不思議なお茶会と破滅の弾丸㉒

 遥日と正門で合流して、中へと入る。


 入場許可証を首から下げる経験は初めてなので、それだけで緊張してしまう。


 力が言っていたように確かに遥日は顔面偏差値が高いが、性格的に女子と積極的に関わる方ではない。


 そもそも、力もそこそこモテるくせに他人の顔面で勝負しようとしていることが気に食わない。


 誰とも話さないままでいると余計なことを思い出して、考えてしまう。


 これは良くないと首を振っていると、廊下の前の方に瑠奈と一緒に居た女子が見えた。


 遥日は足を止めると、結紀に向かって行ってこいと合図をする。


「遥日さん、行かないんですか」


「行けないが正しいかな」


「どういうことですか?」


 てっきり遥日が先陣を切ってくれるものだと思っていたが、そうではないことに驚いてしまう。


 結紀に疑問に答えるように遥日はぽつりと呟いた。


「ここに入る時に、目立たない、騒がない、荒らさないと約束してるんだけどね……僕が王戸の人間ってバレるとそれが守れないからかな」


 遥日の言い分に頷く。


 結紀は気が付かなかったが、王戸の人間というのは有名らしく、テレビやメディアに出ていなくても知られていることがあるらしい。


 特に、王戸という名前は王戸家にしか存在しない。


 その名を名乗るだけですぐさま王戸だとバレてしまう。


 遥日が女子と関わりを持ちたくないのはそれだけが理由では無いようだが、とりあえずは納得したということにしておく。


 遥日が全てを語ってくれるとは到底思えない。


 いつものようにのらりくらりと交わされ、笑顔で黙らされるのが想像出来て、結紀は深く追求するのを辞めた。


「あそこにいる彼女は、今回のアリスと一番仲がいい友達って担任からは聞いているから、よろしくね?」


 何がよろしくなのかは分からないが、遥日はそれだけ言うと、力と結紀を残して離れて行った。


 遥日が離れて行ってから力はため息をついた。


「俺が呼ばれた理由今わかったわ」


 髪の毛をガシガシとかき混ぜてから、力は女子へと向かっていく。


 結紀もそれに従ってついて行くと、力はお前は特に何も喋るなと釘をさしてきた。


 余計なことは言わないから大丈夫だと目線で伝えれば、更にため息をつかれてしまった。


「結紀は余計なことを言う天才だからな……」


「なんだよそれ!」


 心当たりがない訳では無いが、何時でもそういうことをすると思われているのならば心外だ。


 確かにここは聞かなくてもいいかなと思うことも包み隠さずに言ってしまうところはあるが、さすがに知らない人にはそんなことはしない。


 しないはずだ。


「よく見てろよ、これが俺のやり方だ」


 力はそう言うと、女子が持っているスマホへと目を向けて自然に女子へと近づいて行った。

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不思議の国のアリスケース 〜奇病を治療する者たち〜 澤崎海花(さわざきうみか) @umika

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