第21話 ブロッサムの影響力

 現在時刻、午前11時ごろ。

 リリーの家に来てから、約1時間が経った。

「…………」

「…………」

 蓮人、ピジーの二人は、リビングの地べたに座りぼーっとしている。

 蓮人がちらっとピジーの顔を見ると、目が合った。

「……な、なぁ」

 約1時間の沈黙の末、先に口を開いたのは蓮人だった。

「……なに?」

 その声に、ややうんざりとした顔でこちらを見る。

「やっぱり……帰らないか?」

「は?……ここまで来て帰るとか言うのバッカじゃない?」

「い、いや、なんというか―—っ!?」

 と、そこで。

 どこかの扉が開いたような音が聞こえた。

「起きてきた……?」

「ええ、そんな感じがする」


「あれ——お客さん、来てた?」

 

 声からするに、どうやらリリーは玄関に向かったらしい。そこで二人の靴を発見したようだった。

「一度、リビングから出たほうがいいのかな?」

「リリーがここに来るまで待機」

 蓮人はリビングから出ようと腰を浮かした瞬間、ピジーがそう即答してきた。

「……はい」

 蓮人は少し困惑顔だったが、もう一度地べたに座り直した。


「ということは……リビング、かな?」


 外からリリーの声が聞こえてくる。

「さてと、来るみたいだね」

「あ、ああ」

 数秒後、ガララ……と、スライド式の扉が開いた。

「あっ、れ、蓮人くん?」

「ど、どうも……っ」

「……ふんっ」

 もちろん、なぜかリビングには同級生の男子がいたことに驚きの表情である。

 それは分かるが……なぜピジーは怖い顔をしているのだろう。

「……あのさ、単刀直入悪いんだけど、リリーは体調が悪くなったりはしなかったの?」

「えっ、体調?」

「ブロッサムになった後、なんか変な感じは無かった?」

「あー……特に大丈夫だったけど」

「……なら良かったけど」

 ブロッサムになった後、リリーに危害がなくてホッとした二人。

「あっ、その確認のために、私の家に?」

「そ、そうなんだよ。急にごめん」

「ううん、全然。こっちこそごめんね、こんな汚くて……」

「いやそんなこと…………ん?」

 と、蓮人がある違和感を感じた。

 それは一体何なのか、辺りを見回してみると——。


「…………お前、なんで裸なんだ」


「あ——っ」


 なぜ気が付かなかったのかが不思議になるくらい、リリーは全裸だった。

 ……まさか、いつも寝てるときは何も身につないのか?

「……え、えへへっ」

「…………消去識ロストアンバー

「——ッ!?」


 一瞬のうちに、目の前が真っ暗になった——。




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