第42話 

 玲華は蓮人が教室から 出るのを確認してから、ゆっくりと自分の席に戻る。

 蓮人が昼食を摂らずに向かった場所が気になるところだが——一人寂しくお昼を摂ることに決めた玲華。

 机の横にかけていた弁当を取って開ける。

 弁当箱の蓋を開けようとした時、教室に見覚えのある少女が入ってきた。

 その少女はこちらを見つけると、ゆっくりとした足取りで向かってくる。

「——あれ澪じゃん。どうしたの?」

「ちょっとね」

「ねえ、よかったら一緒にお昼食べない?蓮人はどっか行っちゃったから……」

「ふーん、そうなんだ」

 茶髪茶目のポニーテール少女。玲華にとっては、中学校からの親友である。

「玲華には悪いけど、もう食べたんだよね」

 淡々とそう喋る澪。

「あ、そうなんだ……」

 玲華は少し苦笑いをすると、澪はすぐに話を変える。

「それで、蓮人さんはどこにいるの?」

「それが、私にも分かんない」

 どうやら、澪も蓮人を探していたらしい。

「まぁ、お昼休みが終わるまでには戻ってくると思うよ」

 玲花はにこやかに、そう澪に言ってあげた。

「じゃあ、あなたが食べ終わるまでここにいるよ」



 昼休みがそろそろ終わるという頃。

 ガラガラ、と小さく教室のドアが開く音が聞こえる。

 そちらを見ると、そこにはびっくりした様子の、左からリリー、ピジー、フェアリー、蓮人が横一列に並んでいた。

「……なーんだ。三人もいたんだ」

 ちっ、と小さく舌打ちをすると、何も言わずに教室を出て行ってしまった。

「……なぜ澪が?」

 蓮人はもちろんのこと、他の三人にも頭上に「?」マークが浮かんでいた。

「あっ、蓮人ー!」

「いてッ!」

 と、こちらの姿を確認するや否や、急に頭突きをしてきた玲華。

「もー、一緒に食べれるって思ってたのに!」

「……それは悪かった。明日だったら大丈夫だから、な?」

「むぅ……」

 少し涙目でこちらを見てくる。……そんな顔をしないでほしい。なぜか、心がギュッとなるような感覚。

「そう言えば玲華ちゃんって、澪と友達って言ってたような……」

「あー、だからそこにいたんだ……」

「……ふーん」

 後ろでは何か話し声が聞こえる。

「ちょっと、聞いてるの蓮人!?」

「は、はい!?」

 玲華の話を全く聞いていなかった。風船のように、頬をぷくぅと膨らませる。

「今日一緒に食べれなかったお詫びとして、放課後私と一緒に帰ること!」

「…………はぁ」

 


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