、一人で黙々と勉強するよりも想い人に教えてもらう方がよかったため、あえて触れてはこなかった。
「でもね……サクくんは知らないかもしれないけど、私って実はちょびっとだけ頭が悪かったりするのです」
「めちゃくちゃ知ってます」
「知らないだろうけど! 知らないだろうけども! そういう苦手な部分とかあるわけで……口で言うより実践した方がいいと思いました!」
カルラは懐から小さな箱を取り出した。
焦げ茶色い皮に所々に傷が入っており、大きさは手のひらに乗るぐらい。異様な不気味さと禍々しさ、それが感じられる。
───そんな箱。
それを見たサクは「どったの?」と首を傾げるのであった。
「お嬢、それは……?」
「これは
「へぇ……」
「それで、
仮想空間というワードにいまいちピンときていないサク。
それでも話を遮るわけにはいかないと、正座したままジッと話を聞く。
「どうやって作られているのかっていうのは、ごめんけど分かんない。職人さんじゃないから聞かないでね?」
「うっす」
カルラは聞き分けのいいサクを見て満足そうに頷くと、今度は机の上にある一つの巻物を手に取った。
「
「っていうことは、その
「違うよ? サクくんに教えるために、お母さんが簡単なのを考えて書いてくれました!」
なんじゃい、と。サクはカルラにジト目を向ける。
「うっ……し、仕方ないじゃん。私、ゲームを考えるのって苦手なんだもん」
「いや、普通に今までやったゲームを写せばいいんじゃないですか?」
「サクくん、考えてみて……
言われてみればその通りだ。
七か条にある通り、
貴族のパーティーが一人しか誘えないような貧相なものであるはずがない。
当然、基本的には大人数でやるもので、1VS1を想定したゲームなど作られることはないのだ。
「それで、ゲームの方なんだけど……これは面白いことに、必ずしも
「というと?」
「
「だからそれを抑制するために公平なゲームしかできない……ってことですか」
「まぁ、余興だからね。製作者はそんなつまらないことはしたくなかったんじゃないかな?」
「めちゃくちゃ便利っすね、その
「だから
確かに、片方が有利のゲームなど面白くもないだろう。
言っている意味はよく理解できる。
「あ、ちなみにあくまでゲーム内での公平だからね? それ以外の要因の優劣は反映してくれないから!」
「えーっと……例えば、身体的有利とかは公平じゃないと判断されないってことですか?」
「そうそう、あとは得意分野とかだね。私が『敵を剣で何人倒せるか』みたいなゲームをしても、ゲーム的には公平って判断される」
ゲーム内では同じ開始地点、同じ武器を与えられれば、それは公平として判断される。
例えプレイヤーがサクとカルラで実力的な差があったとしてもゲーム内容が公平であれば、その他の要因での有利不利は該当しないのだろう。
「ま、説明はこれぐらいにしておこうか! サクくんは参加者、主催者である私は
「了解です、お嬢!」
カルラが
すると、
「それじゃあ、いくよ───」
カルラが
「さぁ、サクくん───私と遊ぼっか」
すると、サクの視界が真っ白に染まった。
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