第11話 妖精と人間女子

「はぁ……」

 ガラス越しにどしゃ降りになっている外を見ながら、日暮蓮人は小さくため息をついた。

「……こ、これ」

「えっ?」

 窓の外をぼんやりと見ていると、少しビクついたような声が聞こえた。

 そちらを向くと、妖精であるピジーがそっぽを向きながら何かを差し出していた。

「……お茶」

「あ、ありがと……?」

 蓮人はどういうことだか分からないまま、コップに入ったお茶を受け取る。

「……お、お礼なんていいし」

「そ、そっか……」

 ピジーから声をかけられたのはこれが初めてだった。どういう風の吹き回しだろう。いや、もしかしたらフェアリーが持っていけと言ったのかもしれない。

 どちらにせよ、ピジーから声をかけられたのは、蓮人としては少し嬉しかった。

「……なに?そんなジッと見ないで」

「あ、は、はいっ」

 不機嫌そうに腕を組み、またそっぽを向いた。蓮人は慌てて視線を、もう一度窓の方へ向けた。

「お風呂、ありがと——って、あれ?」

「…………は?」

「あ——ッ!?」

 背後から声がしたので、そちらを振り向くと、なぜか服を着ずにタオル一枚だけのリリー・グレイの姿がそこにあった。

 形容の頭に「超」をいくつ付けようが、その美しさの一割に達しないほどの、圧倒的な存在を放つ美少女。

 手のひらに収まるくらいの乳房に、細身のウエスト、ぷにぷにと柔らかそうな臀部。

「……?」

 びっくりしたような表情で固まる蓮人とは逆に、少し首を傾げるリリー。

 ……いや、今はそれどころではない。

「えっと……そっちにいるのは、だれ?」

「わ、私はピジー。あ、あんたこそだれ?」

「え、っと……リリー・グレイって言うよ。リリーって呼んで」

「あ、そ、そう……っ」

 裸体姿のまま淡々と喋るリリーに対し、ピジーは「どうしてその恰好で喋れるのか」という疑問の中そう返した。

「そ、そう言えば服用意してなかったな……ごめん、今持ってくるよ」

「あ、なんかごめん……」

「いや、とりあえず座っててよ」

「あ、うん」

 蓮人は急いで自分の部屋に行き、とりあえずジャージを持ってリビングへと向かった。


 



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