第8話記憶

道端に転がる空き缶


貴方はそこにいて


私と同居するかもしれない


燻る煙草を寝かして


今はそのままで


生きてきた


寝坊をしても良い


化粧をしても良い


貴方さえいれば・・・


珈琲を飲み干して


煙草を吸い終えて


宝箱なる孤独なる精神が生まれる


一つであり


二つであり


三つ四つあるかもしれない


空腹を満たす事はない


背伸びする事もない


貴方が水滴を飲み干しても


私も此処にいて


喜びを分かちえる


仲間がいる事を忘れないで


空腹なる


記憶を探して


道端を選び


特別な勉強をして


空さえ混沌としていた


夕暮れに恋しても


懐かしさは愛しき家庭にある


影に袖を通した様で


懐かしき記憶は空き缶にあり


帰路に子猫の死骸があり


両手で引きずる様に


道路脇まで持っていった


貴方の世界が開花しようとしている


私は凍りついた現実を


栞にして生きていた


転がる空き缶を


眺め


精神の波間が


深緑なる宇宙が潜んでいた


ただ虚空を観てた


二人と空き缶と猫の死骸


狭き世界はどう感じ


眺めていたのだろうか


空白なる記憶を埋めたいけれど


蹴られた空き缶は宙を彷徨い


貴方の懐で再生される


空き缶の中で理由を問われる


満足できない思いがあるの


だろうか


光は輝き煌々としていた


雲間から窓辺を観て


それは人間の様で


私の理解できない


真実でもある


貴方に伝えたい言葉が溢れ出し


思いよりも深い雪が


積りだした


貴方の風景が溢れ出して


私の時は徐々に時を満たして


恐怖から逃れる様に


空き缶に逃避した


旋律を奏でる


貴方が


一番星を見つけて


記憶の糸を辿る様に


私の心は膨れ上がり


私は貴方の母体の中で


産まれる前から


産まれた事を


理解していた


蹴られて宙を舞う


空き缶の様に

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