第10話旅の途中


閉ざされ


閉鎖した病棟


彼らに罪はない


恩恵を受け入れず


佇んで


祈りを神様に讃え


夢を厳かに祝福している


指針とは鍵なき証明


垣間見た空からは飛行機雲が見えた


大勢の職員が働き


小さな和を保つのが自然だ


罪悪に捉われ


命の根源を探る者とは


いかにも嘘くさいけれど


何かが終わろうとして


今にも密やかな時を何処に閉じ込めようか


思案している様にも思えた


限り無き過去への歴史とは違い


儚き夢を忘れ


新たな旅立ちを


懇願している様にも見えた


経験豊かな看護婦は


太った体躯と似合わず


小さな声で


貴方を笑わせた


何故私は此処に在るのか


何故此処に貴方がいたのか


誰にも判らないけれど


貧民の暮らしとは


こんなモノだろうと


心を落ち着かせる様に


不甲斐ない自分の涙を貴方の深淵に浮かべた


丁度良く風が流れて


紫陽花が貴方の雨粒を待ち焦がれいる様だ


夕暮れに沈んだ記憶を回顧して


貴方は心を清くさせる為に


青い時計を眺めているのか


朴訥とした眠りに身を任せているのか


判らないけれど


途方に暮れている様で


帳尻の合わない時間の為


目を伏せているのか判らない


本当は虚空を眺めて


意識をより正確にしているのかもしれない


祈りの在る病棟で


生活するには


心が苦々しい


今母親が創ってくれたこの珈琲の様に


暗くなった空には雲が何かを背負う様にも思え


契れない大切な縁の様にも思える


今大切な事は生きる事



そして自身を見限らずに成長させること


空気清浄器が喧しくうるさくも


病棟を癒してくれている


此処では心がメインであり


知能うんぬんは既に放ってある


貴方は歴史を正す為に生きているのか


生き残る為だけに生活しているのか


判らずにいます


始まりから終わりまで


傍で詩を唄う青年の姿を借りて


生きています


それが正しくとも


正しくなくとも


神様は見限る事なく


私の意識に入り込み


必死に何かを伝えようと試みてくれますが


人間がどれだけの恩恵を受ければ


死ぬのか破壊されるのか


それは神様がお決めになり


私とは人間の理を得て


今なお活かされています


根源に在るモノが


何であれ


生きる事を放棄してはならない


それが私の信念であり


生きざまでした


貴方が居た頃


私が存在を許されるまで


苦労に苦労を重ね


生きてきましたが


それを全て病気のせいだとは思えません


耐え抜く事


自我を押さえ育ませる事


貴方は遠くで近くで


見て下さいましたね


命を怪訝そうに窺い生きてた頃


鎧でも着た様に


それこそ槍でも構える


ドンキホーテの如く


大切な何かを護り


生きる覚悟があったのでしょう


親しみやすき男であり


感謝を忘れない人間だとも思います


どんな噂話も儚さを知り


深き道徳をも貴方に伝えたかった


病棟でバス停を眺め


そこで様々な光景を人間を見てきました


お爺ちゃんやお婆ちゃんが多くいて


小さな夢をそこに見つけたはずです


貴方と私の距離は


永遠に届かない


そう貴方は思い生きて来ました


この軌跡は今此処で


終わらず


始まりの合図を受けたが如く


スタートを切るのです


心の準備はできましたか?


知能は普通にあり


知識も普通にあります


けれど早合点してはいけません


それが大切な事であり


約束でもあります

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